特集 北陸産地(5)/生産性をさらに向上/テックワン/大喜/東洋染工

2024年12月24日 (火曜日)

〈テックワン/10月期は過去最高に/製品事業など拡大〉

 テックワンの2024年10月期は、売上高、利益とも過去最高を更新した。主力のアウトドア用途がけん引した形で、稼働は年間を通じて堅調だった。

 かつての過去最高売り上げ時に比べて加工数量は20~30%落ちているが、展開商品の高付加価値化などで売上高は過去最高を更新した。プリントはナイロンを除いて伸び悩んだが、強みとする透湿防水フィルムを生かしたラミネートやコーティングが前期に引き続いて好調に推移した。

 今期(25年10月期)も過去最高の売り上げを計画し、生産効率の向上や製品事業の拡大などに注力する。フル稼働が続く中、今期は効率やスピードを高め、従業員のモチベーション向上にも取り組みながら加工数量を5~10%引き上げる計画。プリントもナイロンを軸に拡大を図る。

 製品事業は「オルテック」「メディマット」とも拡大を狙う。加工技術とファッションを組み合わせたオルテックは、テキスタイルデザイナー、氷室友里さんを起用して傘からスタートしたが、デザイナーの知名度の向上とともに展開店舗が広がることで、販売が伸びている。今期は得意とする透湿防水生地を生かして、傘以外にもアイテムを広げていき、さらなる拡大を狙う。

 介護・医療用のメディマットも拡大を図る。前期は褥瘡(じょくそう)予防への効果が学会でも評価され、展示会などでも好評を得た。今期は本格拡大に向けて開発を進めていく。

〈大喜/防草シートが水田に採用/ジャカードでメッセージ〉

 大喜は発光ジャカード織物「ライトウィーヴ」や防草シートなど新たな織物開発に注力している。ライトウィーヴはさまざまな用途で開発が進み、防草シートは農業分野での販売が始まった。

 遮光で雑草の育成を抑制する防草シートは、ジャカードでデザイン性を高めた商品を展開するが、このほど織柄でメッセージを付けた商品が福井県坂井市内の水田で採用された。

 水田を後世に残していくために取り組む「小黒農地水環境を守る会」との協業で制作したもので、幅1・7×50㍍の防草シートに「未来へ、みんなでつなごう 地域の農地」のメッセージを配した。

 原着糸を使ってジャカード織機で文字を織り上げており、一つの文字の大きさは1㍍ほどになる。水田は、斜めの姿勢で雑草を刈らなければならないあぜ道の手入れが大変な作業で、そこに防草シートが採用された。啓蒙(けいもう)的なメッセージを入れたいという要望を受け、ジャカードで文字を織り上げた防草シートを制作した。風雨にさらされる商品なのでプリントは難しいが、原着糸の織柄なので10年耐えるという。

 坂井市が農業と給食米を広めるために取り組む「しながわマイ田んぼ(シナ田ん)」でもメッセージを入れた防草シートが採用された。東京都品川区と坂井市は連携協定を結んでおり、品川区の区立小学校の給食には坂井市産米が採用されている。坂井市は給食米が作られる様子を品川区の小学生などに発信しているが、その水田に品川区のカラーで文字を入れた防草シートが採用された。

〈東洋染工/ロットごとにCO2算出/自動化の取り組み進む〉

 東洋染工の今期(2025年2月期)は、前年比で若干の増収となる見通しだ。上半期の受注は7月まで厳しかったが、下半期に巻き返した。昨年まで低迷していたアウトドア用途が春ごろから回復したほか、足元は衣料資材や自動車なども堅調に推移する。

 機能加工も堅調で、インナーなどに広がって快適加工「アクアホール」が伸び、防汚加工「ヒシード」なども増えている。

 受注が堅調な中、生産性向上で加工数量を増やしていることが増収につながっている。今期は台車管理システムのバージョンアップや自動検査機の拡充などが成果を上げている。

 自動検査は加工後の検査に加え、今夏から始めた工程内検査も生産性向上につながっており、年内に2台目の設置を予定している。

 自社設計のシステムを活用して自動化を進めるとともに、染色や仕上げなど複数の業務をこなす「多業務士」の育成にも取り組み、残業の平準化や有休取得率の向上など働きやすい職場作りにもつなげていく。

 引き続きサステイナビリティーへの取り組みも重視する。自動検査システムを応用し、CO2排出量を見える化して脱炭素につなげる取り組みを「エコフレスタンダード」として来期(26年2月期)から本格的に始める。流れる加工品番ごとに水の使用量やエネルギー消費量を算出できるシステムを確立し、データを基にCO2排出量削減の取り組みを進めていく。

〈北陸ヤーンフェア/過去最大規模で開催〉

 11月13~14日に石川県産業展示館(金沢市)で開かれた糸の総合展「北陸ヤーンフェア2024」は、3507人と過去最多の来場者を集め、盛況のうちに幕を閉じた。出展者は前年比14社増の78社・団体で小間数を含めて最大規模だった。今回で7回目を迎えたが、新型コロナウイルス禍の影響があった時期を除き、年々拡大を続けている。

 今回展のテーマは、「サステナブルな繊維の未来~新たな絆へ~」で、引き続きサステをベースにしながら、機能性や感性などプラスαを加えた提案が進んだ。リサイクル糸では、既に商品幅が広がっているポリエステルに加え、ナイロン糸も充実した。東レが「&+」(アンドプラス)でナイロンの展開も始め、蝶理の「ブルーニー」や東洋紡せんいの「ループロン」など糸の選択肢が広がった。

 今回展は海外からの出展を受け入れたのも特徴の一つで、台湾から3社が出展した。石川県繊維協会、福井県繊維協会、紡拓会が進める交流の一環で実現したもので、台湾のテキスタイル展「TITAS」にも日本から出展した。石川県繊維協会の遠藤幸四郎会長は、今回展の開会のあいさつの中で「北陸ヤーンフェアのグローバル化に向けて第一歩を踏み出した」と話しており、今後の展示会の内容充実に向けてさらにグローバル化が進む可能性を示した。

 繊維機械の出展が引き続き増えたが、ここでは自動化の提案が見どころの一つだった。伊藤忠マシンテクノスが自動協働ロボットを実演展示したほか、自動検査機や残糸除去装置などさまざまな提案が見られた。自動化、省人化は人材不足に悩む産地にとって特に注目されるテーマになっており、デジタル化とともに今後さらに提案が進むとみられる。

 来年の北陸ヤーンフェアは福井開催で、正式日程はまだ決まっていないが11月中旬ごろになるもよう。さらなる規模の拡大と内容の充実が期待される。