特集 小学生・園児服(1)/提案広げ市場を開拓
2025年02月18日 (火曜日)
長年、市場が一向に広がらない小学校制服(標準服を含む)。制服(標準服)のない地域や学校に対して、採用につなげていくことは困難な作業といえる。ただ、そのような中でも学生服メーカー各社は単なる小学生服の販売だけでなく、小学校向けのサービス面の提案も拡充しながら、地道に提案を進めている。
〈昨年出生数は70万人割れか/少子化に歯止めかからず〉
厚生労働省が先月24日に発表した人口動態調査速報(日本に住む外国人や外国に住む日本人も含む)によると、昨年1~11月の出生数は66万1577人で、前年同期に比べて5・1%減少した。
23年の出生数は前年よりも4万3471人減り、72万7288人と、人口動態調査が始まった1899年以来最少となった。24年もこの流れは変わらず、出生数は70万人を下回る可能性が濃厚。少子化に歯止めはかかっていない。
少子化の進行によって、小学生の人数も減少傾向が続く。文部科学省が昨年12月に発表した24年度学校基本調査(確定値)によると、小学校の在学者数は前年比10万7952人減の594万1733人。600万人を割り、過去最少となった。前年度に比べて減少幅も拡大した。
前年度は私立校の在学者数は増加していたものの、24年度は国立、公立、私立のいずれも減少となった。国立校は前年比330人減の3万5391人、大多数を占める公立校は10万7555人減の582万6352人、私立校は67人減の7万9990人だった。
〈仕事体験や防災教育など/モノからサービスまで〉
全国に1万8822校(24年度学校基本調査)ある小学校で、標準服を採用している学校は15~20%ほどとみられ、この比率は長年ほぼ変化がない。
ただ、公立校と私立校とで温度差があるものの、制服を採用することに意義を感じている小学校があることも事実だ。生光学園小学校(徳島市)は24年の春から女子、今春からは男子の制服を刷新する。試作を重ねながら、同校独自のこだわりの制服に仕上げた。その新制服は児童からも好評のようだ。
長年私服を採用していた小学校が標準服を新たに導入するケースは少ない。ただ、少子化によって学校の統廃合が進む中、「標準服を採用していた学校と私服の学校が統合した場合、標準服を採用するケースが高い」(学生服メーカー)との声も聞かれる。導入のメリットなどを引き続き訴求していくことも求められそうだ。
学生服メーカーは小学生服分野で、商品はもちろん、サービス面にまで手を広げながら、提案を進めている。
トンボは、店頭向けの「トンボジョイ」の販売が安定的に推移する。防汚、撥水(はっすい)などの機能性や着心地の良さで評価を得る。昨年は猛暑とともに、夏日が長引いた影響もあり、半ズボンといった夏物の販売が伸びた。
菅公学生服は、機能性の高い「カンコータフウォッシュ」を軸に販売。今春の入学商戦に向けて「シェアは横ばい」(羽冨裕也取締役)で推移する。
グループ会社のカンコーマナボネクト(岡山市)ではキャリア教育事業なども提供する。昨年12月に同市内で開いた「キッズビジネスパーク」は、仕事を体験できる小学生向けのプログラムだ。仕事を楽しく学ぶことで、子供の将来の夢を探すサポートをする。若者の県外流出が深刻化する中、「地方創生という意味で、岡山に限らずイベントを他でも展開できれば」(伊藤孝恭常務)としている。
明石スクールユニフォームカンパニーは、「富士ヨット小学生服」を主力に販売。昨年には、体育着の定番ブランド「ヨットスポーツ」も刷新し、訴求している。
防災教育に力を入れているのも同社の特徴。昨年発生した能登半島地震や、今後発生の恐れがある南海トラフ地震などで防災意識が高まる中、災害補助備蓄品などを封入した「セーフボックス」が「かなり活発に動いた」(前田健太郎営業本部スクール商品政策室室長兼営業管理室広報担当部長)。展開する製品などを発信しながら、防災教育事業を新たな柱に育てる。
小学生服市場で長年、さまざまな新しい提案を投げ掛けてきたのはオゴー産業(岡山県倉敷市)。GPS装着に対応した機能型小学生服「プレセーブ」など、“安心・安全”を軸とした提案を積み重ねながら、学校からの信頼につなげてきた。
片山一昌取締役は「小学校の標準服があってこそ、中学や高校への提案にもつながっていく」とし、「今後も小学生服を大事にしていく」と強調する。
〈一部でLGBTQ対応も/高まる長ズボン需要〉
性的少数者(LGBTQ)への配慮から、全国の中学校で制服を従来の詰め襟、セーラー服からブレザー制服へとモデルチェンジ(MC)する動きが広がっている。小学校においても中学校ほどではないが、一部でその動きが出てきた。
MCの動きが都心部から地方へと広がる中、トンボでは「長ズボンの需要が高まっている」とする。ジェンダーレス制服として長ズボンの定着が進んでいるようだ。
学校法人長野日本大学学園長野日本大学小学校(長野市)では22年、同学園の中学、高校の制服をジェンダーレス対応に。これに伴い、小学校の制服もジェンダーレスデザインのものに刷新した(8面参照)。ジェンダーレス対応に加え、寒さ対策という面でも女子のズボン着用率が高まっていると言う。
制服のほか、「帽子などで“男子型”“女子型”という呼び名をやめてほしいという学校も出てきた」(業界関係者)との声も聞かれる。