「グリーンマテリアル・新機能材料展」/最新技術・製品が結集/繊維関連企業も積極提案

2025年02月20日 (木曜日)

 次世代製品が示すサステイナブルな最新技術・製品が集結した展示会「グリーンマテリアル・新機能材料展」がこのほど東京都内で開催された。繊維関連企業の姿も見えた同展には多くの人が足を運び、同時開催の「nano tech2025」などと合わせて3日間の会期中に4万2千人を超える来場者を集めた。出展企業の一部を紹介する。

 グリーンマテリアル展は、環境に配慮した素材など“人・社会・地球”のための展示会。一方の新機能材料展は、“新しい”付加価値を創造する機能性マテリアルの総合展だ。

 両展示会は「高付加価値の実現×サステイナブルなものづくり」の提案を目的とし、最新製品と技術を持った企業が一堂に会した。

〈こんなところに採用〉

 新機能材料展では、東レや帝人などの合繊メーカーの姿が見えた。東レは、「エクセーヌ」などを紹介した。エクセーヌは、ポリエステル極細繊維の不織布にポリウレタン樹脂を含浸した人工皮革(工業材料)で、1970年に販売が開始された。「基本的には右肩上がりで販売が伸びている」という。

 加工性や摺動性、吸音性、復元性などに優れ、「こんなところに」と思うような箇所に使用されているのが特徴的。例えば、ゲーム機のクッション材やバーチャルリアリティー(VR)ゴーグルのレンズ摺動部材などに使われている。ピアノのアクションパーツやオーディオのディスクカーテンなどでもその姿が確認できる。

 メード・イン・ジャパンという安心感、時代の変化や顧客の要望に応じて進化してきたこともロングセラーとなった理由で、部分植物由来ポリエステルやリサイクルポリエステル使用品を展開している。用途開拓は重要としており、新規用途探索の一環として今回の展示会に出展した。

 同社のブースでは、オレフィン系長繊維不織布「アートレイ」シリーズ、ポリエステル長繊維不織布「アクスター」、フッ素繊維「トヨフロン」、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維「トルコン」、“炎を遮る”テキスタイル「ガルフェン」なども並べた。

 トヨフロンやトルコンは耐熱性や耐薬品性に優れ、特殊環境で使用するフィルター材をはじめとする幅広い用途で採用されている。

 ガルフェンは、耐炎化糸(非溶融・骨材)とPPS繊維(溶融・膜化)の複合で遮炎機能が発現し、延焼防止に貢献するとしている。

〈薄さや軽さに焦点〉

 帝人と帝人フロンティアは、共同でブースを構えた。今回の新機能材料展では13の素材を見せたが、このうちの約半分が新素材だった。帝人フロンティアが展開するナノファイバー「ナノフロント」の技術を生かし、軽さや薄さを実現した織物や不織布などを打ち出した。

 ナノフロントは、1本の直径が700ナノメートルの超極細繊維。ナノフロントを用いた生地は、滑りにくさや柔らかさ、肌当たりの優しさ、防透け性といった特徴を持ち、衣料品分野から雑貨関連、資材まで幅広い用途に採用されている。展示会ではナノフロントの技術を使った新開発品などが披露された。

 オレフィン系(ポリプロピレン)のナノファイバーを使った織物が目を引いた。「ナノオーダーのオレフィン系繊維を使った織物は市場にはない」と言う。耐薬品性や耐溶剤性に優れているほか、液中では油水分離にも期待できるとし、プレスフィルターろ材や精密エアフィルター用途などへの提案を模索する。

 ナノフロントの技術では、PPSを組み合わせた不織布も紹介した。高い耐熱性(連続使用温度190℃)のほか、耐薬品性にも優れ、微孔径や均一な孔径なども特徴だ。目付が20グラム、40グラム、80グラムのタイプを試作した。「20グラムのタイプが中心になりそうだ」とし、各種フィルターや基材などでの採用を想定している。

 薄さ、軽さはポイントの一つとし、目付が2グラムという超軽量の湿式不織布、帝人の炭素繊維「テナックス」を使用した極薄(0・115ミリ)の炭素繊維ペーパーなども展示した。湿式不織布は、「量産可能なものでは世界最軽量クラス」とし、厚さ0・01ミリ以下、空隙率80%以上を誇る。

〈用途広がる「ヒューモフィット」〉

 三井化学は、形状記憶シート「ヒューモフィット」を提案した。体温を感知して触れた瞬間から柔らかくなるため、人の体になじむ。インナー製品やスポーツウエア、寝装・寝具関連、シューズをはじめとする幅広い用途で採用されている。

 同素材のポイントは、ガラス転移温度(ポリマーが軟化する温度)にある。シートのガラス転移温度は28℃で、室温(約23℃)と人の体温(約36℃)の間にあり、体温が熱を伝え、シート温度がガラス転移温度を超えることで不思議な心地良さが得られる。

 現在はα―オレフィン共重合体の「アブソートマー」を原料としたフィラメントの開発も進めている。まだラボ段階とするが、芯鞘構造の糸などを作り、編み地を試作した。フィラメントの製造技術を確立した上で、アブソートマーとして販売する。

〈「nano tech2025」/スタートアップの姿〉

 「グリーンマテリアル・新機能材料展」と併催されたのが、国際ナノテクノロジー総合展・技術会議「nano tech2025」だ。ここでも多様な提案が行われたが、スタートアップの新日本繊維(千葉県我孫子市)の姿が見えた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースで提案した。

 新日本繊維は、石炭灰リサイクル繊維「バッシュファイバー」の製造技術を持つ。今回は、Jパワー、日本板硝子との連携で量産に向けて実証試験に入ることを紹介した。

 火力発電所などで生じる石炭灰を原料とする連続長繊維がバッシュファイバーだ。高強度や耐熱性、耐薬品性といった特徴を持ち、ガラス繊維などの代替として、建築・土木や自動車などの産業資材分野での活用が見込まれる。放射線への耐性も高く、宇宙分野も期待される用途だ。

 高崎量子技術基盤研究所の実験棟に紡糸設備を設置し、ラボレベルで試験を続けてきたが、2025年から量産工場での製造を見据えた技術検証に移る。Jパワー茅ヶ崎研究所に年産50~100トン規模の電気溶融炉紡糸設備を設置し、今夏に稼働を始める。石炭灰データベースの構築などに取り組む。