特集 小学生・園児服(4)/探訪 学生服の現場から/長野日本大学小学校/良質な学習環境での一貫教育

2025年02月18日 (火曜日)

 幼小中高の一貫教育に取り組む長野日本大学学園が運営する長野日本大学小学校(長野市)は、自ら学ぶ姿勢を持ち、国際社会で活躍できる人材育成を進めている。特徴の一つが教科横断型の探究的な学びに特化した国際バカロレア(IB)教育を導入している点。現在、PYP(3~12歳カテゴリー)候補校として、中高のIBプログラムに接続できるカリキュラムに取り組んでいる。

〈自律的態度を育成〉

 開校は2011年。全校生徒約160人が通う。ゆったりとした造りの校舎は、隣接する中学校舎と同じ意匠を取り入れた。多くの樹木に囲まれた校門前の広場とともに良好な景観を形成しているとして「第24回長野市景観奨励賞」を受賞している。

 同校ならではの特徴的な教育プログラムが、国際バカロレア機構(本部・スイス)が提供するIB教育の実践だ。世界の複雑さを理解し対処できる生徒の育成と、国際的に通用する大学入学資格で多様な進学ルートを確保することが目的。IB教育を受けるために東京や他県から教育移住する家庭もあると言う。

 基本的な学力の土台を固めるために同校独自の検定制度「N検定」を実施しており、学習課題の習得度合いを確認しながら中学進学に結び付ける。さらに学年に応じた漢字、算数検定の全員合格を目指しており、毎年95%を超える合格率を誇る。23年には漢字検定で「優秀団体賞」を獲得した実績を持つ。

 少子化の影響で小学校に求められる教育指導法も変化しつつある。黒岩敏成校長は「児童たちの自主的なアイデアを尊重し生かせる環境を築くことに注力している。学校生活が心地良ければ必然的に学校に行きたくなってくる」と話す。教室の机の配置をフリーアドレスにしたり、休憩時に横になれるよう畳を敷いたりといったことも全て児童の考えから生まれたと言う。自主性を重んじる教育方針の正しさは、現在同校に不登校児がいないということが実証しているのではないだろうか。

〈中高と統一感ある制服へ〉

 同学園では22年、時代の大勢に合わせて中学、高校の制服をジェンダーレス対応にリニューアルした。当時、小学校では体操服のリニューアル案が出ていたこともあり、制服も中高と統一感のあるデザインに変更する良い機会になるのではないかという案が急浮上。学園内でそのまま進学する生徒が多いことから保護者の経済的負担を軽減できるというメリットもあった。

 リニューアルに向けては、まず23年3月に制服メーカーに検討サンプルを依頼した。その後、黒岩校長を中心に職員や保護者、児童の意見を取り入れながら修正を加え、最終サンプルを校内に展示。

 その時点で未定だったネクタイ、リボン、ボタンについては児童の意見を取り入れながら再修正を行い、9月には制服全体の最終デザインを決定することができた。製作は長野菅公学生服(長野市)が担うことになった。

 前制服は詰め襟とセーラー服だったが、新制服は中高との統一感を優先した淡いキャメルカラーのブレザーで印象はガラリと変わった。他の主要アイテムは、長袖カッターシャツ、ボトムスの長ズボン、半ズボン、キュロット、そしてネクタイ、リボン。夏服は、ポロシャツと半袖カッターシャツとした。

〈着やすく動きやすい〉

 ブレザーは中学、高校と同様にジェンダーレスデザインで、動きやすいニット素材を採用。前合わせを自由に変えられ、前ボタンの変更だけで中学校でも着用できる仕様とした。さらに低学年が着用しやすいようシャツはドットボタンとし、ボトムスには半ゴムを使用。ネクタイとリボンのカラーは、ブレザーとの相性が良く、小学生らしい明るさのあるグリーンを選んでいる。

 「検討段階では着やすさを重視したため生地やボタンの位置などの調整に難航したが、結果的にニット生地の動きやすさと、アイテムを選択できることが決定ポイントとなった」と黒岩校長。児童に試着してもらったところ、喜んでいた様子がリニューアルを進める上で後押しになったと言う。

 新制服導入後、初の冬期を迎えている現在、女子のズボン着用率が半分程度にまで高まっている。ジェンダーレス対応という当初の目的に加え、寒さ対策という面でも実用性があったようだ。一方、夏に向けては、ここ数年続く猛暑が懸念されている。今春には保護者からの要望に応えて、新たに着替えしやすいスカートの導入を予定している。