染色加工特集(4)/事業構造の変革進む染色加工企業/艶金/艶栄工業/帝人テクロス/尾張整染
2025年02月27日 (木曜日)
〈製品染めに参入/古着の染め直しや機能加工/艶金〉
編み地を主力とする艶金(岐阜県大垣市)は今期(2026年1月期)、製品染めに乗り出す。古着への染め直しや機能加工を付与することで高付加価値化を目指す。古着への再加工の要望が寄せられており対応を進める。
サステイナビリティーの進展で古着市場が盛り上がりを見せるほか、在庫減に寄与できる製品染めに着目。同社が手掛ける食品残さを染料に活用する「のこり染」を古着に活用してほしいという声も以前からあった。
具体的な加工や対象製品は今後詰めるが、脱色した古着の染め直しや、白っぽい古着へののこり染、古着への抗菌・消臭・防汚などの機能加工を検討する。元々あった製品染めの設備を用いる。
前期商況は衣料品市場の悪化で苦戦を強いられた。主要な顧客が生地事業を縮小した影響や、暖冬などで秋冬向けの受注が落ち込み、売上高は前の期比13%の減収だった。
一方で自販事業は堅調で、特に資材向けのロボットカバーがけん引した。別の自動車メーカー向けに販売が広がったほか、住宅関連向けにも採用が進んだ。
〈人材確保が生き残りの鍵/地方のリクルート事務所活用/艶栄工業〉
カーシート地やカーテン地を主力とする艶栄工業(愛知県蒲郡市)は人材の確保に力を入れる。地方に置いたリクルート事務所を生かす。嶋田義男社長は「最終的に生き残れるのは人材を確保できた会社」と強調する。
同市がある東三河地方はトヨタ自動車の系列会社や協力工場が多いことから、同社は新卒の確保に苦慮していた。愛知の外から人材を確保しようと鹿児島県に設立したのが九州リクルート事務所だ。
駐在のスタッフを置き、各県にある工業系の高校へのリクルート活動を推進。嶋田社長が現地に赴き会社説明をすることもあり、「実際に高校へ行って担当者と会うことが大事」と話す。
今年で設置して5年が経ち、毎年安定的に人材の確保につながっている。今春は女性2人が入社する予定。東北地方にもリクルート事務所を置く計画で、現在は会社案内の資料を学校などへ送付している。
今期(2025年11月期)商況は自動車向けが低調なものの、カーテン向けは昨対以上で推移。カーテン向けで小ロット対応の染色機を導入する。
〈体制強化へ投資継続/JYF初出展し発信強化/帝人テクロス〉
糸染め、織布などを行う帝人テクロス(愛知県稲沢市)は自社での一貫生産体制を強化するため、引き続き設備投資を続ける。同社は撚糸機、チーズ染色機、織機、丸編み機など各種設備を持つが、高かった外注比率を引き下げ、自社生産を増やすことで収益改善に取り組む。既に老朽化織機の更新、撚糸機の入れ替え、チーズ染色用の先巻きワインダーの増強も行った。
中島俊広取締役は「もう少し時間はかかるが、体制を充実することで、少しずつ意識改革も進んでいる」と話し、最終的にはグループ企業の尾張整染(同一宮市)も含めて糸加工から糸染め、織布、染色、仕上げの「一貫での生産拠点として構築したい」考えも示す。
同社はSUMINOEグループの自動車内装材製造、スミノエテイジンテクノ(大阪市中央区)の子会社で尾張整染の親会社でもある。カーシート地が主力で、ナノファイバーやマイクロファイバーなどの特殊な糸染めも行う。外部発信にも力を入れ始めており、3月5、6日に一宮市で開催される「ジャパン・ヤーン・フェア(JYF)」に初出展する。
〈改善へライン見直し/撤退企業の商権継承/尾張整染〉
カーシート地染色が主力の尾張整染(愛知県一宮市)は2025年度(26年3月期)、増収増益を見込む。昨年末に撤退した染色加工場の商権を継承したことが寄与するほか「受注面で来期も懸念材料はない」と中島俊広常務は手応えを示す。
受注増は人員を増やさず対応できる上、フル稼働を見込めるため収益も高まる。「本来の地力を出せる。25年度は勝負の年」と言う。そのためにも引き続き生産性の向上、人材育成、外部への発信力の強化に取り組む。生産性向上に向けては生産ラインの手直しに着手。年初から一部ラインで実施し生産効率が向上しており、他のラインにも広げていく。「その面では体制変化の1年でもある」。
設備投資も検討する。昨年5月には日阪製作所の高生産性を持つ最新鋭液流染色機を導入したが、その拡充も視野に入れる。
人材育成、発信力の強化として昨年も異業種交流展示会「メッセナゴヤ2024」に出展。「毎回、出展を通じて新たな企業との取り組みが進むなど良いPRの場になっている」と位置付ける。
24年度は第3四半期に撤退企業の商権も入り増収増益となる見通し。