繊維ニュース

特集 播州織産地(2)

2025年03月11日 (火曜日)

〈播州織産地博覧会2025/6月1日に開催決定!/精鋭30社集結〉

 播州織産地最大の生地と製品のマルシェ「播州織産地博覧会」(播博)の開催日が6月1日に決まった。産地の精鋭30社強が兵庫県西脇市に集い、各社こだわりの生地や産地ならではのオリジナル製品を販売する。

 参加企業は昨年とほぼ同数で過去最大規模での開催だ。1万人以上の集客が見込まれる。

 産地の個性あふれる生地や最終製品に加えて、服飾教育の名門、県立西脇高校生活情報科の生徒らによる、ハイレベルなファッションショーも見どころ。地域に根差した飲食を提供するキッチンカーもこの日に合わせて一堂に会し、産地グルメの“味”力も堪能することができる。

 播博は、西脇市中心部の商店通りに活気を再びもたらすアイデアとして2017年に住民から発案され、翌18年、ボランティアの力で初開催された。初回で成功したため、毎年初夏に開催されるようになり、今では産地にとって欠かせない恒例の催しとして定着している。

 播博実行委員会の集計では初回4千人、19年に6千人を集客。20、21年は新型コロナウイルス禍で中止だったが、22年、再開を待っていたかのように8千人が押し寄せ23、24年はいずれも推定1万人の来場が発表された。

〈播州織工業協組/連続晒し加工機が稼働/捺染、後染め需要狙う〉

 播州織産地の織物整理加工場、播州織工業協同組合は2月14日、生地の晒しを連続で行う新たな加工装置を稼働させた。同産地の織物に加え、全国からもプリントや後染め用生地の晒し需要を取り込む。晒しとは精錬剤入りの湯に糸や生地を晒すことによって素材の汚れ、不純物を除く工程。2~3年かけて月産30~50万平方㍍の加工量を目指す。

 同組合としては2016年にシルケット加工機を導入して以来、9年ぶりの大型設備投資になる。機械メーカーによれば、最新式のため、現在国内にある連続晒し装置に比べ、洗い工程での節水能力や熱エネルギー効率の高さで特に優れていると言う。

 全国にある生地晒しの需要を取り込み、同組合が強みとする意匠や機能加工の受注量にも弾みをつける。今回導入した機械は生地の毛焼き、精錬、晒し、漂白までを連続でできる。

〈兵庫県繊維協議会/織物産業への功績表彰〉

 兵庫県繊維協議会は2月4日、西脇市内で「第53回繊維産業功労者等表彰式」を開き、播州織産業で功績のあった3人と2企業を表彰した。各賞の受賞者、受賞企業は次の通り(敬称略)。【功労者賞】神戸壽(システム開発、ブレイン社長)、高瀬義之(播州織産元、内外織物社長)【優秀企業賞】笹利織物(笹倉利規代表)、横武織布(横山武夫代表)【永年勤続優良従業員賞】谷川和美(兵庫県繊維染色工業協同組合事務局従業員)

〈播州織産地の主要産元(社名50音順)〉

カゲヤマ:顧客ごとの別注生地と在庫を持って提案する備蓄販売の双方を展開。カジュアルに強い。播州織産地での生産がメイン。中国にも生産背景を持ち、柔軟な生産基盤を土台に先染め織物にとらわれない多彩な素材をそろえる。欧米など海外へ一定量の輸出実績もある

桑村繊維:播州織産元最大手。綿先染めを扱う7部門のほか、北陸産地で生産する長繊維部や各種無地を扱うファブリック部など計11の部門がある。各部門が別注生地と備蓄販売の双方を展開。規模は、同産地の産元商社でも群を抜き、自社の織布工場も持つ。中国、欧米など海外でも販売実績が多い。製品ブランド「マルベリーファブリック」を2023年秋に立ち上げ商品開発に力を入れている

斎藤商店:顧客のニーズに合わせた生地の企画力と開発力を得意とする。近年はポリエステル・ナイロン・トリアセテート混の合繊素材や、交織素材の開発に注力し、メンズ・レディースのシャツ・アウター素材以外ではスポーツ/ユニフォーム向け素材を強化している。製品事業として播州織のアップサイクル雑貨「RE :BANSHUORI」を展開している。

インスタグラムhttps://www.instagram.com/saito_tex/

島田製織:綿細番手使いの先染め織物を主力に、ナチュラルな素材感の提案に定評がある。アパレル、ユニフォーム、手芸などの多彩な分野に生地を提供する。アパレルブランドとして2010年から「ハツトキ」、21年から「ハタカケ」を展開しファンを増やしている。ハツトキはテレビドラマの衣装として一部のアイテムが採用された実績もある

大化産業:婦人服地、紳士カジュアル服地が主力。播州織産地ならではの高付加価値商材を得意とする。“モノ作りに理解のある顧客”を前提に新たな顧客開拓に力を入れる。サイトやSNSなどでの情報発信も強化。播州織を原料に使った和紙「播和紙」やPLAを使って織物を硬質化させるといった新たな播州織の販路開拓や可能性も模索する

内外織物:別注生産を軸に独自開発した素材で提案力の向上にも取り組んでいる。原料で織物を高付加価値化させた、独自の生地ブランド「nunono」(ヌノノ)を軸に、東洋紡の長短複合糸をメインとしてアウタ―も含めたトータルコーディネートを提案する。“環境”がファッション業界で重視されていることを受け、サステイナビリティーやエコといった切り口での新素材も充実させる

西脇小西:スポーツ向け、子供服向け、ユニフォームや切り売りも含む資材向けが3本柱。モットーは「既存顧客といかに深く取り組み、新しいものを作れるか」。堅実さだけでなく新しいことへの挑戦意欲を兼ね備え、ニーズに応じて「何にでもトライする」ことも信条とする

播:自社で織布工場を持ちエアージェット20台、レピア4台。全てダブル巾ドビー対応をこなす。

2023年には縫製工場を新設、24年に東京都台東区の蔵前と地元の西脇市に専門店「Boon Life Base」をオープン。播州織を使ったレディースワンピース、ブラウス、メンズシャツを販売しオーダーにも対応する。自社で生地から縫製、販売まで一貫で、生地生産は他国では行わず播州織にこだわり続けるポリシーを持つ

丸萬:2024年2月、ブランド「マルマンジャカード」を立ち上げ、デザイナーやアーティストと組んで独創的な生地やOEM製品を開発している。産元としては、一般衣料からインテリアまで多彩な分野を手掛ける。紋紙を作れるジャカードは強みの一つ。オリジナルのアパレルブランド「ポルス」は受注販売で、その個性的なデザインと色柄でファンを増やしている

明晃商事:一般衣料のシャツ地と、学販のシャツ地を2本柱とする。リピートが原則で、色合わせや素材感など物性面の品質要求が厳しく、納期にも厳格さが要求される学販向けで鍛えられた品質安定性と納期管理を強みとする。取引形態はほぼバイオーダーだが、一部の定番品は備蓄販売も行う。百貨店・専門店のオーダーシャツ地も主力の一つ