特集 北陸産地(3)/開発をさらに強化/一村産業/広撚/前多/ジャテック

2024年12月24日 (火曜日)

〈一村産業/産地の技術生かし輸出拡大/高付加価値なモノ作りで〉

 一村産業の繊維事業の4~11月は、売上収益、事業利益とも前年同期を上回るペースで推移している。特にけん引するのが、北陸産地の技術力や高度な生産管理能力を生かし「ワンランク品質を上げる」高付加価値素材の輸出だ。売上高に占める輸出比率は前期の40%から、今期は45%に高まっており、早期に「半分にまで持っていきたい」としている。

 中東向け輸出では、これまでの定番品を糸から見直し、触り心地や風合いなど「もう一段ブラッシュアップした」生地開発を強化。出張の頻度も上げて、第三国品の動向や現地のトレンドといった情報収集にも注力してきた。

 欧州のメゾンブランド向けへもユニフォーム用途で売れ筋のストレッチの「ラクストリーマ」、高通気の「アミド」をベースにした生地輸出が増加。難度の高いPFAS(有機フッ素化合物)フリーといった環境負荷低減への対応などで「ここ1、2年でかなりの評価をもらっている」と言う。

 来期に向け、各種機能をカスタマイズで付与できるポリエステル紡績糸使いの綿調合繊生地「クワトロセブン」の北米輸出も計画している。

 能登半島地震で被災した子会社の創和テキスタイルが6月に完全復旧しており、国内外とも生地の発注量は前期に比べ増える見通し。今後は北陸産地のコアな技術力を生かし、新事業専任室が横串を刺しながら事業間、産地間での連携による新ビジネスの創出にも取り組む。

〈広撚/開発強化で商品入れ替え/国内基軸に海外生産も〉

 広撚の上半期(2024年6~11月)は、前年比微減収で推移した。トリアセテート、ジアセテート、ポリエステルの主力3素材とも大きな落ち込みがなかったが、好調だった輸出に一服感が出てきたため。

 小ロット化が進んでいる面があるが、国内向けは主要3素材とも安定して推移する。薄地化が進む傾向があり、透け感がある素材などが堅調に推移する。

 海外でも軽量素材へのニーズが高まっており、今後は中肉厚地に加えて薄地の品ぞろえ拡充にも取り組む。

 下半期(24年12月~25年5月)は、増収増益を計画する。開発を強化して利益率を高めるとともに、来期(26年5月期)に向けた基盤固めも重視する。引き続き商品開発に注力しながら商品を入れ替えていき、動きが鈍い品番は削減しながら在庫量の適正化と商品回転率の向上につなげる考え。

 今後も引き続き国内生産を基軸とする方針は変えないが、選択肢を増やすためポリエステルを中心に海外生産を拡充していく。納期対応の面からも取り組んできた海外での染色加工は、インドネシアを中心に進めてきたが、今後は新たな候補地として中国やタイ、ベトナムなどさまざまな地域を検討していく。産元商社としての特徴を持たせた海外生産を拡充することで顧客の選択肢を広げるとともに、海外縫製地への納入など海外↓海外のビジネスの強化につなげる。

 織布工場の生産体制整備にも注力する。広撚繊維工業(福井県坂井市)では来年に、生産性向上や省エネ、修繕費の削減などを狙いにエアジェット織機4台の更新を計画しており、津田駒工業製で検討を進めている。

〈前多/上半期は微減収に/海外にも引き続き注力〉

 前多の上半期(2024年6~11月)は売り上げ、利益とも前年比微減となったもようだ。新型コロナウイルス禍後は前期(24年5月期)まで順調に売り上げを伸ばしてきたが、夏以降の各用途での市況悪化が影響した。下半期は事業環境の変化に対応しながら営業活動を強化し、通期では売上高110億円を目指す。

 前期は前の期に比べ10%の増収で、スポーツ、インテリア、ファッションなど全ての分野が拡大していた。自動車なども堅調で、売上高は105億円になった。

 24年上半期は暖冬や流通在庫の増大など各用途の市況が悪化した。スポーツやファッションは欧米の市況悪化が影響し、インテリアも伸び悩んだ。好調に推移していた中東民族衣装用(ブラック)も減速するなどさまざまな用途の市況が弱含み、上半期の売り上げは前年同期比微減となった。

 25年の市場環境については慎重な見方で、大きな回復は期待しにくいとみるが、各用途で堅実な営業活動を進めていくことで、当初目標である売上高110億円の達成を目指す。

 海外の拡販にも引き続き取り組む。近年はミラノウニカやインターテキスタイル上海など海外展への出展も継続しており、25年も引き続き海外の拡大に向けて取り組む。

〈ジャテック/グループ連携強化/用途の拡大に注力〉

 ジャテックは、引き続きグループ連携を強化し、さまざまな用途で生地開発を加速する。糸の強みをテキスタイルにつなげて用途を広げる考えで、主力のインテリアやユニフォームのほか、資材などの分野にも注力する。

 グループの生産拠点として、ジャテックのサイジング工場、製織のジェイ・テキスタイル(金沢市)、糸加工と経編み整経のケーエヌティー(石川県中能登町)、丸編みと機能加工のJCレース(福井県坂井市)、製織のコマテックス(石川県能美市)、経編ビームサプライのJKファブリック(同)を持つ。足元では市場環境が弱含む分野もある中、各グループ会社で開発・受注体制を強化し、用途も広げていく。

 ジェイ・テキスタイルは、これまで進めてきたインテリア以外の用途拡大が寄与し、稼働は安定して推移する。産業資材や衣料などさまざまな用途を強化している。今後に向けては、能登地区での次世代を担う人材確保が鍵とみて、今年は井戸水クーラーの導入など職場環境の改善に向けた取り組みを進めている。

 ケーエヌティーは、資材向けの整経が堅調だが、エアー混繊の受注が弱含んでいる。今後は昨年に導入したAIKIリオテック製の新台を活用し、複合糸のバリエーションを生かした提案に力を入れていく。

 JCレースは、丸編みが資材を中心に堅調に推移する。加工はインテリア用途の機能加工を中心とするが、今後は資材分野の拡大にも取り組む。

 コマテックスは、ジャカード織物の受注が堅調に推移する。今夏には宇仁繊維が同社内に電子ジャカード織機の新台を導入しており、さらに取り組みを深めていく。

 JKファブリックは、カーテンレースを中心に北陸から両毛地区まで展開する。インテリア用の特殊糸が柱でこれまで堅調だったが、近年は徐々に減少傾向にある。今後は衣料や資材分野への展開やトリコット向けの拡大に注力する。

 生分解性繊維「CiCLO」の拡販にも注力する。展示会などでの訴求を継続してきたことから、さまざまな分野で引き合いが増えている。今後もジャテックのサステイナブル素材の代表格として提案を進めていく。