特集 環境ビジネス(6)/進展を見せる各社の環境への取り組み/豊島/信友/モリリン/ソトー

2024年12月17日 (火曜日)

〈循環型社会へ異業種とタッグ/自動車の廃材再活用で協業/豊島〉

 豊島は、循環型社会の構築に向けた取り組みを進める中、異業種との連携の輪を広げている。

 廃棄物のアップサイクルで新たな挑戦となるのが、トヨタ自動車が推進する「トヨタ・アップサイクル」。自動車の製造過程で発生する再利用が困難な廃棄物を原料とし、自動車に使われる高機能素材がモノ作りに生かされている。同プロジェクトでは、9月にアーバンリサーチとともに3社連携を開始した。

 第1弾として、アーバンリサーチが展開するアーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズビジネスタワー店で、シート本革、シートベルト、エアバッグ基布の3種類の廃素材を使ったトートバッグやペンケースなどの製品を期間限定で販売した。現在は、第2弾としてアーバンリサーチKYOTOで販売されている。

 廃棄予定の食材を染料に再活用する「フードテキスタイル」も、アシックスとロッテの協業による商品展開に協力した。チョコレート製造で出るカカオ豆の皮の色で染めた生地の生産を担った。

 衣料品循環プロジェクト「ワメグリ」はこのほど、メルカリが東京・原宿で開催した新作ゼロのファッションフェス「グリーンフライデープロジェクト2024」に参加。各ブースから回収した最終在庫品の再資源化を図る。

〈環境配慮型商材販売進む/持続可能な事業推進も/信友〉

 信友は“サスティナブル推進室”を中心に、環境配慮にまつわる商材の開発や販売を進める。繊維製廃棄物を再利用した紙製品の販売では、売上高も扱い品種も増加。事業の継続性を見据えた社内の取り組みも推進する。

 繊維製廃棄物を主原料とした再生紙製の商品を販売するサーキュラーコットンファクトリー(CCF、東京都目黒区)との協業は2年以上が経過。CCFの生産背景で、繊維製廃棄物の配合率50%以上の再生紙を生産する。量産はパートナーの製紙企業が担う。信友は繊維製廃棄物の回収と供給を行う。

 製品の販売は紙製品を扱うキングコーポレーション(名古屋市中区)と協業する。名刺、カレンダー、封筒など扱い品種も拡充。再生紙は和紙のような表面を持ち、印刷適性にも優れる。カーテン地や着物向け生地をノートや手帳の表紙に使う事例も増えている。

 持続可能な事業モデル形成を目指した社内の取り組みも継続する。同社が掲げる「SDGs宣言」では環境対策・地域活性化・人材・システム革新への具体的な取り組みを明記。健康経営優良法人も3年連続の取得を目指す。特に対欧向けの商取引に必要な国際認証の取得も精力的に進めている。

〈廃棄衣料品など再資源化/建材・床材向け販売増える/モリリン〉

 モリリンは廃棄や処分対象の衣料品を再資源化した建材・床材向け素材「PANECO」(パネコ)の販売を着実に増やす。店舗設備・器具のデザインや制作を行うワークスタジオ(東京都新宿区)と協業し、用途や販路を拡大している。

 パネコはワークスタジオが製法を確立し、原料の回収から再生までのスキームを構築。モリリンは国内販売総代理店として、販売先のニーズに合わせた企画の立案で販売を手掛ける。パネコの販売事業は5年目を迎えた。

 什器(じゅうき)や家具といったインテリア向けからコースターをはじめとする雑貨・ノベルティーまで販売事例が広がる。最近ではオフィスの床材向けに使用済み制服を再利用する事例が増えていると言う。インテリア総合メーカーとの協業にも注力し“捨てない床材”として訴求を図る。

 現在、ノベルティーなどのデザインや仕様決定を経て注文までを可能にするプラットフォームを構築中。今後、需要の細分化が進むと予測しており、対応を図るためサービス面の高度化を急ぐ。担当者は「他社が持つ循環型商材と明確な差別化を進める。物性や強度などを明確に示すことも必要となる」と今後について話す。

〈積極設備投資でサステ対応/節水強化でCO2削減へ/ソトー〉

 ソトーは積極的な設備投資で環境対応を図っている。環境性能が高い染色機やボイラーの導入を推進。特に節水に力を入れており、使用する水の量を減らすことでCO2削減につなげる。対外的にもさまざまな取り組みを実施し、サステイナブルな社会の実現を目指す。

 節水を進めるため、この2、3年で低浴比型の染色機を10台以上導入した。洗いの工程でもロットをまとめる工夫などで水を使う量を減らした。染色整理工場では大量の水を使用し、温める際にも多くのエネルギーが必要となるためだ。

 さらなる省エネを進めるため、染色機以外にも2年かけてボイラーの更新を進めてきた。今期(2025年3月期)は一宮工場のボイラー入れ替えを計画しており、これで全3工場の更新は終える。同社は30年度までにCO2排出を18年度比で50%削減させる目標を打ち立てている。

 対外的な取り組みとしては、東亜紡織と共同で、持続可能な調達・製造工程のトレーサビリティーの達成に向けた「グリーンウールバリューチェーン」を推進。さらに、日本羊毛産業協会の日本ウールサステナブル委員会のメンバーとして、サステ素材であるウールの発信にも努めている。