景況予測/どうなる今年の繊維産業/「変化しない」が過半数

2025年01月07日 (火曜日)

 本紙は昨年11月に、繊維関連企業トップを対象にした恒例の「新春アンケート」を実施し、124社から回答を得た。設問は「繊維産業の景況2025年にどうなるか」「人手不足の対応策」――など。ドナルド・トランプ氏の米国大統領への返り咲きといった国際情勢の変化が、繊維業界へどのような影響を及ぼしていくか。アンケートを基に25年を占う。(於保佑輔)

 設問の一つ目は「25年の景況はどうなるか」。最も多かった回答は59%を占めた「変化しない」で、次いで「悪化する」(25%)、「好転する」(16%)という結果だった。24年の予測も「変化しない」が42%と最も多かったが、今回は半数を超えた。一方で「悪化する」が「好転する」を上回り、先行きの不透明感が一段と強まった。

 「変化しない」との理由として「都心部の富裕層やインバウンド需要を追い風に市況は好転しているが、物価上昇による消費マインドの冷え込みは継続している」(伊藤忠商事の武内秀人執行役員繊維カンパニープレジデント)として、景気拡大に一歩踏み出せない状況を指摘する。

 「生活防衛意識の高まりによる消費者の節約志向が続く」(オンワードホールディングスの保元道宣社長)中で、「繊維製品に対する購買マインドは力強さに欠ける状況」(三共生興の宮澤哲次取締役)にあるとの見方。実質賃金はマイナスから脱しつつあるが、完全にはプラスになっておらず、「繊維製品の買い控え・中心価格帯(手頃な価格帯へ)のシフトなどにより、繊維産業全体に伸びが期待できるとは言い切れない」(丸紅の渡辺一道ライフスタイル本部長)。

 「悪化する」との理由としては気候不順、ライフスタイルの変化、少子化などによって「衣料品に対する考えや景況感は良くなるとは思えない」(宇仁繊維の宇仁麻美子社長)との声が。トランプ政権の保護主義的な政策が日本の輸出産業の減退を招き、景気悪化で「不要不急アイテムでない繊維商品への支出は減少する」(ナイガイの今泉賢治社長)可能性も示唆する。

 「人件費・原材料・資材などコストアップの要因が大きく、すぐに価格転嫁が難しい」(菅公学生服の黒田健介専務)との声も聞かれ、値上げが進んでいない分野にとっては、低調な消費マインドとの板挟みで苦しむ可能性がある。

 「好転する」との回答では4月に開幕する大阪・関西万博を受け、インバウンド需要の拡大に期待。「『高機能素材』や『サステイナビリティーに貢献する素材』の需要は一段と高まっている」(大和紡績の有地邦彦社長)との見方もある。

 「買い控えの反動から実需品中心に消費行動が活発になる」(旭化成の工藤幸四郎社長)とともに、「手取り所得向上策の実現による個人消費の回復を期待」(東レの沓澤徹専務執行役員繊維事業本部長)する声も。「賃上げなどにより消費が活発になり、繊維産業も好影響がある」(クロスプラスの山本大寛社長)と、何かと暗い話題が多かった24年に比べ明るい展望を持つ企業も少なくない。