トランプ2.0で深まる“不確実性”/次の成長に向け正念場/繊維業界
2025年01月20日 (月曜日)
今日20日、米大統領選で再選した共和党のドナルド・トランプ氏の就任式が開かれる。トランプ2・0によって第1次政権時に追求してきた「米国第一主義」が加速され、世界の情勢が大きく変わる可能性がある。日本の繊維業界はどのような影響を受けるのか。先行きへの“不確実性”が強まる中、次の成長に向け正念場を迎える。(於保佑輔、桃井直人、宇治光洋)
三菱総合研究所によると、トランプ政権によって変化するのは「自由貿易から保護貿易」「国際協調路線から一国主義」「開かれた国から排外主義」「世界の警察官としての役割の縮小」の四つを挙げる。トランプ2・0は、第1次政権以上に「米国のみが繁栄すること」を最優先する動きを強めるとの見方を示す。
年明けの互礼会に参加していた繊維関連企業のトップからもトランプ政権に対する高い関心がうかがえた。環境配慮への取り組みなど、1社だけで完結できるビジネスの構築が難しくなる中、今年は「ますます企業間の連携がキーワードになる」(クラボウの藤田晴哉会長)。一方で世界が「分断するかしないかはトランプ政権次第」として、政権の動向が繊維業界にとってもさまざまな影響を及ぼす可能性を示唆する。
第2次トランプ政権下で予想される高関税と減税政策は米金利上昇の契機となり、ドル高・円安になるとの見方が強い。事業改革や投資を進めてきた企業にとっては「今年はその成果に期待できる」(東洋紡の竹内郁夫社長)年ではあるが、「懸念材料は為替」として急激な為替変動を警戒する。
特に関税を巡る米中貿易摩擦の激化が、日本の繊維業界にも大きなインパクトをもたらすことは必至。中国から他の地域・国に生産がシフトし、「日本製製品に好機が訪れる可能性がある」(東レの大矢光雄社長)との見方が強い。
ASEANでは、トランプ政権誕生を歓迎する国が目立つ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、前政権時における対中国強硬策の維持・拡大からASEAN地域への生産移管を期待する向きが強いという。東南アジアに拠点を持つ企業が多いだけに「日本にとっては追い風となる」(クラレの佐野義正取締役)可能性がある。
だが、その反動にも備える必要がある。「中国経済の回復が遅れている」(東レの沓澤徹専務執行役員)ことを懸念する声は多く、景気後退にあえぐ中国企業が一段の低価格品をアジアで放出し、相場下落を促すことも考えられる。
ある豪州の政治紙はトランプ大統領が「“ルールに基づく国際秩序”というボロボロの布の最後の糸を断ち切ろうとしている」と表現する。新たな世界秩序の出現に適応できるかどうか。日本の繊維業界の底力が試される。