特集 産業資材用繊維機械/成長領域として注目高まる

2024年12月23日 (月曜日)

 先進国の繊維産業にとって産業資材分野の重要性はますます高まっている。この分野では高機能繊維、スーパー繊維を含めて特殊な糸への対応が必要なケースも多く、生地組織も衣料とは異なるニーズがある。繊維機械メーカーも資材分野での要望に応える機種の開発・提案を強化している。有力メーカー・商社の最新提案を紹介する。

〈イテマ/「R9500EVO」中心に/日本の導入実績増える〉

 イテマ(イタリア)の日本法人であるイテマウィービングジャパン(大阪府茨木市)は、最新鋭レピア織機「R9500EVO」を産業資材向け製織でも積極的に提案する。既に日本でも導入実績が上がり始めた。

 R9500EVOは「R9500」シリーズの第三世代機。第二世代機である「R9500―2」をさらに進化させ、操作性や省エネ性が向上している。また、デジタル技術活用のためのソフト開発も進めた。2024年は産業資材分野の市況全体としては勢いを欠く中で、R9500EVOは導入実績を上げるなど評価が高まっている。

 現在はR9500―2とR9500EVOを併売しているが、製造ラインの整備や部品在庫の減少に合わせてR9500EVOに集約する予定。このため産業資材を含めた幅広い製織分野への提案はR9500EVOが中心となる。

 レピアでの製織時に発生する捨て耳の左側をなくすことができる「iSAVER」(アイセーバー)も搭載できる。炭素繊維やアラミド繊維など高性能繊維を使った製織では、糸が極めて高価なため捨て耳の削減はコストダウンに直結する。こうした特徴を打ち出すことで販売台数の積み上げを狙う。

 また、同社は「イテマテック」ブランドでレピア織機「ユニラップ」と「ヘラクレス」もラインアップする。ユニラップは独自の片レピアによる緯糸挿入によって扁平(へんぺい)糸をよれることなく製織できるなど特殊糸の製織に強みを発揮する。ヘラクレスは高張力織物の製織が強み。これら機種も引き続き産業資材分野への提案に取り組む。

〈伊藤忠マシンテクノス/産資分野でも超節水染色/レピア織機は底堅い需要〉

 伊藤忠マシンテクノスは機械商社として先進的な海外の繊維機械を積極的に日本に提案している。アルケミー・テクノロジー(英国)の超節水型噴霧式染色機「エンデバー」もその一つ。細幅織物など資材用途でも可能性が広がる。

 エンデバーは、特殊ノズルによって染液を噴霧して生地の裏側まで染色する。洗いなど前後工程以外は水を使わず、従来の無地染めに比べて水とエネルギーの使用量を大幅に削減する。また、操作性に優れ、作業環境も清潔なため、作業現場で増えている女性オペレーターでも扱いやすい。

 ノズルの開発が進んでおり、細幅織物への染色や機能加工にも対応できるようになった。細幅織物の場合、複数の品種や加工を同時に行うこともできるため、多品種・小ロットの加工が可能。このため小ロットの特殊品加工も少なくない資材分野でも活用が期待される。

 一方、織機ではドルニエのレピア織機「P2」も底堅い需要が続いている。ガイドレス棒レピアによる積極式緯糸挿入は、カーボン繊維やガラス繊維など特殊糸の製織で圧倒的な能力があり、資材分野では他の織機では代替できない用途が多い。こうした用途で計画的な設備投資が続いている。

 そのほかにもユーザーの細かなニーズに応える機械も多数提案する。例えばメイコー商事の電気集塵(じん)式油煙除去装置は工場や工場周辺の環境改善に貢献するソリューションとして評価が高まる。

〈エディー/伊フィーダーが拡大/織機は来年に回復〉

 ピカノール(ベルギー)の日本総代理店を務めるエディー(大阪府東大阪市)は、レピア織機「オプティマックス―i」を軸に、産業資材用の提案に力を入れている。今年は為替の影響で様子見となる商談も多いが、来年には回復する見通し。

