ごえんぼう

2025年02月06日 (木曜日)

  先月の「私の履歴書」(日本経済新聞)は伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOの半生を描く内容だった。若き日の挫折と強烈な劣等感、総合商社で「万年4位」とやゆされた同社をどう引き上げたのか▼繊維部門出身でブランドビジネスの黎明期を支えたアイデアマンは、時代の荒波と相まって敏腕商人に変貌する。同社役員だった瀬島龍三さんや三井物産の鈴木正隆さん、ジョルジオ・アルマーニさんなど、あの時代の巨星たちも登場する▼ファッション全般を担当する筆者にとって“伊藤忠の都市伝説”と思っていたことが全て本当の話であったことも興味深い。取引に至る過程やライセンス契約の内幕も赤裸々に明かしている▼ネタバレを避けるため、連載の紹介はここまで。財閥系商社への対抗心をあらわにする最強経営者という表の顔とは別に、人間味あふれるたたき上げの商社マンが実像のようだ。大阪弁の文章も心地よい。