特集 小学生・園児服(2)/有力学生服・素材メーカー/ニーズに合わせ提案/モノからコトまで〉

2025年02月18日 (火曜日)

 学生服や素材メーカーは小学生服市場でのさまざまなニーズに合わせた提案を行っている。近年は、商品などモノに加え、サービスなどのコトの提案も強化する。開拓が難しい市場ではあるが、小学生服導入のメリットなども伝えながら、引き続き取り組みを進める。

〈夏物の販売が伸長/トンボ〉

 トンボは小学生服部門で上半期(2024年7~12月)、売り上げが前年同期比微増となった。

 商品では店頭向けの「トンボジョイ」が安定的に売れている。防汚、撥水(はっすい)、撥油、静電防止加工や、サイズ調整機能やストレッチ性による着心地の良さが評価される。

 性的少数者(LGBTQ)への配慮から、中学校を中心に制服のブレザー化が進んでいる。この動きが都心から地方に波及する中、小学生服においても長ズボンの需要が高まっている。また、夏の長期化によって盛夏服の需要も高まっている。

 アイテムでは、上物の点数に対してスカートが減少傾向にある一方、半ズボンが増加傾向にある。また、夏物の販売が伸びており、特に半ズボンの販売量は2倍近くになっている。

 今春の入学商戦に向けてスクール、スポーツともに生産は順調に推移する。原材料の供給も早めの手配によって安定していることに加え、国内と海外における生産も計画通り行えている。

〈3~6年生に仕事体験イベント/菅公学生服〉

 菅公学生服は小学生向けにおいて、商品の販売だけでなく、仕事体験といったサービス面も拡充しながら、提案を行っている。

 小学生服では、イージーケア性、耐久性を持つ「カンコータフウォッシュ」ブランドを軸に販売につなげる。今春の入学商戦に向け、小学生服部門では「シェアは横ばい」(羽冨裕也取締役)で推移する。

 小学生向けでは体験プログラムも用意し、コトの提案も強めている。グループ会社で、キャリア教育事業などを手掛けるカンコーマナボネクト(岡山市)では、小学3~6年生を対象とした仕事体験イベント「キッズビジネスパーク」を開いている。同イベントは出展企業のブースで仕事を体験し、会場内で使えるマネーをもらって、会場内で使うというもの。昨年12月に開いたイベントには30社、300人の子供が参加した。同社の伊藤孝恭常務は「会社を知ってもらうという点で、出展企業にもメリットがある」と話す。

〈防災教育事業も柱へ/明石スクールユニフォームカンパニー〉

 明石スクールユニフォームカンパニーは小学生服部門で、主力とする「富士ヨット小学生服」などを軸に販売を進めている。

 体育着の定番ブランド「ヨットスポーツ」も昨年にリブランディングし、パターンや機能などを刷新。前田健太郎営業本部スクール商品政策室室長兼営業管理室広報担当部長は「新たな商材として認知されてきている」と話す。

 同社は防災教育事業にも力を入れている。昨年は元日に発生した能登半島地震の影響もあり、飲食料など災害補助備蓄品をひとまとめにした「セーフボックス」が「かなり活発に動いた」。また、コンパクトに畳める防災用ヘルメットも徐々に販売が広がる。

 備蓄品のほか、「防災SDGsすごろく」など、遊びながら防災学習できる教材も充実しており、「じわじわと浸透してきた」と言う。防災に対する意識が高まる中、「防災教育事業を柱とすべく対応していく」とする。

〈教育支援でウール浸透へ/ニッケ〉

 ニッケは、2022年からウールの特性を紹介し家庭科の学習指導要領に準拠した出張授業「ウールラボ」、スクールマナーセミナーといった、身近な制服を生きた教材として活用する体験型教育プログラム「ウェアディ」の活動を進めている。特にウールラボはここ2、3年力を入れ、生徒や教員合わせて7千人以上が受講した。中学生向けが多いが、小学校6年生も授業を受けられる。昨年、千葉県総合教育センターから依頼を受け、ウールラボを県内公立中学校で活用するための教員向け研修も実施。同社では環境配慮型の学生服地「エミナル」の販売にも注力し、制服そのものを教材として活用できる。

 23年5月には制服から環境問題やジェンダー問題など、SDGs(持続可能な開発目標)について考える教育の情報サイト「コンパスポート」を立ち上げた。持続可能な開発のための教育(ESD)推進のヒントになるような情報発信にも力を入れる。

〈差別化企画が充実/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は小学生向けで、業界に先駆けたモノやコトの開発、提案に力を入れてきた。片山一昌取締役は「長年、小学校に対して新しい話題作りを行ってきた」と説明。これらの積み重ねが「小学生服と言えばオゴー」として、学校からの支持につながっている。

 女子専用のハーフパンツ「エンジェルパンツ」や、ダブルフェースニット使いの「アクティ」、GPS装着に対応した機能型小学生服「プレセーブ」など、これまでに小学生向けで新しい企画を市場に投入してきた。

 モノだけでなくコトの提案も充実。地域の安全な環境づくりにつなげる「全国地域安全マップコンテスト」など、他社と差別化した取り組みも評価を得る。標準服を採用することのメリットなどを盛り込んだ冊子を作るなど、小学生服の価値も訴求している。

 2024年12月期は、少子化などの影響がありつつも小学生向けの売り上げで「大幅な落ち込みはない」とする。

〈ポリエステルで“刺さる”開発/東レ〉

 東レは学生服地のポリエステル高混率化が進む中、インクジェット(IJ)捺染による柄物生地や特徴ある風合い、ストレッチ、高通気など差別化素材の供給を強めている。「市場に“刺さる”商品をしっかり打ち出す」ことで追い風を捉える。

 ウールのような風合いを併せ持つポリエステル100%の梳毛調織物「マニフィーレ」はここ数年安定して販売量が増加。IJ捺染による柄物生地では供給のリードタイム短縮やロットの低減、先染めには出せない柄の表現などに優位性があり、販売への準備を進める。

 夏の期間が長くなりつつあることで、短パンやポロシャツ向けの生地供給も増え、暑さ対策への要望が高まっている。同社は原糸や加工技術を駆使して生地に通気孔を発現した高通気生地「ドットエア」といった夏場に最適な素材も多数展開。物性面での改良を進めながら、学販に適した生地開発も進める。