 「オプティマックス―i」はさまざまな糸種に対応し、衣料、産業資材、工業資材、農業資材など幅広い用途で使われている。緯糸挿入はガイド式、「フリーフライト」(ガイドレス式)、積極受け渡し機と幅広くそろえ、多様な緯入れや振動の少ない安定稼働、省エネ性、デジタル技術による扱いやすさなどの特徴も備える。産業資材用で注目が高いフリーフライトは超広幅(540センチ幅)にも対応する。

 日本代理店を務めるLGLエレクトロニクス(イタリア)のフィーダーは販売量を伸ばしており、近年は産業資材用途でも注目を高めている。

 古い機械のフィーダーを最新式に変え、総投資額を抑えながら品質の向上につなげるユーザーが増えている。まずはストレッチ生地が増える中で繊細な張力管理のために織物から始まったが、丸編みや横編み、経編み、細幅織物などにも広がっている。品質向上のほか、生産管理をデジタル化するために導入する企業も増えている。

 産業資材用では、太番手や伸度の少ない糸を安定して送り出すことができる「テクニコ2」があり、日本でも導入が進んでいる。今後も拡大に力を入れる考えで、LGLの技術者が来日しての産地訪問も進めていく。

〈ストーブリ/多重織りにダブルレピア/最大150ミリの厚さが可能〉

 ストーブリは産業資材用途で、スペーサーファブリックなどの製織に向くダブルレピア製織システム「TF20」の提案に力を入れる。独立駆動方式の「オープンシステム」ジャカード機「ユニバル」と組み合わせることで複雑な立体製織が可能となり、新しい織物の開発が可能となる。

 ストーブリグループは、産業資材用機械「TWS(テクニカル・ウィービング・システム)」シリーズをドイツで生産しており、その中で多重織などに向くダブルレピア織機「TF20」などを展開する。

 TF20はションヘルのカーペット織機の技術を生かして開発された機種で、50層の多重織も可能。織物の厚みは最大15センチまでで自由に設計できる。積極レピア方式で、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維などさまざまな素材に対応する。2段で多層が織れるので従来の特殊織機に比べて生産効率が高く、それぞれのデッキに緯糸4色が可能。近年は炭素繊維の製織を中心に欧米市場で導入が進んでおり、今後は日本での提案も本格化する。

 製織準備機では、自動ドローイング機「サファイア」シリーズが、資材用途でも注目されている。今年は日本で5台を販売したが、資材用途での導入も多かった。太い糸を使うなど糸本数が少なくなりがちな資材用途ではこれまで引き合いが少なかったが、各産地で人手不足や従業員の高齢化が進む中で、ドローイング機への注目が高まっている。

〈福原産業貿易/資材にも幅広く対応/要望具現化する開発を〉

 福原産業貿易は、衣料用、資材用を含めて、顧客の要望を具現化する技術開発に力を入れている。資材用途に特化した開発は進めていないものの、ユーザーの声に応える開発の中で、自然と資材での展開が広がっている形だ。

 既存の資材用途ではマットレス用のほか、天井材やシートの裏貼りといった自動車内装材、貼布剤基布など幅広いアイテムの生産に同社の丸編み機が使われている。近年はマットレス用など織物からのシフトで需要が伸びてきた分野もある。ユーザーの新規用途開拓に対応する技術開発にも力を入れていることから、今後資材用途の比率が高まる可能性もある。

 今年の丸編み機販売は、ダブルニット機の比率が高まっているほか、さらにファインゲージ化が進み、開反巻き取りへの要望の高まりなどの特徴がある。今後もこの流れに対応する開発に力を入れるとともに、自動化やさらなる省エネ化などの開発にも注力していく考え。福原精機製作所内に設置している常設ショールームを活用し、情報発信やユーザーの技術研修フォローなどにも力を入れる。

 2024年の繊維機械市場は世界的に低迷したが、丸編み機では25年に向けて回復の兆しが出てきている。中国はまだ動きが鈍いものの、足元では欧米が回復している。中長期で拡大市場とみるインドも徐々に回復に向かっており、反政府デモの影響があったバングラデシュも上向いてきた。ウズベキスタンなど今後の拡大が期待される市場もあり、25年の販売は拡大を見込む。