クラレの繊維資材/「ビニロン」で用途拡大/法面補強や難燃など
2025年03月07日 (金曜日)
クラレの繊維カンパニー繊維資材事業部は、ビニロンで新たな用途開拓を進めている。「ポートフォリオを転換し、新しい挑戦をしていく」(繊維カンパニーの髙井庸善執行役員繊維資材事業部長)として、法面モルタル補強用途や原着の難燃ビニロンによるユニフォーム用途への開拓に取り組む。
ビニロンは現状、コンクリート補強材を中心とした建材用途が主力。前期(2024年12月期)は、欧州の景況悪化やインフレ、金利上昇による設備投資の抑制を受けて低調だった。自動車のブレーキホース向けなどゴム資材用途も、24年の自動車の生産台数が世界的に大きく増えなかったことを受けて伸び悩んだ。
ただ、アルカリ乾電池用セパレータに使われる紙用途は堅調だった。アルカリ乾電池の市場規模は年間で1~2%成長しており、今後も拡大が見込まれる。そのような成長分野に向けてビニロンの用途開拓を加速する。
昨年、法面モルタル補強用途のビニロンが国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録された。同システムでは公共工事の入札者や施工者などが、データベースに掲載されている技術を受注工事で活用。登録によって活用される機会の増加が期待できる。
コンクリート補強による法面工事では、土がむき出しの斜面にラス金網を敷設して工事するケースが多いが、敷設作業が大変だった。分散効果の高いビニロンを法面に吹き付けモルタルの補強繊維として使えば、金網不要で施工性が向上。吹き付けの際の跳ね返りが少なく、作業がしやすいことから省人化にもつながる。「トータルの施工コストに優位性が出てくる」として拡販を強める。
国内で自衛隊の戦闘服などで豊富な実績を持つ難燃ビニロンの販売にも力を入れる。LOI値(限界酸素指数)が36と燃えにくく、親水性で染色も可能。これらの特徴を生かし、ユニフォーム用途へ提案する。欧米でも市場開拓に取り組み、「エコテックススタンダード100」の認証取得を進めている。原着の難燃ビニロンも開発し、早期に販売を本格化する。
繊維資材事業部ではスリング、ロープ用途で需要が拡大する高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」も展開している。北米市場向けに販売堅調で、今年から生産能力を現行比約20%引き上げる。特に太繊度糸で洋上風力発電設備の係留索での需要拡大を期待。日本では高性能繊維による係留索が必要とされる浮体式洋上風力発電が実用化に向けて動きだしており、新たな商機を捉える。