別冊ユニフォーム春夏25(5)/素材メーカー/“真の強さ”見せる時
2025年01月10日 (金曜日)
素材メーカーは2022年以降、原燃料高をはじめ、さまざまなコストアップを受け、値上げを進めてきた。25年に入っても、労務費の上昇や協力工場からの加工料金の改定要請などで、値上げは継続していくものとみられる。価格差が開く海外製生地との競合をどのように切り抜けていくか。生地の独自性、品質の安定性、納期の安心面などさまざまな側面から素材メーカーとして“真の強さ”を発揮していく時期に差し掛かる。
〈“高通気”で商機逃さない〉
ワークウエア市場では新型コロナウイルス禍明けの受注拡大の反動と秋冬物の販売不振を受け、24年前半まで在庫調整が続き、値上げと販売数量の減少に苦しんだ。しかし、今年は予想以上に暑い期間が長かったこともあり、暑熱対策ウエアをはじめとした夏物の動きが活発化。25春夏に向けて新商品の投入が増える中、後半から生地販売が回復してきた。
「夏が8カ月になっている」との声がワークウエアメーカーから聞かれる中、春夏向けの素材の受注が活発に。シキボウは、ユニフォーム地販売に占める差別化素材を5割強にまで高めている。中でも主力素材である校倉(あぜくら)造り構造織組織の高通気生地「アゼック」受注が年間を通じて拡大する傾向にある。
東レは防護服「リブモア」の販売を堅調に伸ばす。防護服は通気性のないタイプが一般的であるが、リブモアはバリア性に加えて通気性を確保しており、「昨年の猛暑で防護服をリブモアに急きょ変更した企業もあった」。
他にも透け防止・紫外線カット・クーリング機能などを併せ持つ「スプリンジー」や、セラミック粒子の含有量を可能な限り高め、遮熱性・紫外線遮蔽(しゃへい)、防透け性を実現した「ボディシェルEX」の提案を強化する。
一村産業はストレッチの「ラクストリーマ」に加え、高通気の「アミド」の販売が拡大。電気・電子技術分野の国際規格IEC(国際電気標準会議)に対応した高制電生地「エレジスト」も、アミドと組み合わせるなどで、精密機器の取り扱いが増える製造業のユニフォーム向けに販売が「相当量増えている」。
クラボウもIEC対応の「エレアース」の販売が増加。新素材として、高通気でストレッチ性のある「ジェットエアー」とエレアースを組み合わせた素材を打ち出した。ジェットエアーでは他にも難燃「ブレバノ」と組み合わせた素材も開発。特に「難燃で通気性のある生地は意外に開発されていない」として国内外へ販路を広げる。
ZERO―TEX(ゼロテックス、東京都目黒区)は、気候変動で豪雨災害が増えたことを受けて、全天候型耐久撥水のポリエステル綿混生地を訴求する。合繊特有の光沢感を抑えた質感で柔らかく、透湿性や防汚性、制電性、紫外線防止機能も備える。薄地の平織や厚地の綾織のほか、格子状に微細な通気口があり、撥水(はっすい)と通気の相反する機能を併せ持つ「ゼロテックスエア」も展開する。
〈進むストレッチの差別化〉
ワークウエア向けの生地にとって、もはや外せない要素となっているのがストレッチ。中でもニット素材の拡販に力を入れるのが東洋紡せんいで、スナップやピリングなどニットの弱点を克服し、試験データ的にも「数字の裏付けを持って提案できている」。特に高密度とストレッチ性を実現した編み地「スクラムテック」などの販売を伸ばす。
帝人フロンティアもユニフォーム向けにニット地の販売を強化。25春夏向けでは防透け性や高い紫外線遮蔽率を兼ね備えた「ウェーブロンUP」や、汗処理機能に優れた「トリプルドライカラット」などのニット素材を充実させる。
日清紡テキスタイルは、抗ピリング・高耐久の特殊綿混糸「エアテックス」使いの「エアリーウェーブ」の販売が前年比倍増のペースで「主力素材になりつつある」。
東レはワーキング以外も用途が広がるストレッチ生地「ライトフィックス」の進化版として、軽量性とかさ高性を向上させた「ライトフィックスD」を打ち出した。
最近ではストレッチだけでなく、サステイナビリティーの観点から高耐久という側面も注目されつつある。インビスタジャパンは、「丈夫で長持ちするパフォーマンス性の高さ」を強みに高強力ナイロン「コーデュラ」の販売を加速。「日本の紡績とも取り組みたい」として、既存素材の強度向上やこれまでと違う風合いの追求といった面から、素材開発での連携を模索している。
〈ユニチカの影響じわりと〉
ユニチカは昨年11月28日に祖業である繊維事業からの撤退を決めた。一部のメーカーでは、ユニチカトレーディングから供給を受けた生地を使ったカタログ定番商品を展開。「繊維事業がどういう形になるか分からないだけに、定番商品をこのまま廃番にしてしまうか迷っている」(ワークウエアメーカー首脳)といった声が聞かれる。
繊維事業の引き受け先が見つからない場合、「これまでの供給がどうなるのか」と不安視する声が多い。一方でかつて一世を風靡(ふうび)した複重層糸「パルパー」を打ち出すなど、素材力のある同社だけに、事業撤退を残念がる声も少なくない。
〈注目度高まる「A+A」〉
今年11月4~7日にドイツ・デュッセルドルフで開催を予定する世界最大規模の労働安全・衛生分野の見本市「A+A2025 国際労働安全衛生展」(メッセ・デュッセルドルフ主催)は、23年の前回展を上回る2200超の出展者を集め、過去最大の規模になりそうだ。
ユニフォームやPPE(個人保護具)の最新のトレンドを見ることができるほか、サステとAI(人工知能)といった展示では、前回展よりも“進化”を見られる可能性がある。
また、7月16~19日にインテックス大阪で「はたらく現場の環境展(JIOSH+W)」も開かれる。いわゆる日本版A+Aで、日本だけでなくアジアや欧州から100~150社の出展を募る。出展申し込みは2月20日まで。人手不足や雇用の確保を背景に職場での労働安全が重視されつつある中で、両展とも注目度が高まっている。