新たな成長の舞台へ 素材メーカー系 商社の視点(4)クラレトレーディング

2025年03月12日 (水曜日)

素材軸に新規開拓

 クラレトレーディングのクラベラ事業部は、独自性のある素材を軸にした開発・提案によってアイテムの拡大や新規受注の開拓に力を入れる。主力の製品OEMも供給の力を高めることで取引先との関係を一段と強める。

 2024年度(12月期)も衣料分野は好調が続いた。主力のスポーツ・アウトドア用途は製品OEMが堅調。有力アパレルとの取り組みが成功している。ユニフォームは学販体育服がやや勢いを欠いたが、メディカル白衣や介護衣が安定している。原糸は特殊糸に特化しているため底堅い需要が続く。

 一方、資材分野は貼布剤基布などメディカル用途が流通在庫の増加でやや軟調だったが、水溶性繊維「ミントバール」や蓄熱保温繊維「マイクロフォーム」など特徴のある商品は好調だった。

 ただ、衣料と資材の両分野とも加工料金や物流費、協力工場の人件費上昇などコストアップが大きく、利益率を押し下げていることが課題となる。

 25年度に関して上野裕樹クラベラ事業部長は「衣料分野の製品OEMは供給力の強化が重要になる」と強調する。ベトナム子会社でミシンやプリント工程の増強を継続的に進めているほか、委託生産・加工先である国内の織布・編み立て企業や染工場との連携をさらに深め、サプライチェ―ンの強化に取り組む。

 もう一つ重要になるのがアイテム拡大などで新規受注を獲得し、業容を拡大すること。「そのためには独自性のある素材を軸にした開発と提案がポイント」と話す。

 このため差別化ポリエステル繊維に加えて、ビニロン、ポリアリレート系繊維「ベクトラン」、人工皮革「クラリーノ」、割繊型マイクロファイバー「ランプ」、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」など独自素材を活用した提案に取り組む。

 ビニロンは難燃タイプをスポーツ・アウトドア用途に改めて提案する。ベクトランも衣料や服飾雑貨用途に適した細繊度タイプがラインアップに加わった。ランプはリサイクル原料100%タイプも用意し、衣料・雑貨用途への提案に改めて取り組む。エプシロンは高い疎水性を生かし、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)への懸念が高まるフッ素化合物系撥水(はっすい)加工剤を使わずに速乾性を発揮できる点で注目が高く26秋冬向けから採用が本格化する。

 国際スポーツ用品専門見本市「ISPO」など海外での展示会にも積極的に参加し、これら特徴のある素材を打ち出すことで新規取引のさらなる開拓を目指す。