新たな成長の舞台へ ~素材メーカー系 商社の視点~(1)帝人フロンティア

2025年03月06日 (木曜日)

質への転換で収益性向上

 素材メーカー系商社の存在感が高まっている。為替動向や気候要因をはじめ、事業を取り巻く環境は不透明感が強いが、そうした中でも業績を上げている。付加価値の高い素材の開発・提案、モノ作り力などが評価されている形だ。素材メーカカー系商社の立ち位置や今後の針路など、各社の施策に追る。

                       ◇

 帝人フロンティアの衣料繊維部門は収益力を高めている。同社の今期(2025年3月期)利益(帝人の繊維・製品セグメントの数値、以下同)は前期を上回る水準で推移し、鈴木哲志取締役副社長執行役員は「衣料繊維部門も想定以上」と話す。来期以降も収益性を重視した取り組みを推進する。

 同社の24年4~12月期の業績は、売上収益が2661億円で前年同期比11%増、事業利益が151億円で51・9%増となり、特に利益面で伸長を見せた。衣料繊維部門も順調とし、「量から質への転換、不採算や商流の見直しの実施などが奏功している」ほか、メーカーと商社の機能の融合も進んだ。

 販売面では、北米や中国市場向けの生地・製品、日本国内向けの重衣料やカジュアル衣料が数字を伸ばした。PTT(ポリトリメチレン・テレフタレート)繊維「ソロテックス」などの素材力が高い評価を得ていることに加え、中国のグループ会社で、ポリエステル長繊維織・編み物を製造・販売する南通帝人が好調だった。

 染色工程での水使用量削減などに力を入れている南通帝人は、このほど江蘇省生態環境庁から「長江デルタ地域(江蘇省、上海市、浙江省、安徽省)にまたがる環境推進模範活動」を推進する企業として認定を受けた。こうした取り組みもグローバルアパレルなどから支持されている理由と分析している。

 今後も重要拠点と位置付けてオペレーションを加速する。同時にタイやインドネシアを軸としたASEAN地域のサプライチェーン強化にも取り組む方針で、南通帝人の生地をASEAN地域で縫製するなど、多様なオペレーションを推進する。

 インドネシアでのモノ作りはニットが中心だが、織物の充実も図っていく。タイは、合繊織布・染色加工子会社であるタイ・ナムシリ・インターテックスを基軸とした取り組みを深化する。織物だけでなく「ニットの生機をタイで作り、タイ・ナムシリ・インターテックスで染めるというオペレーションも増えている」としている。

 ASEAN地域はモノ作りの拠点としてだけでなく、市場としても有望視し、現地アパレルなどへの販売を拡充していく。インド市場にも目を向けており、タイ・ナムシリ・インターテックスの生地のインドでの販売も増えてきた。

 日本市場については、スポーツ分野やカジュアル分野は比較的順調に推移している。一方でワークウエア分野はコストアップの影響が小さくなく、付加価値を上げて提案して収益性向上につなげるのが課題とする。北陸産地との連携では、良い商品を作り、「海外を含めてしっかりと売っていく」と強調した。