特集 東海産地(3)/2025年展望/遠州織物工業協同組合/浜松広巾織物産元協同組合

2025年01月14日 (火曜日)

〈遠州織物工業協同組合 理事長 瀧本 博之 氏/販売会で遠州の認知度向上〉

――2024年を振り返ると。

 全体的には厳しい一年だったと言えるでしょう。円安による糸値の上昇で利益が圧迫されました。ただ、祭りやイベントの再開によって堅調だった会社も一部ありました。自販型と受託型の織布工場では前者は健闘しましたが、後者は苦戦しました。

――組合の事業として生地や製品の販売会を開いています。

 遠州産地を一般消費者に知ってもらうことが目的です。新型コロナウイルス禍前から始めており、知名度も上昇してきたと感じています。最初は出展が数社での開催でしたが、年を追うごとに規模も拡大していきました。

 静岡県内にあるイオンでの開催が中心ですが、昨年11月末には遠鉄百貨店で販売会を開催しました。クリエーターを含めて産地企業18社が参加し、会期中の売り上げが200万円を超えるなど盛況でした。今後もこうした販売会は継続していきます。

――課題を教えてください。

 遠州はもちろん国内産地のサプライチェーンが疲弊していく中で、他産地との結び付きをより強くしていくことが重要でしょう。遠州でも経通し(へとおし)業者の高齢化が進むなど準備工程が細りつつあります。仕事が薄くなっている中では遠州だけの注文では賄い切れませんからね。

〈浜松広巾織物産元協同組合 理事長 杉本 恵則 氏/温暖化踏まえ夏型へ〉

――2024年を振り返るとどんな年でしたか。

 特に厳しいと感じた一年でした。新型コロナウイルス禍が落ち着いたことで、商売も動くかと思われましたが、物価高の影響なのか、そこまで動きませんでした。暑い気候が続きましたので冬物向けは特に伸び悩みました。ただ、当組合は衣料向けで綿が中心ですので、暑い期間が長くなれば、今後の需要は増える可能性はあります。

――25年の商況の見通しは。

 商売の状況は先行きの不透明感が漂っており、どうなっていくかを予想するのは難しいのが正直なところです。物価高も継続するでしょうし、サステイナビリティーの流れでモノを作る絶対量も減少していますので、25年も厳しい状況が続くかもしれません。トランプ氏が米大統領に就任することによる影響も考えなければなりません。為替がさらに円安に進むのかなどを含めて注視しています。温暖化の傾向は強まっていますので、今まで以上に夏型に特化したモノ作りが必要でしょう。

――課題は。

 やはりモノ作りがしにくくなっている点です。高齢化と後継者不足の波が押し寄せています。分業体制のため、一つの工程がなくなるだけで大打撃です。他産地での生産を含めた、産地間連携がより重要になるでしょう。

〈トピックス/三河産地/秋にTGC演出のショー開催〉

 三河産地で東京ガールズコレクション(TGC)プロデュースのファッションショーが今秋開かれる。ショーでは三河の素材を使った衣装を披露し、若年層に向けて産地の魅力をアピールする。

 ショーは蒲郡市とTGC運営のW TOKYO(東京都渋谷区)が締結した「地方創生の推進に関する連携協定」の一環。

 TGCの高い発信力を用いて、三河ブランドのPRを進めることで地域経済の活性化につなげる。

 締結に合わせて産地企業の若手による「地場産業活性化プロジェクト」が発足。繊維関連の多様な業種から20~30代が集い、ショーで披露する衣装の制作に向けて打ち合わせを進めている。

 昨年12月上旬に蒲郡商工会議所であった打ち合わせでは、衣装のスタイリングやデザイン、使用する三河素材の検討を進めた。最終的には10スタイル前後の衣装を制作する計画だ。

 プロジェクトがきっかけで、これまで接点がなかった産地企業同士で協業が進むなど成果も見え始めた。産地活性化の起爆剤として注目が集まる。

〈トピックス/石破首相が双葉事業所を訪問〉

 石破茂首相と伊藤忠彦復興大臣らは昨年12月、撚糸・タオル製造販売の浅野撚糸(岐阜県安八町)が運営する双葉事業所・フタバスーパーゼロミル(福島県双葉町)を訪問した。

 石破首相らは双葉町の帰宅困難区域や中間貯蔵施設を視察し、双葉事業所も訪れた。内堀雅雄福島県知事や伊澤史朗双葉町長などが同席。およそ40分の視察時間内で浅野撚糸の浅野雅己社長が双葉事業所の施設内や事業所を開設したいきさつや復興への思いなどを説明した。

 事業所内のキーズカフェ福島双葉店でランチミーティングも開かれた。双葉町産ブロッコリーを使用したジェノベーゼをはじめ、福島県や双葉町産の食材を使った料理が並んだ。

 石破首相は事業所で働く若手従業員や店舗スタッフとも交流し、撮影にも応じた。双葉町にまつわる色を使ったマフラー型タオル「ダキシメテフタバ」も贈呈された。

 浅野社長は「光栄なこと。東日本大震災からの復興と双葉町の交流人口増加に貢献していく」と話した。