「インテキ上海25春夏」開幕/日本館出展者が過去最多/中国市場で「地殻変動」も
2025年03月12日 (水曜日)
服地と副資材の国際展「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス2025春夏(インテキ上海)」が11日、中国・上海の国家会展センター〈上海〉で開幕した。日系企業が集まる「ジャパン・パビリオン」には、春展として過去最多の29社が出展。初日から盛況となった。一方中国市場では、地場の備蓄系メーカーが台頭するなど「地殻変動」が進む。会期は13日まで。(岩下祐一)
今回の出展者数は24カ国約3100社超で、昨春展(3千社超)を若干上回った。日本ファッション・ウイーク推進機構(JFWO)が主催するジャパン・パビリオンをはじめ、イタリア、台湾、韓国などがパビリオンを設けている。
ジャパン・パビリオンにはタケミクロス、アンツジャパン、ベリーテックス、アクタスセコンド、SVCの新規5社を含む29社が出展。昨春展を2社上回り、春展として過去最多となった。東麗酒伊織染〈南通〉や南通帝人、スタイレム瀧定大阪、ソアロンなどは単独で出展している。
中国のアパレル市況は振るわない。不動産市場の低迷などを受け、消費マインドが冷え込んでいる影響で、ファッションブランドの多くが業績を悪化させている。
ネット通販ブランドも、優劣が鮮明。ネット通販の24年アパレル小売総額は、前年比1・5%の伸びにとどまった。上げ幅は、23年(10・8%増)から9・3ポイントも縮小した。
半面スポーツブランドの一部は好調を維持する。スポーツテイストの流行やスポーツ人口の拡大が背景だ。スポーツ最大手、安踏(アンタ)傘下の「デサント」や「コーロンスポーツ」が売り上げを拡大している。
こうした中、日系企業の内販は二極化している。スポーツブランド向けを手掛ける生地メーカーや商社が意気盛んな一方、新型コロナウイルス禍後、備蓄品を強みにネット通販ブランド向けを急拡大してきた生地商社は、昨年後半から攻めあぐねるところが目立つ。
ファッション向けの急速な回復が見込めない中、今回展ではスポーツ向けの提案が増えている。サンウェルは、スポーツやアウトドアを意識した機能性織物を充実。ソアロンは、トリアセテート繊維「ソアロン」を使ったスポーツ・アスレジャー向けの編み物を目玉として打ち出す。
日系生地商社を悩ませるのが、地場の備蓄系メーカーや生地商社の台頭だ。これまでも万姿(ワンズ)や益彩(アイドル)などの地場商社の競合が存在したが、両社は日系メーカーの素材が強みで、日系企業との共存共栄が図られていた側面がある。しかし、コロナ禍を経て台頭する地場の備蓄系メーカーや、生地商社は企画力と備蓄サービス、さらに高いコストパフォーマンスを強みに日系生地商社の市場にくい込む。
その代表格が、易紡グループだ。広東省広州の自社工場で生産する織物と編み物の備蓄品を展開。定番品とは一線を画す独自企画の生地も手掛ける。
今回展のジャパン・パビリオンも初日から盛況だ。しかし、水面下で市場の地殻変動が進んでいる。日系各社は市場の変化に対応し、差別化を一層進めなければ、中国で地場EVメーカーの攻勢に苦しむ日系自動車メーカーの二の舞になりかねない。