特集 今治タオル産地(5)/素材・機械編/開発力と生産力支える
2025年01月09日 (木曜日)
国内産地の中では依然として多くのタオル関連企業が集積する今治産地は繊維機械メーカー、素材メーカーの重要な販売地域と位置付けられる。さまざまな観点からタオルの高付加価値化を支える機器や素材の開発と提案が続けられている。
〈独自性高い差別化糸を拡大/エコやサステ切り口に/シキボウ〉
シキボウのタオル用途への原糸販売は、吸水速乾の機能を持つ2層構造糸「クイックドライコットン」といった一部の機能糸の販売が増えている。エコやサステイナビリティーといった切り口に加え、他社にない独自性の高い糸によってタオル市場を深耕する。
タオル用途へはソフトタッチで毛羽が少なく、光沢のある甘撚りの精紡交撚糸「デュアルロマン」が開発当初こそ差別化糸として広がり、今では定番糸としての位置付けとなっている。そこで同糸に次ぐ新たな差別化糸を安定してタオル用途へ供給していくための差別化糸の訴求を強めている。
サステへの意識の高まりから、グループの新内外綿と連携しパイナップルや葦(ヨシ)、竹、ヘンプといった環境負荷の少ない原材料を使った糸の提案を強化。染色しなくてもナチュラルな色味で独特な風合いを出せ、タオル産地からの「関心が高まっている」。
クイックドライコットンも芯にリサイクルポリエステルを使うなど、環境に配慮したものの採用が増えてきた。
糸表面の光沢が増し、発色性にも優れる連続シルケット加工糸「フィスコ」は、昨年に米国のクラウドファンディングで同糸使いのタオルを販売した実績もあり販促を強化。売れ筋で特殊紡績法による絶妙な毛羽コントロール糸「ふわポップ」もタオル用途へ提案を図る。
海外へもタオル工場の多いベトナムでの販促を活発化。昨年2月に開かれた「ベトナム国際アパレルファブリックス&繊維関連技術専門見本市」(VIATT展)へ出展した。「どちらかと言えば生地よりも糸に対する関心の方が高かった」。そのため、今年2月26~28日開催のVIATT展では差別化糸の魅力を発信する。
〈タオル用を重点分野に/ウルティマックス提案/ピカノールとエディー〉
ピカノール(ベルギー)の日本総代理店、エディー(大阪府東大阪市)は2025年、レピア織機の販売でタオルと産業資材を重点分野に位置付け拡販に取り組む。今治向けでは、タオル用レピア織機の最新機種「ウルティマックス テリー」を中心に提案していく。
ウルティマックス テリーは、23年の「ITMAミラノ」で発表された最新機種。ピカノールの特徴であるデジタル技術の活用による扱いやすさ、幅広い素材への対応と多様な緯入れ、安定した高速稼働に加え、精密なパイル形成などを実現している。
まずは欧州で導入が進んだが、足元では韓国などアジアでの引き合いも増えている。日本では今治を中心に提案を進めており、ピカノールのタオル織機の技術者とともに産地を回る機会も増やしてきた。興味を示すタオルメーカーも多く、特に高品質なパイル形成などの特徴が好評を得る。
独自のパイル・モーター設定で生地を直接駆動すると同時にバックレストが動き、高速稼働でも正確にパイルを形成する。軽量なタオルから重厚なバスマットまで幅広く対応し、複雑なデザインでも精密なパイル形成を実現する。安定した高速稼働も特徴で、前機種比10~20%の高速化を実現している。
〈電子ジャカード回復傾向/省エネ性など好評/ストーブリ〉
ストーブリの今治向けの販売は、電子ジャカード機を中心に回復に向かっている。電子ジャカード機の2024年販売台数は37台前後となった見通しで、25年は47台に伸ばす計画だ。
今治向けの24年販売は回復した。特に秋以降は市況の底打ち感も出てきたことから引き合いが増加。産地でエアジェット織機(AJL)の更新が進みだした中で、織機に合わせて電子ジャカード機を購入する動きも出て、販売台数を伸ばしている。
電子ジャカード機は全口数で最新機種「プロ」シリーズの提案を進めている。新システムの採用や電装ユニットが一新されており、省エネ性が大きく向上した。2688口のSXプロでは従来比25~30%の消費電力削減を実現。AJLの最新機も省エネ技術が進化しているため、合わせて更新することで、「24年の電気料金値上がり分はカバーできる」と判断するユーザーも多いと言う。昨年末にアジアでの1号機が今治に導入されて以降、着実に販売を伸ばしている。
24年はドビー・カム機も堅調に推移するほか、製織準備機もドローイング機を中心に好調。25年は前年比10%増を狙う計画で、ドビー・カム機や電子ジャカード機など各分野で拡大を狙う。
〈最新鋭機の導入始まる/オープンハウス開催も検討/イテマ〉
イテマの日本法人であるイテマウィービングジャパンは、タオル産地に向けて最新鋭のタオル用レピア織機「R9500EVOテリー」の提案を本格化させた。今治産地でも2024年は導入実績が上がり始めた。
R9500EVOテリーは、前身機である「R9500―2テリー」の性能をさらに進化させたもので、特にパイル形成能力や省エネルギー性が向上している。コンソールパネルなど操作系も最新世代に更新され、Wi―FiやBluetoothなど通信系機能が拡充された。イテマは独自の総合管理システム「アイマネージャー」を用意する。産地での評価も高まっており、今治産地では24年に2台が導入された。
一方、R9500―2テリーも24年は今治産地で2台が新規導入された。こちらもパイルの送り出し機構が一新されるなど改良が進められたことで依然として高い評価を得ている。
現在、タオル産地の市況はやや勢いを欠く状態が続くが、最新鋭機の導入実績ができつつあることから、さらに幅広く実機を需要家に見てもらうためのオープンハウスの実施も検討する。