特集 環境ビジネス(5)/進展を見せる各社の環境への取り組み/小松マテーレ/菱友商事/蝶理/レンチング
2024年12月17日 (火曜日)
〈新たな立体形成技術開発/まずは透湿防水から/小松マテーレ〉
小松マテーレは、生地やフィルムに高さ50~150マイクロメートルのドットを形成する新技術「VDRテクノロジー」を開発した。同技術による第1弾商品として透湿防水生地「クアトローニEX」を11月から展開している。
VDRテクノロジーは、生地やフィルムに任意の高さ、密度でドットを形成する。立体感を出して意匠性を付与するために使っていた特許技術を応用して開発した。
同技術を透湿防水生地に使って開発したのがクアトローニEX。従来のクアトローニは表地、フィルム、裏地の3層構造だが、VDRテクノロジーでフィルムに高さ100マイクロメートルのドットを形成し、裏地がない2層構造で高い機能性とドライタッチで快適な着心地を実現した。
裏地を廃するので使用する資源を減らし、工程削減による環境負荷低減にもつながる。ドットで凹凸を形成するので肌への接触面積が小さくなり、袖通しや肌離れ性も向上する。スポーツ・アウトドアやファッション、ユニフォーム、資材などで展開し、3年後に10億円の販売を目指す。
VDRテクノロジーはウレタン膜に限らず伸縮性がある材料なら応用でき、ドットの密度や形も自由にコントロールできる。機能性や意匠性を付与する技術として、クアトローニEX以外でも活用していく。
〈落ちわた・反毛使いのデニムを提案/素材から染色までこだわる/菱友商事〉
カジュアル向けテキスタイル商社の菱友商事(広島県福山市)は、オーガニックコットンやリサイクルコットンなど、環境に配慮した素材を採用した生地の拡充を進めている。
同社では、紡績工程で発生する落ちわたと、生地の端材や試験反などを反毛してできたわたを採用したデニムのラインアップを充実させて提案を進めている。ダブル幅のデニムとともにシャトル織機で織ったセルビッヂデニムをそろえるほか、オンスもダブル幅では7・1、9・6、11・6、13・7、セルビッヂでは13・5、17・4と豊富に用意する。花田充民社長は「これから大々的にPRしていきたい」と話す。
近年展開する、岡山県織物染色工業協同組合による安心、安全な加工ブランド「倉敷染」を採用した生地も採用が広がってきた。定番は、オーガニックコットンを100%使ったカツラギ生地。同社担当者は「意識的にオーガニックコットンと倉敷染を組み合わせて素材作りをしている」と説明する。このほか、逆綾サテン、キャンパス生地など種類も充実する。
同社では国内産地でのモノ作りを重要視する。このほど、浜松産地で高密度に織ったコール天生地を硫化染めしてビンテージ感を出した生地も開発した。
〈気候変動に対応する素材を提案/機能性生かした品ぞろえ/蝶理〉
蝶理は、気候変動への対応に活用できる素材の提案に力を注ぐ。温暖化により、衣料に求められる機能の変化を想定した品ぞろえの拡充を図る。
ウールライクのポリエステルのシリーズ「アルティメット・ウーリッシュ」を立ち上げた。通気性、ストレッチ性、防シワ性を持つ「ファンクション」、メリノウールの質感を追求した「プレミアム」、価格訴求力の高い「バリュー」、シーズンレスに着用できる「スタンダード」の4種をそろえた。多様なシーンに提案する。
気候変動に加え原料価格の高騰が進む状況に合わせ、ニットの提案についてもバリエーションを増やしていく。
最高級のイージーケアウール、混率を変えることでのコスト対応や機能性を追求した開発素材、気候適応型の紡毛、ASEAN生産の高品質カシミヤ、脱リアルファー志向の獣毛ニットなど、環境と市場のニーズに対応する商材を打ち出す。
温暖化を見据え、コートの手前で軽く羽織れる〝ミドルウエア〟にも焦点を当てる。軽さと程よいウオーム感、撥水(はっすい)、ストレッチ性など多機能を備えた素材を、袖の脱着ができてベストにもなる2ウエーアイテムやファーベストに向け採用を促進する。
〈環境配慮の特徴見せる/ファッションの社会運動に協力/レンチング〉
レンチングは、アパレル分野でもトレーサビリティーとサーキュラーエコノミーへの要望が一段と高まっていることに対応し、デザイナーや学生、繊維業界関係者に向けて、再生セルロース繊維「テンセル」の環境配慮素材としての側面を一段と見せる取り組みを進めている。
今年9月、ファッション産業の透明性を高める社会運動「ファッションレボリューション」に協力し、タイでのスタディーツアーを開催した。
参加したデザイナーや学生、流通関係者、マスコミ関係者は、レンチングのタイ工場のほか、協力関係にある紡織のタイ・クラボウ、染色加工を手掛けるタイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)、縫製のタイパルファンを見学した。
ツアーを通じて、原綿の一部に廃棄綿布などを原料に再利用するレンチングの「リフィブラテクノロージー」や、トレーサブルレーヨン「レンチングエコヴェロ」も紹介し、同社のトレーサビリティーとサーキュラーエコノミーへの取り組みを発信した。
テンセルのブランドテーマを「ネイチャー。フューチャー。アス。」(自然。未来。私たち。)に刷新した。ブランドアイデンティティーに地球の未来を守るために繊維業界の変革を促すことを掲げる。