ピエクレックス/「電気の繊維」取り組み拡大/堆肥化による素材循環も
2025年02月27日 (木曜日)
村田製作所のグループ企業であるピエクレックス(滋賀県野洲市)が開発・販売を進めるポリ乳酸(PLA)由来の繊維素材「ピエクレックス」の活用が広がりつつある。このほど、都内で「第1回ピエクレックスカンファレンス」が開催され、同素材の活用に賛同する企業・団体が、それぞれの取り組みや製品を発表した。(酒井 要)
「ピエクレックス」は、村田製作所と帝人フロンティアが2020年に発表し、現在はピエクレックス社が展開している。
PLA繊維を伸縮やゆがみなど物理的に動かすことで発生する電気を活用する「電気の繊維」として打ち出し、抗菌素材として展開を開始。金属や有機剤を使用せず、繊維の動きによる電気の作用で細胞膜を破壊し、抗菌性を発揮する。
発表以降、マスクや靴下などでの採用が進むほか、異業種との連携も広げ、マスクとの協働プロモーションとして、圧電繊維の動きを促進するグミキャンディーを発売するなど、新たな市場開拓に取り組んでいる。
また、「ピエクレックス」が植物由来の素材であることを生かし、製品を回収して堆肥化する循環インフラの構築も推進している。これを「P―FACTS」(ピーファクツ)プロジェクトとして展開し、23年以降は滋賀県守山市や立命館守山中学・高校と連携。イベントや学校行事で着用した衣料品を回収し、堆肥として再利用する「地着地消地循」の確立を進めている。
今回のカンファレンスには、「ピーファクツ」に賛同する約30の企業・団体、行政、有識者が参加。守山市のほか、京都府長岡京市や奈良県田原本町などの自治体と連携、鴨志田農園(東京都三鷹市)による堆肥への再生・野菜栽培など、循環型インフラ構築に向けた取り組みが紹介された。
会場では、「ピエクレックス」を活用した繊維製品の展示・発表も実施。タオル製造業の成願(大阪府泉南市)の仙波一昌社長もクロージングセッションに登壇した。
大阪・泉州タオル産地や大阪・関西万博に向けた取り組みを説明するとともに、別注素材「エンジェルスピン」と「ピエクレックス」を組み合わせた新製品「土にかえるタオル」を発表した。
仙波社長は「製品開発だけでなく、泉南市を含む行政との連携も視野に入れた循環型インフラの構築に取り組みたい」と展望を示す。
このほか、スポーツやアウトドア分野の製品開発に関するセッションや発表が行われ、「ピエクレックス」を用いた新製品の可能性と「ピーファクツ」との連携による事業展開の方向性が示された。
国内では、「ピーファクツ」に限らず、循環型社会の実現に向けたさまざまなインフラ構築が、素材メーカー、商社、アパレル各社によって進められている。ピエクレックス社は、循環インフラの整備と並行して、「電気の繊維」という独自の特性を生かし、抗菌以外の機能開発や用途拡大にも注力していく。