LIVING-BIZ vol.113(3)/特集 寝具寝装モノ作り/シキボウ/リュクス/東レ/岩本繊維/瀧芳/城野寝具
2024年12月18日 (水曜日)
〈病院リネン向け堅調/高洗濯耐久プリント採用増/シキボウ〉
シキボウは、メディカルリネンサプライ向けが堅調だ。工業洗濯に対応した洗濯耐久性の高い顔料プリント「アペニノ」使いなどが伸びている。
2024年4~9月期のメディカルリネンサプライ向けは、前年同期比増収増益だった。同社は、リネンサプライ用途で病院向けが強い。病院向けリネンサプライは安定した需要があり、同社の販売も底堅いが、今期はアペニノ使いの販売が増加して業績を押し上げる。
アペニノは、工業洗濯でも顔料が脱落しにくく、洗濯100回の顔料脱落試験でも色落ちしにくい結果を得ている。そのため、製品寿命を伸ばすことができ、色落ちによる廃棄ロスを減らせる。さらに、洗濯時に他の衣類などへの移染や白地部分への再汚染を防げる。
そのメリットが評価され、リネンサプライ企業からの指名買いが増えていると言う。「数年前から提案してきたものが決まっている」(藤井英司繊維営業部部長兼ライフスタイル1課長兼企画生産課長)と、長年の取り組みが成果につながる。
臭気対策剤「デオマジック」の販売にも力を入れる。デオマジックは、臭いを消す消臭とは異なり、不快な臭いを薬剤の成分で取り込んで、ナッツ、フルーツ、フローラルの香りに変える効果を持つ。便臭の悩みなどにも対応し、介護施設や病院にも訴求する。
〈日中に生産・物流拠点/企画から物流まで一貫対応/リュクス〉
寝装・インテリア企画製造のリュクス(大阪市西区)は、日本と中国に生産・物流拠点を持ち、企画から製造、検品、物流まで自社グループによる一貫体制を構築している。
中国に合弁の寧波明輝寝具(浙江省)、青島徳隆紡織(山東省)、安丘徳隆寝装用品(同)のグループ企業を持つ。
安丘徳隆寝装用品はふとんカバーや敷パッド、キルトケットを生産する。日本向けが主力で、ふとんカバーは年間400万枚を手掛ける。寧波明輝寝具は、マットレスや枕、クッションを製造する。今年5月に同じ浙江省内に移転した新工場が竣工(しゅんこう)。年間生産能力は枕約600万個、マットレス約160万枚。青島徳隆紡織は日本向けの貿易業務を担う。
国内には、ふとんカバーなどを製造する縫製工場のリュクス工房(愛知県蒲郡市)、枕・クッション製造のピローテック(和歌山県紀美野町)がある。リュクス工房はふとんカバーで月間1万枚程度、ピローテックは枕で月間約4万個生産できる。
中国には青島友都国際物流(山東省)などの検品・物流拠点があり、日本国内には大阪府貝塚市に約1万2千平方㍍の物流センターがある。中国、国内のダブルフォローで、中国側の出荷状況から国内の得意先まで日中間の一貫管理を実現している。
〈機能原綿や素材代替追求/国内の生産体制を再構築/東レ〉
東レの短繊維事業部は、寝具用途で高機能原綿の追求や素材代替の開発に取り組む。
同社は、2025年9月をめどに寝具の中わた用途を含むポリエステル短繊維を生産する愛媛工場(愛媛県松前町)の連続重合・直接紡糸(連重)設備を停止し、バッチ式紡糸設備のみとする。単品大量生産型設備である連重から、付加価値品の多品種小ロットにも対応できるバッチ式紡糸に絞ることで、多様な需要にフレキシブルに応える。
今回の生産体制の再構築で、生産をインドネシアに一部移管するが、「販売量、事業規模はこれまでと変わらない。営業や愛媛の技術部を縮小する計画もない」(中島健太郎短繊維事業部長)としている。
ポリエステル短繊維は、中国などによる低価格販売もあり、価格競争が厳しい。「付加価値の高いものにシフトし、無理な販売はせず、適正な価格帯で売っていく」方向性を追求する。
その中で高機能わたやサステイナブル素材の提案に力を入れる。羽毛やウレタンの素材代替品の開発も進めており、「長繊維を含めた構造体」などへの切り替えを提案していく考え。モノマテリアル化することで、リサイクルを後押しする狙いもある。
