特集 25春夏オフィス・サービスウエア(2)

2025年01月31日 (金曜日)

〈制服廃止と人手不足〉

 オフィスウエアと、食品白衣を含むサービスウエアのメーカー各社が2025年の市況をどのように予測しているのか。オフィスウエアについては「悪化」11社に対して「前年並み」4社で、伸長見通しを示したメーカーはなかった。

 メーカーからは「オフィスウエアの市況悪化は避けられない。従来型を大切にしつつ接客業にも選ばれる商品開発に力を注ぐ」(ヤギコーポレーション)、「JAなどでも廃止の流れが出てきているため、さらなる市場規模縮小が見込まれる」(ツカモトコーポレーション)など、オフィスウエア廃止の流れには逆らえないといった見方が大勢を占める。

 従来は廃止論が高まった後に、その反動として再びユニフォームのメリットが見直されるということが繰り返されてきたが、今回はその兆候がまだ見られない。現状が新型コロナウイルス禍後の新常態として定着してしまう可能性も否定できない。しかしながら一部では「数年かけて開発に注力してきた新たな装い提案が認知、採用されるケースが増えており前年並みを目指す」(チクマ)といった動きも見られる。

 一方、サービスウエアは、引き続きインバウンド消費を背景にした好調な業種向けのユニフォームがけん引する形で「好調に推移」が13社、「前年並み」6社、「悪化」1社となった。

 メーカーからは「人手不足はあるものの、インバウンドの影響で買い替え需要は増加傾向にある」(住商モンブラン)、「インバウンドや万博開催に伴う経済活性化によって飲食、イベント物販サービス業界などへの好影響が期待できる」(ボンマックス)など、見通しにも明るさが見られる。

 食品白衣分野は「食品工場向けは比較的良いが、人手不足問題が深刻化している」(ガードナー)、「学童給食衣の新規引き合いが多く今年の注力分野になる」(サカノ繊維)、「価格重視の傾向がますます強まっているため、レンタル向けに訴求しやすい価格帯製品を投入し、高付加価値製品との住み分けを図る」(国立)。

 順調なサービスウエアの中でも一部で変動がみられる。「人件費アップを吸収できていないスーパーマーケットの業績は懸念事項」(ツカモトコーポレーション)、「これまで堅調だったカーディーラーからの引き合いが昨年の秋口以降鈍くなっている」(ハネクトーン早川)。

〈万博効果は限定的〉

 大阪・関西万博が4月13日~10月13日にかけて開かれる。関西圏の経済活性化の起爆剤としても期待されているが、ユニフォーム市場にとってはその影響は限定的のようだ。

 1970年開催の大阪万博は、斬新で統一されたデザインのユニフォームが多数採用されたことで、ブランディングとしてのユニフォームの価値を一気に高めるきっかけとなった。しかしながら時代は移り、今回の大阪・関西万博が掲げるテーマの一つは多様性。各パビリオンのアテンダント用ユニフォームは「個」を全面に独自性を打ち出す作品が多い。

 一方、会場周辺の観光・ホテル、飲食、警備業向けの需要喚起につながったかというと、「影響はない」との回答が9社、「少しは影響がある」、「これから影響がありそう」「不明」が各4社となった。万博からの直接的なユニフォーム受注というケースは限られる。間接的な影響があったにしてもそれがどの程度のものだったのかを推し量ることは難しいのかもしれない。開幕後の動きに注目したい。

〈サステ意識さらに広まる〉

 ワークウエア分野と比較してサステイナビリティーへの取り組みが出遅れていたオフィス・サービスウエア分野だが、ここに来て急激に意識変化が見られるようになってきた。特に注視したい25年の業界動向についての設問では、「サーキュラーエコノミーへの取り組み」がトップで12社、「環境配慮素材の採用」が11社で続き、サステ、SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高さをうかがわせる。他に、市況を左右する事象でもある「価格改定の動向」10社、「制服廃止の風潮」9社、商流に影響する「EC・通販市場」、「ユニフォームレンタルサービス」各8社などとなった。

 メーカーは業界の変化をさまざまな観点から注視している。「社外アピールだけでなく、社内エンゲージメントを高める意味合いで環境配慮素材を使用するケースもある。付加価値提案、差別化提案で、より価値の高いユニフォームが必要とされている」(オンワードコーポレートデザイン)、「サービス業の身だしなみルールの緩和は人手不足の解消にもつながり、ユニセックス商品の広まりなどの潮流となりつつある」(住商モンブラン)、「採寸システムなどへのAI(人工知能)導入は、省人化の観点からも今後さらに加速していくと思われる」(ヤギコーポレーション)。

 商流の変化への対応では「将来を見据えた海外での販路開拓に取り組んでいく」(ボンマックス)、「サービスウエアはインバウンド需要で増えるが、小口化、短サイクル化が進むと電子商取引(EC)を活用した購買が進むと思われる」(アルトコーポレーション)、「サーキュラーエコノミーへの取り組みは興味を持つユーザーもいるが費用面から話が進展しないことがほとんどだ。今後の変化を注視したい」(国立)、「環境ニーズはますます強まる。広域認定による自社品の回収のみならず、チクマノループとして他社品や一般衣料まで視野に入れた対応でニーズに応えていきたい」(チクマ)といった考えが示された。

=アンケート協力企業=

 アイトス、明石スクールユニフォームカンパニー、アルトコーポレーション、オンワードコーポレートデザイン、カーシーカシマ、ガードナー、KAZEN WLD、国立、サーヴォ、サカノ繊維、ジョア、神馬本店、住商モンブラン、辰野、チクマ、ツカモトコーポレーション、ハネクトーン早川、フォーク、ボストン商会、ボンマックス、ミドリ安全、ヤギコーポレーション(五十音順)