特集 スポーツ&アウトドアウエア(2)/注目のスポーツ素材/帝人フロンティア/旭化成アドバンス/東洋紡せんい/住友金属鉱山

2025年02月14日 (金曜日)

 素材メーカーにとってスポーツ・アウトドアウエア向けは、合繊の高い機能性などが生かせる分野の一つだ。機能性のレベルアップに加え、環境配慮素材によるサステイナビリティーへの取り組み、他のファッション分野を含めた幅広い用途への足がかりにもなる。

〈評価高まる「オクタ」/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、スポーツ・アウトドア向けテキスタイルとして独自性の強い高付加価値素材の提案に力を入れる。主力の高バランスニット生地「デルタ」に続いて、評価が高まっているのが8葉中空断面ポリエステル糸使い「オクタ」だ。

 同社はメガブランドだけでなく欧米の中小規模・新興ブランドへの販売にも力を入れてきた。新興ブランドは既存製品と異なる素材による商品企画を志向するケースが多く、そこで同社の素材への評価が高まっている。

 中わた・裏地一体型トリコット生地「オクタCPCP」やオクタで非起毛加工の立毛構造を実現した「サーモフライ」などが中わた製品や裏毛製品の代替として採用されるケースが増えた。そのほか、コットン調の風合いに高い吸汗速乾性、耐久性、防透性、UVカット機能を併せ持つポリエステル編み地「アスティ」も人気が高く、採用が増えている。

 環境配慮への取り組みも一段と重要になることから、再生ポリエステルなど環境配慮素材の使用拡大に加え、関連する国際認証の取得など基盤整備もさらに進める。国内の製造・加工スペースに限りがあることから、子会社や協力工場のあるタイやインドネシアなどでの生産基盤の拡充にも取り組む。

〈規制対応ラミネート/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスは、スポーツ・アウトドア向けに主力の高密度ナイロン織物「インパクト」シリーズを引き続き重点提案していく。特にラミネート加工による透湿防水生地「インパクトΣ」は欧州の環境規制にも対応しており、販売ポートフォリオの高度化の主役を担うことが期待されている。

 同社のスポーツ・アウトドア用テキスタイル販売は好調が続いているが、国内の生産能力に限りがあるため、さらなる業容拡大のためには商品の高度化が不可欠となる。このため欧米のPFAS(有機フッ素加工物)や有機溶剤のジメチルホルムアミド(DMF)規制に対応したラミネート加工透湿防水ナイロン織物のインパクトΣなど高付加価値品の拡販に力を入れる。

 国内産地の生産能力に限りがあることで納期が長期化しているのも課題となっており、特にラミネート加工はこの傾向が強い。このため受注の工夫に加え、加工場との取り組みで製造ラインの改良なども進めている。

 ニット生地の拡販も現在のテーマ。キュプラ繊維「ベンベルグ」を活用した商品でサイクリングやランニング市場での新規開拓を進めており、25春夏でも採用が進んだ。引き続き素材の独自性を強みに提案を進める。

〈ピン仮の新ブランド/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、ピン仮撚り糸使いの素材ブランドとして「バウンザ」を新たに打ち出す。スポーツ素材ではピン仮撚り糸使いが柱になっているが、リブランディングでさらなる拡販につなげる。

 ピン仮撚り糸は一般的なフリクション式に比べてかさ高性や軽量性、伸縮性、防透け性などに優れ、差別化できる素材として人気を高めている。海外を含めて要望が多く、生地での販売量はこの数年で数倍に拡大した。

 さらなる拡大に向け、ピン仮撚り糸使いの素材を幅広くそろえるバウンザを新たに打ち出す。ファインゲージやハーフゲージ、クオーターゲージなどピン仮撚り糸の特徴を生かしたファブリケーション開発をさらに進め、国内外に展開していく。ピン仮撚り加工のスペースも確保しており、日本だけでなくインドネシア子会社のTMIでも対応できる。

 ピン仮撚り糸のほかでは、長短複合糸「マナード」などが堅調に推移する。特にウール使いのマナードは機能性や物性面での高さ、高級感などが評価され、スポーツインナーなどで採用が増えている。

 スポーツ素材事業部はこの数年、収益重視で不採算分野の見直しに取り組んできたが、今期(2025年3月期)は収益性の改善とともに売り上げも回復している。強化している生地販売の回復が大きく、ゴルフ用途が引き続き堅調で中国や韓国など海外向けも伸びている。来期(26年3月期)は収益を重視した基盤の確立を完了させ、将来の成長に向けた布石を打つ。

〈光熱変換素材で市場開拓/住友金属鉱山〉

 住友金属鉱山は、近赤外線を吸収して熱に変えるナノ微粒子を使った素材「ソラメント」の多用途展開の一環として、瀧定名古屋(名古屋市中区)と協業してアパレル分野への訴求を強めている。

 ソラメントは、レアメタルのタングステンを中心とした化合物を原料とするナノ微粒子素材で、可視光線の高透過率と、太陽光などに含まれる近赤外線に対する強力な吸収力が特徴。現在はカーウインドーや建築物の窓材など産業資材として多く採用されている。

 2023年秋に実施した同素材と技術のリブランディングを機に、アパレルや農業分野への打ち出しを強めている。同素材をポリエステルやナイロンに練り込んで紡糸した糸や、生地、最終製品などで、発熱、遮熱、赤外線盗撮対策、肌老化防止といった機能ニーズに対応する。

 同社による生地発熱機能実験では、10分間擬似太陽光を当てた際、通常繊維がプラス6・4℃だったのに対して、ソラメント含有繊維はプラス19・4℃の暖かさを示している。一方、遮熱性実験では、太陽光照射から5分後のタープ下の空間温度を比較。ソラメント加工した場合、約6℃の温度低下を確認している。

 また、白色を含めた明度の高い色相へのカラーリングが可能なことから、スポーツ・アウトドアアパレルに加え、一般ファッションへの広がりも期待する。