技術の眼/YKK/帝人フロンティア/空調服/NTT DXパートナー/早大の研究グループ/NUS

2025年01月16日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/修理を容易にしたエレメント〉

 YKKは、ファスナーとそれを使った繊維製品の寿命の長期化を目指し、修理や交換を容易にしたファスナーの部品を「リペア対応シリーズ」として展開する。

 新しくシリーズに加えた「ビスロン用リペア対応エレメント」は、ビスロンファスナーの5号サイズを対象とする。ファスナー本体から外れてしまっても、専用工具を使って「リペア用」のダイキャスト製エレメント(務歯)を取り付けることができる。

 エレメントと共に専用工具も提案しており、顧客である各ブランドのリペアセンターや専業の修理業者などでも、ファスナーの修理を容易にできるようにした。

〈帝人フロンティア/接触冷感×汗処理で快適向上〉

 帝人フロンティアは、26春夏のアウトドア・スポーツ用途に向け、四つ山扁平(へんぺい)断面形状糸「ウェーブロン」の技術を進化させ、接触冷感と汗のべたつき防止機能を両立させた特殊構造体の素材「クールシェル カラット」を打ち出す。

 ウェーブロンの撥水(はっすい)性タイプを新たに開発。既存素材とうまく組み合わせることによって、相反する機能の両立を実現した。接触冷感は肌との接触面を大きくするといった必要性がある一方、汗のべたつき防止は凹凸構造にして肌の接触面積を少なくする必要があり、両立が難しかった。

 そこで幅広く展開している、肌側に撥水糸を配置した汗処理機能を持つ特殊構造体「トリプルドライカラット」と、フルダルの非捲縮(けんしゅく)原糸で接触冷感機能のあるウェーブロンに着目。肌側に新開発の撥水タイプと従来の吸水タイプを最適に配置するとともに、外側に吸水した汗を拡散する2層の編み地構造設計技術を駆使することで開発に成功した。

〈空調服/防爆型EFウエア〉

 電動ファン(EF)付きウエア開発の空調服(東京都板橋区)は25夏向けに、防爆区域に対応する「防爆型の空調服」の開発を進めている。爆発や火災の危険が高いガソリンスタンドや化学工場、石油やガスのプラントなど防爆検定品でなければ使用できない区域での作業時に使うことを想定する。

 仕様は研究開発段階のため変更の可能性はあるが、国内の防爆認証規格である「国際整合技術指針2020」の防爆構造規格JISC60079-0に定められた基準に適合する。防爆構造は本質安全防爆、危険箇所は第2類危険箇所、適応グループはⅡA、温度等級はT3の環境で着用できる。

 ファンとバッテリーが対になる仕様で軽さが特徴となる。最大電圧の7ボルトで稼働した場合は最大風量が45リットルで約8時間稼働する。価格は10万円以下に抑えたいとする。防爆型空調服のほかに、25春夏には最大電圧25ボルトの新型デバイスを発表し、攻勢を強める。

〈NTT DXパートナー/「架空商品モール」本格稼働〉

 NTT東日本グループのNTT DXパートナー(東京都新宿区)はこのほど、「架空商品モール」サイトを本格稼働した。生活者の“あったらいいな”を基に生成AI(人工知能)が新商品アイデア(架空商品)を生み出し、メーカーの新商品開発をサポートする。

 8月に始動した新商品プロデュース事業の一環。生成AIがメーカーの技術力と生活者のニーズを組み合わせて架空商品を提案する機能と、どの架空商品にどれだけの賛同が得られるかを可視化する機能を備えた。開発前からファン候補を集めることができる。

 先行検証として行った、電気や製菓などのメーカー5社と生活者約100人によるワークショップでは、半日間で245個のアイデアが生み出された。“生活者の声×生成AI活用”によるアイデアの目新しさ・幅広さも確認。参加したメトロ電気工業は、同社の強みである加熱技術を生かした新商品アイデアの知的財産権を取得し、商品開発を検討し始めたと言う。

〈早大の研究グループ/CFRP回収を高純度、効率的に〉

 早稲田大学理工学術院の所千晴教授らの研究グループはこのほど、電気パルス直接放電法を用いて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から炭素繊維を効率的かつ高純度に回収する新技術を開発した。加熱や薬剤を使わず、従来の破砕法や加熱法に比べ、長繊維で高強度の炭素繊維を回収できる。従来の電気パルス法をさらに改良し、エネルギー効率も10倍に向上させた。

 炭素繊維と樹脂の分離プロセスに電気パルス直接放電法を新たに開発。この方法では、高電圧パルスをCFRP内部に直接放電することで、ジュール熱と樹脂の気化による膨張力を利用し、効率的に繊維と樹脂を分離する。

 同方法で回収された炭素繊維は元の強度の81%を保持し、従来法に比べエネルギー効率が約10倍高いことが確認された。直接放電法で得られた繊維には付着樹脂が少なく、表面のクラックや劣化もほとんど見られず、再利用の可能性が飛躍的に向上した。

〈NUS/フレキシブルファイバー開発〉

 シンガポール国立大学(NUS)デザイン・エンジニアリング学部材料科学工学科の研究チームはこのほど、自己修復性や発光性、磁気特性を持つフレキシブルファイバーを開発した。「シャインファイバー」と呼ばれる同繊維は自由に曲げられ、可視光を放出。切断されても自動的に修復し、元の輝度のほぼ100%を取り戻すことができる。ワイヤレスで給電もでき、磁力を使って物理的に操作することもできる。

 フレキシブルファイバーは、ウエアラブルエレクトロニクス、スマートテキスタイルなど、さまざまな領域で既存の技術を補完する可能性があるため、急成長の分野となっている。しかし、物理的な壊れやすさ、複雑さ、エネルギー需要の増加なしに複数の機能を一つのデバイスに統合することが難しかった。

 シャインファイバーでは発光、自己修復、磁気作動を一つの拡張性のあるデバイスに統合することで、機能の制限を克服。自己修復機能と物理的操作性に欠ける市販の従来の発光ファイバーに比べて耐久性があり、効率的で、多用途なソリューションを提供できる。