特集 環境ビジネス(10)/進展を見せる各社の環境への取り組み/クラレトレーディング/澤田/新内外綿/泉工業

2024年12月17日 (火曜日)

〈リサイクル原料使い開発/マイクロファイバー「ランプ」で/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングは、扁平断面マイクロファイバー「ランプ」の打ち出しを強めており、新たにリサイクル原料を導入したタイプも開発し、衣料用途への提案を再開した。

 ランプは、ポリエステル・ナイロン複合紡糸による割繊型マイクロファイバー。扁平(へんぺい)断面とすることによって、一般的な扇形断面と比べてエッジが増えることで防滑性にも優れる。割繊工程でアルカリ減量処理が不要なため水使用量や廃水処理による環境負荷も抑えることができる。

 優れた防滑性を生かし、主にワイピング材用途で豊富な実績を重ねてきた。近年はアウトドア用タオルでも高い速乾性で人気が高い。使用するポリエステルとナイロンにマテリアルリサイクル繊維を使用した環境負荷低減タイプも開発した。

 これを生かし、環境配慮素材の要望が強いアパレル・製品メーカーへ提案に再挑戦する。8月に中国・上海で開催される国際ファブリック見本市「インターテキスタイル上海」に出展し、12月3~5日までドイツ・ミュンヘンで開催された国際スポーツ用品専門見本市「ISPOミュンヘン」でもリサイクル原料100%タイプを披露した。

〈猛暑で注目「ギマサワ」/海外市場も視野に/澤田〉

 地球温暖化の影響で春と秋が短くなり、今年は猛暑が長引いた。こうした気候変動を新常態として捉え、シーズンMDを練り直すアパレルも少なくない。ニット糸・ニット製品製造卸の澤田(大阪府泉大津市)は、独自企画をそろえ、オールシーズンで対応する。

 清涼感のある「ギマサワ」シリーズは発売以来、高評価を得ている。盛夏・晩夏物のヒットを背景に同社への問い合わせが急増した。

 ギマサワは清涼性を極めた擬麻加工糸で、綿100%ながら麻のようなドライな肌触りが特徴。イージーケア性にも優れ、家庭で手洗いできる。環境負荷低減も配慮して糊剤も自社開発した。合成樹脂とパルプ由来原料を独自の割合で調合することで、糊落ちしづらい安定した品質を保つ。

 同シリーズは、より繊細な表情を醸し出す細番化も着手。15番手の「シャーリーカーン」に加え、25番手の開発に成功した。4月から「シャーリーカーンスリム」で販売している。カラーは42色そろえた。

 同社が独自に開発した糸ブランドは、海外からの引き合いも多い。来年1月に催される「スピンエキスポ・ニューヨーク」の出展も決まった。ギマサワをはじめ和紙糸「カミファイン」も出品する予定。新型コロナウイルス禍からの回復を経て、海外市場の開拓も強化する。

〈糸で環境保全に貢献/新たな見本帳も視野/新内外綿〉

 綿紡績の新内外綿(大阪市中央区)は、SDGs(持続可能な開発目標)や環境保全に貢献する新たな糸の開発に力を入れている。

 竹、葦(ヨシ)、ヘンプといった天然の繊維でありながら、これまで衣料用に使われてこなかった原料を同社ならではのノウハウで商用化したり、カキ殻や魚のうろこといった廃棄される天然資源由来の機能原糸を輸入して新たな糸を開発したりと近年、“環境”をテーマとした素材を矢継ぎ早に投入している。

 今春には高いトレーサビリティーを持つオーガニックコットン糸「エーゲ海オーガニック」の取り扱いを始め、夏には親会社のシキボウとカキ殻由来の保温機能繊維を使った紡績糸を共同で開発、11月には1年がかりで開発してきたパイナップル繊維と綿混糸の販売をスタートした。

 環境をテーマとした糸が充実してきたことを受け、来年の早い段階で環境配慮素材に分類される糸を1冊にまとめた新たな見本帳を作る方針。見本帳にすることで効率的、網羅的に同社の環境に配慮した素材をアピールする。アパレルを中心にSDGsへの取り組みを強化するために、新たな切り口で環境に貢献できる糸のニーズが広がっており、今後も需要は拡大しそうだ。

〈ラメ糸もサステイナブル/放射冷却素材も開発/泉工業〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)は、ラメに使用するフィルムに生分解性素材や再生原料、バイオマス原料を使用した環境配慮型ラメ糸を提案している。

 同社は、ラメの基材となるフィルムに環境配慮型素材を採用したサステイナブルラメ糸シリーズをそろえる。

 その一つ、「エコラメ」はセルロースフィルムを使用することで生分解性を実現。再生ポリエステルフィルムを使用したラメ糸、バイオマス由来原料ナイロンフィルムを使用したラメ糸もラインアップする。

 再生ポリエステルラメ糸がメガブランドのスポーツウエアで採用されるなど実績ができ始めた。

 大阪ガス発ベンチャー企業のSPACECOOL(東京都港区)が開発した放射冷却素材「スペースクール」を原料とした糸「スペクル」も開発。放射冷却現象(熱を光エネルギーとして放出することで入熱量より出熱量が多くなる現象)を応用することでゼロエネルギーでの冷却を可能にする。

 現在、織・編み物にした際の性能を検査機関で確認中だ。省エネに貢献できる糸として期待される。

 原料段階からノンホルマリンを追求したラメ糸「ゼロプラム」も商品化している。ベビー・キッズで豊富な実績があり、化学物質に対する関心が高まる中、一段と注目されそうだ。