〈自社縫製工場軸に展開/介護向けパジャマ強化/岩本繊維〉
寝装製造卸・小売りの岩本繊維(京都市)は、自社縫製工場を持ち、綿や麻、シルクの天然素材使いのガーゼ、サテンなどのオリジナル生地を使ったモノ作りを強みにする。卸向け、宿泊施設向け、ネット通販が柱になっている。
2024年4~9月期の卸、宿泊施設向けは、前年同期比増収だった。宿泊施設向けは、小ロットやオーダーメードを含めたきめ細やかな対応力で小規模宿泊施設などのニーズをとらえ、リピートも多い。
ネット通販は、17年から本格的に取り組むセミオーダーパジャマを軸に展開して拡大基調にあるが、今期は伸び悩む。
ネット通販では新たに介護向けパジャマシリーズの展開を始める。親の介護用などにパジャマを購入する顧客に対し、これまではボタンをマジックテープにするなど、その都度対応してきたが、介護用パジャマのニーズの高まりを踏まえて、サイトのページ上で選びやすくする。標準的な形を用意し、マジックテープやホック、ファスナー、ボタンなど好きな仕様を選べるようにする。
介護用パジャマの生地には、肌の弱い高齢者のため主にガーゼを使用する。女性の胸が透けにくい工夫も施す。介護を含めたニーズにきめ細かく対応することで、パジャマの拡販へつなげる。
〈起毛を軸にモノ作り/グループに染色加工場も/瀧芳〉
織毛布製造の瀧芳(大阪府泉大津市)は、起毛を軸としたモノ作りを追求する。
同社は、現会長の瀧谷一夫氏が1966年に創立。起毛やシャーリングの整理加工業からスタートし、90年前後から毛布製品を手掛けるようになる。2004年に協力工場だった染色加工場から事業譲受して瀧芳染工場(同)を設立。協力工場を活用した織布から染色加工、起毛、縫製まで手掛けるが、「起毛が命」(瀧谷芳則社長)とする。
起毛を中心に据えて、起毛がしやすい素材、織組織、染色加工を考える。織組織では、泉大津市を中心に生産されている一般的な織毛布と比べて経糸の本数を多くする。経糸本数を増やすことで生地がしっかりし、風合いを高めるための激しい起毛も可能になる。染色加工でも、グループの瀧芳染工場での乾燥工程で乾きすぎないようにして、起毛がしやすい状態にしている。
素材はシルクをはじめ、ウール、キャメル、綿など天然素材にこだわる。
そのこだわりのモノ作りが評価され、海外ラグジュアリーブランドのアウター用生地の起毛加工なども手掛ける。
寝具卸向けのOEM、ODMが主力だが、フランス・パリで開かれるインテリア・デザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」にも、この10年間出展しており、海外を含めた自販にも力を入れる。
〈業務用別注の受注増/きめ細かな対応に評価/城野寝具〉
寝具、インテリア布物雑貨製造・ネット小売りの城野寝具(大阪市淀川区)は、業務用できめ細やかな別注対応力が評価されている。
インバウンドなどで活況なホテルのリニューアルで、ベッドスローやベッドスカート、ソファーカバーの受注が増加。2024年7月期の業務用OEM関連の売上高は、前期比40%増だった。
介護施設向けも伸びており、快適な姿勢保持をサポートするポジショニングクッションなどを受注生産する。OEM関連売り上げは、全体の約2割に上る。
同社は自社縫製機能のほか、近畿エリアに縫製などを手掛けるメインの協力企業が5社ある。自社工場(同)にはコンフォーターマシン2台、ミシン4台があり、ベッドスローで日産50枚、クッションで同数百個に対応する。協力工場でさらなる増産も可能だ。通常納期は1カ月程度だが、生地などの在庫があり、10~20個程度であれば2週間以内に納品できる。小ロットにも柔軟に対応する。
クッションなどに使用するウレタン・わた・発泡ビーズなどは、国内工場から仕入れ、生地も国内メーカーから調達。多様な生地、素材に対応できる体制を構築している。