特別インタビュー/東レ 大矢 光雄 社長(後)/繊維の事業利益率8%めざす
2025年01月07日 (火曜日)
――2025年度(26年3月期)は東レにとって現中期経営課題の最終年度です。進捗(しんちょく)は。
22年度までの前中経で設備投資を終えていますので、現中経では設備の稼働率を上げてしっかりと売ることに重きを置いていました。そのほか、価値の価格への反映、イノベーションの創出、サプライチェーンの延伸などをセットにしていましたが、想定以上に回復が緩やかで、販売量がついてきませんでした。
このことから利益率の向上に比重を移します。23年7月ぐらいからシフトしているのですが、それが構造改革につながっています。固定費削減はもとより、戦略的プライシングによって商品の価格を上げることに注力します。24年度上半期(4~9月)は成果が発現し、過去最高の事業利益を達成しました。
――どのように中経を仕上げますか。
現在は“巡航速度”になっていますが、経済などは想定していた回復度合いには届いていません。引き続き利益率を向上することに注力します。成長領域であるサステナビリティイノベーション(SI)事業とデジタルイノベーション(DI)事業の拡大。そして構造改革による利益率向上。この二つに同じ熱量で取り組みます。
――繊維事業は今期の売り上げ収益が1兆円を超える見通しなど順調です。
大きくは二つあります。成長戦略の部分で言うと、衣料繊維は、複合紡糸技術を核にした商品開発とサプライチェーンの延伸で確実に拡大しています。産業用途は、エアバッグのビジネスが想定以上に順調に推移し、人工皮革や不織布など一部計画に届いていない分野をカバーしました。
もう一つは低成長・低収益事業のリエンジニアリングや固定費削減による効率化です。この二つに同時に取り組んだことがうまくいきました。構造改善は、ポリエステル短繊維が24年度上半期に前倒しで黒字化し、遅れているポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)も来年度上半期の黒字化を目指します。
――中長期視点での繊維事業の方針は。
ユニクロとの戦略的パートナーシップに取り組む中で、アジア生産の高度化と拡大を推進していきます。グループ会社を通じてベトナムで合繊ニットを拡充し、タイでも長繊維事業の高度化を図ります。インドについても生地と縫製でサプライチェーンの整備を進めます。
事業規模については、以前は売り上げ収益1兆円にこだわっていました。メーカーですので売り上げ収益は重要ですが、現在は利益率を上げることを重視しています。今期の繊維連結業績見通しは売り上げ収益1兆60億円、事業利益640億円で、利益率は6%台ですが、早急に8%台にしたいと思っています。