繊維ニュース

東レ 複合紡糸技術で開発加速

2024年12月26日 (木曜日)

 東レは、複合紡糸技術「ナノデザイン」による素材開発を強化・加速している。同社繊維事業は2025年3月期に増収増益を予想するなど順調に推移しているが、そのけん引役であるナノデザインを核にした開発を深掘りすることで継続成長を図る。さまざまな角度で新商品を生み出し、幅広い用途に投入する。

 ナノデザインは、繊維の断面を任意かつ高精度に制御する複合紡糸技術。この技術を駆使することで従来では表現が難しかった多様な特徴が付与できる。婦人・紳士衣料事業部が販売する天然シルクのような光沢感を持つ「キナリ」、和紙のような風合いを持つ「カミフ」などもナノデザインで誕生した商品だ。

 新商品では、植物由来原料を30%使用した「シルック美來」を開発した。環境に配慮すると同時に、ナノデザイン技術の深化によって実現した表面凹凸の異なる異形断面繊維が混在する糸束構造によって、シルクタッチや自然な光沢といった高質感、着物の裾が擦れ合う際の「絹鳴り」を表現する。

 シルック美來は、「シルック」発売60周年を記念して開発した。絹の美しさと絹にはない機能を求めてきたシルックの技術革新の集大成としており、ナノデザインと植物由来原料の融合した初の商品でもある。和装のほか、洋装のアウターからボトムまで幅広い提案を進める。

 スポーツ・衣料資材事業部は、ストレッチ性に優れる「プライムフレックス」からナノデザインを駆使した新素材を打ち出した。従来がナイロン6とナイロン610のバイメタルだったのに対し、新素材はナイロン6同士を融合。これによって伸縮性を維持しながら易リサイクルを実現した。

 吸湿ポリエステルの開発も進めている。吸湿性をコットンに近い数値にまで高めることに成功しており、これによって制電性も発揮する。ポリエステル特有の速乾性も維持する。

 ナノデザインによって多様な素材を創出することが可能だ。衣料分野では、スポーツ・衣料資材事業部や婦人・紳士衣料事業部の展開が中心だが、機能製品事業部も「価格面での壁はある」としつつ、カミフやキナリなどの訴求を行う。