特集 事業戦略(3)/大和紡績/取締役産業資材事業本部長兼製品・テキスタイル事業本部長 青柳 良典 氏/“次世代の柱”商品創る/魅力ある企業へと成長
2025年03月06日 (木曜日)
ダイワボウホールディングス(HD)から独立し、3カ年の中期経営計画の初年度でもある大和紡績は上半期(2024年4~9月)業績で、前年同期、計画双方とも上回る順調なスタートを切った。下半期も「基本的に上半期の流れを引き継いでおり、大きくは変わっていない」と、青柳良典取締役は話す。収益力を高めるためにも「市場の動向に左右されない商品をいかに作っていくか」が課題。来期は「次世代の柱となる商品を創る」ことが成長の鍵を握る。
――全社の上半期は、前年同期比、計画比でも増収増益でした。産業資材事業の商況はいかがでしたか。
産業資材事業は前年同期比で増収増益ですが、計画比では利益面で若干の未達となっています。原材料のコストアップは以前に比べ落ち着いたものの、一部で値上がりが激しく、価格転嫁も四半期ほど遅れた状況になっています。特に建築シートなどの重布で使う、アンチモンを含む防炎剤は、昨年に比べ10~20%どころではないレベルで高騰している上、入手しにくくなっています。
重布は大阪・関西万博の効果もあり販売堅調ですが、万博後が課題です。ゴムも東海地区向けに車両関係へ販売を伸ばしています。自動車メーカーの一部では受注残も少なくなっていると聞いており、景況悪化で不振の中国向けをカバーする形になっています。
カートリッジフィルターは電子部品業界の回復で改善しつつあります。今年から新商品が発売され、フル稼働になってきました。これらは事業部と播磨研究所(兵庫県播磨町)、取引先がしっかり連携できており、順調に収益を伸ばせています。
播磨研究所では各事業部や取引先と連携しながら、商品開発に取り組む形ができつつあります。市場で成長の芽を伸ばせるような新商品をもっと上市しながら、収益力の向上を図っていきます。
一方で製紙用カンバスは、新聞紙をはじめとする製紙の需要の落ち込みで苦戦しています。インドネシアのダイワボウ・インダストリアルファブリックス・インドネシア(DII)を通じて日本だけでなく現地ローカルを含めた東南アジアへの販売にも取り組んでいます。品質だけでなく国内外でアフターフォローの面からも優位性を高めていきます。
――製品・テキスタイル事業はいかがですか。
上半期では前年同期比、計画比とも増収増益となっています。対米向け輸出は、米国での物価が落ち着いてきたこともあって回復しつつあります。国内カジュアル向けOEMもそれなりに安定した取引ができています。インナーを中心とした量販店向けのOEMが問題です。価格改定に応じてもらっていますが、この為替ではなかなか採算が合いにくく、追い付いていません。
――下半期の見通しはいかがですか。
基本的に上半期の流れを引き継いでおり、大きくは変わっていません。
まだまだ課題が残る部分はあります。改善を図りながらスピード感を持って対応していかなければいけません。ダイワボウHDから独立し、繊維専業の企業となったわけですから、同業の綿紡績に比べ意思決定を早く出せます。良い部分はもっと伸ばし、収益が下降気味の部分は徹底的に改善を図っていきます。
――設備投資ではまだ老朽化設備の更新が中心です。
目指すべき収益力に沿った設備にはまだなっていませんが、更新によってエネルギーコストの削減や、製品の高品質化、生産の効率化が進んでいます。開発した商品が量産化に移行するタイミングでいろいろと考えています。
――中計では「次世代の柱となる商品の創出」を掲げています。
開発案件で遅れ気味の部分は、播磨研究所や各事業部と連携しながら、もっとスピード感を持って対応していかなければいけません。合繊事業、産業資材事業とも新しい商品を開発したからといって、即採用にはならない。例えばフィルターであれば性能評価をした上でようやく販売ができ、時間がかかります。来期には次世代の柱となるような商品をもっとつくっていかなくてはと考えています。
――環境配慮型素材の拡販も強めています。
リサイクルポリエステルを米綿で包んだ2層構造糸「ツインレット」は、カジュアルのTシャツ向けで採用が増え、販売量が前期比2割増と伸ばしています。
グループに機能レーヨンを豊富に展開するダイワボウレーヨンがある強みも生かしていきます。綿と機能レーヨンを組み合わせた特殊紡績糸「セルハーモ」では特殊紡績によって、毛羽立ちが抑えられ、Tシャツやインナーにすれば長く奇麗な外観を保てます。セルロース100%で生分解性を訴えることも可能です。
独自性の高い商品の比率を高めながら、収益力を向上させていきます。できれば市場の動向に左右されない商品をいかに作っていくか。4年後にIPO(新規株式上場)を目指す上でも、市場で魅力ある企業へと成長を続けます。