特集 事業戦略(4)/シキボウ/上席執行役員繊維部門長 尾﨑 友寿 氏/海外ビジネス花咲かす/ユニフォーム素材軸に拡大
2025年03月06日 (木曜日)
シキボウの繊維部門の第3四半期(2024年4~12月)業績は、営業損益が2600万円の赤字だったものの、前年同期の3億8100万円の営業損失から大きく改善し、通期での黒字浮上が見えてきた。尾﨑友寿上席執行役員は、海外の拠点が整備され、外から外へのビジネスで「どんどん花を咲かす」と話す。強みとするユニフォーム素材をベースにブランド力を高めながら、グローバル戦略を加速させる。
――通期での黒字浮上が見えてきました。
中東民族衣装向け生地輸出の拡大が寄与しています。織布・染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)では、整経機の導入やスチーマー、ベーキング機の更新で、生産キャパシティーを増強し、中東向けの生地の加工量は1・5倍に増え、今期中に2倍まで増やすことができます。
手の感触や風合いの良さが評価されています。新商品の比率が高まっており、売り上げの4割を占めるまでになっています。まだまだ風合いが重視される傾向にありますが、今後は防汚や撥水(はっすい)といった機能素材の投入を考えています。
――ユニフォームではワークウエアの在庫調整が一服し、今春夏向けに新商品の投入が活発になっています。
この2、3年は価格転嫁に苦しみましたが、損益がようやく水面下から浮上しそうです。フェアトレード綿糸「コットン∞」(コットンエイト)、強撚糸やストレッチなどを組み合わせた校倉(あぜくら)造り構造織組織の高通気生地「アゼック」など、新商品の採用も増えています。
――ニット製品も改善しています。
不採算を見直し、GMS向けの強化で黒字化しています。スポーツ用途も増えています。ポロシャツといったユニフォーム向けの製品OEMの提案にも乗り出し、実績ができてきました。単に価格が安いだけでは、選んでもらえない。当社ならではの機能加工を付与するといった付加価値によってしっかりニーズを捉えていきます。
――そのほかの事業はいかがですか。
生活資材事業では、リビング分野が寝装品を中心に苦戦していますが、丸ホームテキスタイルを含めたグループ全体で見ると安定しています。リネン分野では工業洗濯に対応した洗濯耐久性の高い顔料プリント「アペニノ」使いの生地販売が伸びています。工業洗濯でも顔料が落ちにくく、その評価に対する認知が徐々に広がっています。
原糸販売では国内の産地向けが苦戦していますが、ベトナムでの内販、インドネシアやタイからベトナムへの輸出といった海外向けは堅調です。国内では新内外綿と連携を強め、もっと効率化を図っていきます。
――廃棄された綿素材を再利用したバイオマスプラスチックペレット「コットレジン」の用途開拓にも力を入れています。
シキボウ江南に2月末でバルク生産の設備の据え付けを完了し、今月から試運転を開始しています。ポリプロピレン樹脂と混ぜることによって物性が向上し、プラスチック製品の強度が向上することからさまざまな用途開拓が期待されます。来期から販売を本格化していきます。
――今期は中計の最終年度となります。
数値目標の達成は難しいですが、不採算の事業を見直し集約してきた効果はきっちりと表れてきました。台湾、中国、ベトナム、タイ、インドネシアの各拠点で地に足を付け、外から外へのビジネスを広げつつあります。
――次期中計でも海外市場の拡大がポイントになってきます。
中東では、アラブ首長国連邦のパリ五輪選手団のユニフォーム地に当社の生地が採用されるなど、ブランディングに力を入れてきました。今度は欧州へも生地の販売を拡大しシキボウのブランドを広げていきたい。
カジュアルやハイエンドゾーンでは競合も多く、なかなか柱にしていくのは難しい。しかし、強みとするユニフォーム地なら可能性があります。中東向けやリネン向けの生地もある意味、ユニフォーム地と近い部分があります。当社が強みとするこれらの素材群を通じて海外市場へ積極的にアプローチを掛けます。
ユニフォーム地であれば防炎や制電など機能を訴求できます。生地だけでなく糸も売っていきたい。特殊紡績法による絶妙な毛羽コントロール糸「ふわポップ」ならインナーや靴下といった実用衣料へ提案できます。
中東輸出も民族衣装向けだけでなく、リネン向けのプリント地など、さまざまな提案が考えられます。素材の研究開発も進めており、提案力や販売力をもっと高めていきます。
欧州のユニフォームメーカーに直接アプローチすることも考えられますが、東南アジアの縫製工場では欧米向け輸出に強い工場も多い。現地の工場にアプローチを掛けていく手法もあります。
外から外のビジネスは、まだ売上高に占める割合が10%に満たないと思います。しかし、海外拠点が整い、いろいろなビジネスの芽が出始めたこれからは、どんどん花を咲かせていきます。各部署が連携しながら原料原糸、生地のグローバル展開を加速させます。