中国の日系メーカー、商社/地場スポーツ向け拡大/24年は過去最高益に

2025年01月21日 (火曜日)

 中国の日系メーカー、商社が生地・製品の地場スポーツブランド向け販売を拡大している。一部企業の2024年純利益は、過去最高を更新した。中国製がメインだが、日本製の取り組みも始まっている。

(岩下祐一)

 中国では、ファッションのスポーツテイストのトレンドやスポーツ人口の拡大を背景に、スポーツ・アウトドアブランドの好調が続いている。その筆頭が最大手の安踏(アンタ)グループの傘下ブランドだ。「デサント」や「コーロンスポーツ」、アンタ子会社、アメアスポーツの「アークテリクス」「サロモン」などが売り上げを急拡大している。

 アンタグループはこのほど、「デサント」と「コーロンスポーツ」などの24年売上高が、前年比40~45%増えると発表した。「デサントの売上高は70億元近く、コーロンは40億元弱となり、それぞれ40%、60%増える」と、同社のサプライヤーは明かす。

 これらブランドはいずれも高級ゾーンだ。スポーツ用途もあるが、多くは仕事や旅行などさまざまなシーンで普段使いされている。

 官需市場が大きいことも中国ならではだ。「コーロンスポーツは最近、北方エリアの役人に人気」と日系商社幹部は話す。習近平国家主席が愛用しているとされるアークテリクスは「ロゴが目立たないデザインが好評」と言う。

 日系メーカー、商社は、デサントとコーロンスポーツ、同じくアンタグループ傘下の「フィラ」の生地と製品の主要サプライヤーだ。同グループは24年11月15日、江蘇省蘇州でサプライヤーミーティングを開いた。その中で伊藤忠商事、帝人フロンティア、蝶理、一村産業の中国法人や、東レが出資する互太紡織(パシフィック・テキスタイルズ)などを、優秀サプライヤーとして表彰した。

 日系企業の24年生地・製品の内販は、この恩恵を大きく受けた。消費の低迷が響き、ファッション向け生地が伸び悩む一方、スポーツ向けは好調だった。

 帝人商事〈上海〉は、地場スポーツ大手2社向けの製品OEM/ODMを大幅に拡大。「南通帝人の高付加価値な生地やODMのデザイン力が評価されている」と、小笠原重典董事長は話す。

 南通帝人は25年3月期業績が3期連続で前期比増収増益となり、純利益が過去最高を更新する見通しだ。地場スポーツ向けと、欧州ブランドの内販向けが貢献する。

 一村〈上海〉貿易の24年業績は、前年に比べ大幅な増収増益になったもようだ。新型コロナウイルス禍前の19年実績を超え、過去最高益を更新する。合繊使いの中国製生地の地場スポーツ向け販売がけん引した。

 こうした企業が手掛ける生地と製品の大部分は中国製だが、日本の北陸産地の織物や和歌山産地の丸編み地を使った製品の取り組みも一部で始まっている。「アンタグループは日本素材への関心が高い」と日系サプライヤーは指摘する。納期などの課題はあるものの、日本素材のさらなる拡大に期待が高まっている。