特集 環境ビジネス(9)/進展を見せる各社の環境への取り組み/スミノエインテリアプロダクツ/ヤギ/川島織物セルコン/大和紡績
2024年12月17日 (火曜日)
〈リサイクルタイルの先駆け/高再生材比率で採用広がる/スミノエインテリアプロダクツ〉
スミノエインテリアプロダクツの水平循環型リサイクルタイルカーペット「ECOS」(エコス)は、再生材比率が他社と比べて高く、オフィスなどで採用が広がる。
エコスは、2011年発売でリサイクルタイルカーペットの先駆け的存在。従来産業廃棄物として処分されていた使用済みタイルカーペットのバッキング材(裏材)の塩ビ樹脂をチップ化し、再びバッキングに使用しており、製品重量比で70%以上と言う、他商品と比べて高い再生材比率を誇る。
さらに従来工程を分けていたバッキング材の製造と、タイルカーペットの組み立てを一体化するエコス専用の工場ラインでタイルカーペットを製造することで、バージン使いのタイルカーペットと同等の価格帯を実現している。
森ビルなどが推進して23年に開業した大規模再開発プロジェクト「麻布台ヒルズ」(東京都港区)の高さ約330メートルの日本一高いオフィスビル「麻布台ヒルズ 森JPタワー」と、同年に開業した「虎ノ門ヒルズステーションタワー」にも、合わせて約35万平方メートルのエコスが使用された。エコスの意匠性や複雑な要求への対応力とともに、総重量に対する再生材比率が評価された。カーペットメーカーが環境対応により取り組む契機にもなっている。
〈本物のサステ訴求/「ユナ・イト」で/ヤギ〉
ヤギは環境配慮素材をリブランディングし、グローバル販売を加速させる。
「サステぶらないサステナブル」をコンセプトに複数あった環境配慮素材を「ユナ・イト」(UNITO)に統一、一般消費者への浸透を図り、BtoCtoBを狙う。
「ユナ・イト オーガニック」や「ナチュリール」など複数の環境配慮素材が存在したが、このほどユナ・イトに統一した。ユナ・イトプロジェクト(PJ)の元に、独自のトレーサビリティーシステム「コットンID」も絡ませたオーガニック綿糸「オーガニック」、再生綿100%使いの「リサイクル100」、北陸産地の糸加工技術と再生ポリエステル、同ナイロンを組み合わせた「ポリエステル」と「ナイロン」、UVカット、速乾、透け抑制の3機能を基本とした再生ポリエステル紡績糸の「プラス」――の5ブランドで展開する。
同社は同PJの意義を①環境と未来を糸でつなぐ②「ものづくり」への新たな気づきを生む③YAGIの新たな挑戦――と位置付けており、「安心して使ってもらえる本物の環境配慮素材をお求めやすい価格で提供する」ことをモットーにする。
各種糸を番手展開も豊富に備蓄して即納ニーズに応えるとともに、アパレルなどとの協業も積極化する。このほど一般消費者への浸透を意識した専用ウェブサイトも立ち上げた。
〈エコプロ優秀賞受賞/供給網全体で脱炭素へ/川島織物セルコン〉
川島織物セルコンはこのほど、サステナブル経営推進機構主催の第7回エコプロアワードで優秀賞を受賞した。インテリア業界初の廃床材リサイクル循環システム「e―RECYCLED」が評価された。
2003年のシステム確立から20年余り、廃床材を再資源化し、新たな床材のバッキング材としてリサイクルしてきた。10年には業界初の「エコ・ファースト企業」に認定された。カーテンを含め、広域認定取得による資源循環利用を促進する。
この20年間で同社のリサイクルタイルカーペットは全体の約90%に拡大。再生素材使い、グリーン電力使用などを含む環境配慮設計(エコデザイン)を追求し、SuMPO EPD(旧エコリーフ)による温室効果ガス削減効果を登録公開し可視化。登録公開達成率はナイロン製タイルカーペット約99%、ビニル床タイル約98%になる。
廃棄物処理業者発行のリサイクル証明書のほか、温室効果ガス排出量を明記した「商品出荷証明書」を自社発行。施主のCSR、ESG経営に一役買う。昨年「SBT認証」も取得した。今後は自社、床材だけでなく、生産・調達・販売などサプライチェーン全体を巻き込み、資源循環、脱炭素社会の実現に取り組む。
〈独自の環境配慮素材拡充/多彩なレーヨンで機能付与/大和紡績〉
大和紡績は、独自性の高い環境配慮型素材を拡充している。特殊紡績糸「セルハーモ」といった、グループ会社のダイワボウレーヨンの機能レーヨンを組み合わせた素材開発を加速。高機能でありながらもセルロース100%で生分解性をうたえる。
セルハーモは、綿100%でありながら合繊並みの速乾性を持つ「ミラクルドライ」と同じ特殊紡績を採用。毛羽立ちを抑え、長く奇麗な外観を保つほか、Tシャツやインナーに適したハリのある風合いに仕上げた。
多彩な機能レーヨンと組み合わせることも可能で、遮熱・UVカット「レイシールド」や消臭「パラモス」、防虫「バグノン」、抗菌防臭「バクトフリー」と混紡できる。レーヨンの混率は30~50%が中心で、基本的にOEM製品での供給となる。
環境配慮型素材へのニーズは年々高まっており、リサイクルポリエステルを米綿で包んだ2層構造糸「ツインレット」は今期(2025年3月期)も引き続き販売量が前期比2割増になる見通しで、カジュアルのTシャツ向けで採用が増加している。芯にリサイクルナイロンを使った「ツインレットN」を展開するほか、芯に生分解性ポリエステル「パルテラ」使いといった別注対応も可能で、多様なニーズを捉える。