東レ SC全体でスマート化
2025年03月11日 (火曜日)
東レの大矢光雄代表取締役社長ら首脳は7日に金沢市内で会見し、新たな開発などの面から産地企業との取り組みを強化していく考えを示した。デジタル技術で企業を変革するDXの推進も重視し、サプライチェーン(SC)全体のスマート化を進めていく。
今期(2025年3月期)の北陸産地との取引は、数量ベースで前期比増になる見通し。上半期(24年4~9月)は市況が悪い中でも横ばいを維持。10~12月は減速したものの、1~3月は回復し、通期では前年を上回る見通し。今冬に店頭での在庫が減ったとみられることなどから、来期(26年3月期)は「年間でプラスの方向に持っていける」(大矢社長)とみる。
国内における全素材の生産基盤を維持・強化していく方針に変わりはなく、東レの特品原糸と産地の高次加工を組み合わせた開発を引き続き強化していく。大矢社長は産地との関係について「より強固な仕組みを築いていく」と話し、協業による新たな開発を加速するとともに、サプライチェーン全体のスマート化で生産効率向上などにつなげていく考えを示した。
石川工場は、先端素材の生産拠点として開発を継続し、「生産量よりは、常に新しい商品を作り続け、その商品をタイムリーに供給していくことがポイント」とした。DXの面では人材、情報、環境、製品の各面からスマート化を推進。産地企業とも原糸の品種ごとに物性や操業性に関するデータのやり取りなども始まっている。
東レ合繊クラスターのDX推進部会の活動にも東レの高次加工DX推進チームがアドバイスなどで関わっていく。SC全体でのスマート化を推進し、生産効率化(最短リードタイム追求、品質ロス極少化、再現性向上、在庫の見える化など)、商品開発(開発・試作のスピードアップなど)、品質保証(トレーサビリティ確立)につなげる。
繊維産業シンポジウム
東レと東レ経営研究所は7日、金沢市内のホテルで「繊維産業シンポジウム」を開いた。テーマは「北陸産地の新たな幕開けに向けて―継承と変革への挑戦」。200人弱が来場したほか、オンラインでも多くの人が聴講した。
東レの都築祐執行役員経営企画室担当マーケティング部門長が「東レグループの営業戦略」、慶応大学商学部の岩尾俊兵准教授が「カネの論理とヒトの論理=経営の大転換時代に備える視点」、ピオニエスの望月美佐代表取締役が「次世代ビジネスのヒント―旅館の若女将が描く、異業種参入への挑戦」と題して講演した。