不織布 構造改革の1年
2024年12月27日 (金曜日)
2024年、不織布業界は構造改革の嵐が吹き荒れた。その口火を切ったのはクラレ。その後、東洋紡、そしてユニチカと繊維素材メーカー大手の規模縮小、撤退、売却などが相次いだ。
クラレ生産能力9割減 東洋紡呉羽テック売却
クラレは7月、不織布製造子会社、クラレクラフレックス(大阪市北区)の乾式不織布から24年末に撤退し、メルトブロー不織布(MB)生産能力は既に縮小したと発表した。同社は1972年から乾式不織布、89年からMBを製造・販売してきた。現在のクラレクラフレックスとしての運営は2000年から。アジア企業の増強による供給過剰と国内需要減から事業環境が厳しさを増し、能力縮小による再構築が不可欠と判断した。不織布の総生産能力は9割減となる。
8月には東洋紡傘下の東洋紡エムシーが短繊維不織布製造子会社である呉羽テック(滋賀県栗東市)をニッケに売却した。同社はポートフォリオ戦略で不織布を収益改善・事業モデル改革の事業と位置付けていた。一方、ニッケは不織布事業の収益強化を掲げ積極投資を行っており、利害が一致したとも言える。
呉羽テックは1960年設立でエアフィルター・内装材など自動車資材や貼付基布が主力。台湾、タイ(ともに台湾の不織布製造大手の新麗企業との合弁)、米国(生産は撤退)にも拠点を持つ。
ユニチカ 不織布も売却か撤退に SBと綿SL国内最大手
2社に続き11月にはユニチカが、官民ファンドの地域経済活性化機構(REVIC)の再生支援が決定し、抜本的な構造改革を発表した。報道では「祖業の繊維から撤退」ばかりが取り上げられるが、採算改善が困難な撤退事業には衣料繊維、中空糸など一部を除く産業繊維とともに不織布も含まれていた。25年8月までに事業譲渡先を探し、譲渡先が見つからなければ撤退することになる。
同社はポリエステルスパンボンド不織布(SB)、綿100%スパンレース不織布(SL)の国内最大手で、23年度売上高は前期比5・8%減の113億円。SBは岡崎事業所(愛知県岡崎市)に年産2万㌧、タイ子会社のタイ・ユニチカ・スパンボンド(TUSCO)に1万㌧の計3万㌧の能力を持ち、芯ポリエステル・鞘ポリエチレンから複合SB「エルベス」などの差別化品も数多い。SLは垂井工場(岐阜県垂井町)に7千㌧の能力を持ち、綿100%製が主力だ。
不織布事業は衣料繊維や産業繊維のように大きな構造改革をこれまで実施していなかった。SLに至っては24年5月から新設備を稼働させている。それだけに不織布の撤退は衣料繊維や産業繊維とは少し趣は異なる。
ただ、同社によれば、この10年収益は右肩下がりで、21年度には赤字転落。23年度は赤字幅が広がり減損処理も行った。収益低下の主因は原燃料価格上昇に伴う価格転嫁の遅れもあるのだろう。不織布の売上高を総生産能力(SL増設前の3万5000㌧)で割ると、1㌔当たり323円。生産能力が1万㌧少ないと想定しても452円。高価格の綿100%SLを含めるにしては平均価格が低い。
また、SBを生産する岡崎事業所はポリエステル長・短繊維、チップも製造するため「生産量の低下で高コスト体制が大きな課題になっており、一部の赤字事業を止めても残る黒字事業の固定費が高くなり、黒字事業の収益を落とす可能性があり、全面撤退の判断となったとしている。
クラレ、東洋紡、ユニチカ以外にも、三井化学と旭化成のSB合弁会社が23年10月に設立されており、東レもSBの生産規模最適化を進める。繊維大手の不織布は大きな転換期を迎えている。