綿紡績大手4~12月期 繊維事業の収益改善進む
2025年02月14日 (金曜日)
綿紡績大手の2024年4~12月期決算が出そろった。繊維事業はエネルギーコストや原材料のコストアップが続き、消費者の節約志向や暖冬の影響で厳しい環境にある。しかし、価格転嫁が進み、クラボウやシキボウでは利益の改善が進む。ただ、全社ベースでは半導体業界向けの需要回復など非繊維事業の収益性が大きく高まる中、繊維事業だけを見ると回復にやや力強さが欠けている。
クラボウは減収も営業損益で黒字を維持。糸は原綿改質の機能綿糸「ネイテック」やタイ子会社のデニムの販売拡大で増収。生地は中東向けが堅調な一方で、カジュアル向けの受注が響き減収だった。繊維製品は暑熱環境下でのリスク管理支援システム「スマートフィット」の販売増も、カジュアル衣料向けが低調で減収だった。
シキボウは原糸販売や生活資材のリビング分野で苦戦し減収だった。しかし、ニット製品で不採算アイテムの撤退、ユニフォームで価格改定効果や新商品の出荷拡大によって利益が改善した。中東民族衣装向け生地輸出も引き続き堅調で、黒字浮上までもう一歩のところまできた。
富士紡ホールディングス(HD)の生活衣料事業は減収減益だった。繊維素材は物流費やエネルギーコストの高騰、円安を受け苦戦した。インナーブランド「BVD」を中心とした繊維製品も、量販店の店舗減少や消費者の節約志向の高まりで厳しい環境。原材料の高騰を受け粗利率が低下した。一方でネット販売の拡充とともに、高品質な日本製品が評価され輸出も伸ばした。
日東紡の資材・ケミカル事業は増収も減益。うち繊維分野のみを見ると、第3四半期まで増収を確保しているが、暖冬でアパレルメーカーが「生産を抑えている」影響を受け、販売数量ベースでは減少し減益だった。
将来的にIPO(新規株式上場)を目指す大和紡績の上半期(24年4~9月)は前年同期、計画とも上回るペース。合繊・レーヨン事業は衛材関係の需要増加で順調だった。産業資材事業は重布とゴムの販売が堅調、フィルターが電子部品業界の回復でやや改善も、製紙用カンバスが製紙業界縮小のあおりで苦戦。製品テキスタイル事業は米国向けアパレルの需要回復により販売増も、国内は為替の影響を受け苦戦した。
日清紡HDの通期(24年12月期)は、ブラジルで渦流紡績糸の販売好調によって2期ぶりに営業損益が黒字化した。ただ、期初に計画していた売上高400億円、営業利益9億円には届かず、シャツの販売不振、ユニフォームの価格転嫁の遅れが響いた。