特集 環境ビジネス(4)/進展を見せる各社の環境への取り組み/東洋紡せんい/ダイワボウレーヨン/シキボウ/エシカルファッション協議会

2024年12月17日 (火曜日)

〈綿、合繊ともにリサイクル/デニム向けなどでも提案/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、綿、ナイロン繊維、ポリエステル繊維それぞれでリサイクル原料を活用した戦略商品を打ち出す。いずれも先端技術によって実現したもので、回収から供給まで具体的なシステムが整備されていることが強みだ。

 綿素材は、新方式開繊技術を活用したリサイクル綿糸「さいくるこっと」を重点提案する。通常方式の開繊による反毛と異なり、繊維長が維持されるため、細番手糸や100%糸が可能。同社が得意とするインナー用途に加えて、デニムなど新たな用途からの引き合いも増えるなど注目度は高い。

 ナイロンは、マスバランス方式ケミカルリサイクル糸「ループロン―C」とマテリアルリサイクル糸「ループロン―M」の2タイプを用意。ループロン―Cは食品衛生法にも対応しているため食品包装材やデンタルフロス用糸などにも使用できるなど、資材用途でも利用可能だ。

 ポリエステルは、グループ内の工場で発生する端材や残糸・残反を原料として再利用する「T2T」を提案する。国内やインドネシア、ベトナムの自家工場や協力工場から回収した残糸・残反など端材を台湾の協力工場でマテリアルリサイクルする仕組みを構築した。

〈“サステ+機能”が基本/グローバル評価、認証も重視/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは国内唯一のレーヨン短繊維メーカーとして“サステイナビリティー+機能”を基本戦略に、環境配慮型レーヨンのラインアップを整備してきた。

 同社は使用済み綿製品を原料として再利用するリサイクルレーヨン「リコビス」、海水中生分解性も確認した「エコロナ」、化学的マーキングによって鑑別可能なトレーサブルレーヨン、カーボンオフセットを導入したカーボンオフセットレーヨンなど環境配慮型レーヨンを商品化している。

 遮熱(しゃねつ)機能レーヨン「レイシールド」やUVカット機能レーヨン「スキュータム」もベースのレーヨンにエコロナを使用したタイプを用意し、機能性と環境配慮の両立に取り組む。

 グローバルな評価や認証も重視する。適正管理された森林資源を使っていることを認証する「FSC」を取得しているほか、エコロナは海洋生分解性の国際認証「OKバイオディグレーダブルマリーン」を取得している。リコビスはリサイクル原料が適正に使用されていることを証明する国際認証「リサイクル・クレーム・スタンダード」(RCS)を取得した。

 カナダの森林保全団体であるキャノピーのファッションセクター向け繊維調達分析ツール「ホットボタンランキング」でもランクインしている。

〈「コットレジン」で用途開拓/異業種からの関心も高く/シキボウ〉

 シキボウは、従来廃棄されている綿素材を再利用したバイオマスプラスチックペレット「コットレジン」の用途開拓を進めている。廃棄されていた綿素材をマイクロファイバー化したもので、ポリプロピレン樹脂と混ぜることによって物性が向上。従来のプラスチック製品はもちろん、より強度や耐久性に優れた成形品ができる。製品の薄肉化や軽量化、樹脂の使用量削減も見込める。

 同社では新内外綿と連携する繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」を構築。コットレジンでは、彩生とは異なり、廃材を再生しプラスチックの製造工程で使うという点に「目新しさを感じるのか、興味を持ってもらった」。「繊維以外の出口を広げる」可能性から、アパレルメーカーや商社からの関心が高いと言う。

 出展した「サステナブル マテリアル展」でも、プラスチック成形メーカーや自動車、電化製品、容器など異業種のメーカー関係者がブースを訪れた。「いろいろな問い合わせが来ている」として、好感触をつかんだ。

 今のところペレットにできるのは基本的に綿100%素材だが、ポリエステル・綿混素材での実証も推進。来春までに織布・染色加工のシキボウ江南(愛知県江南市)に量産機の設置も予定する。

〈認定PJをサポート/発信や会員間の協業促進も/エシカルファッション協議会〉

 繊維・アパレル業界からエシカル経済をけん引することを目的に活動するエシカルファッション協議会(岡山市)は、会員企業が進めるエシカルな取り組みを「認定プロジェクト」(PJ)として認定しながら、発信などに力を入れている。ホームページ(HP)もリニューアル。会員のエシカルな商品を一般消費者に伝えるほか、今後は会員間でコミュニケーションが取れるようなプラットフォームの仕組みも作る。

 会員企業のコトセン(岡山県倉敷市)や大木工藝(大津市)などが協業する、使用済みユニフォームを炭化させて新製品に生まれ変わらせるPJや、ニッセンファクトリー(倉敷市)が関わる、廃棄予定のヒノキの皮で染めた肌着の展開などを認定PJとしてこれまでに支援してきた。

 先月末にはHPを刷新し、会員企業の手掛けるエシカルファッション商品を紹介するプラットフォーム「エシカルなとっておき。」を設けた。現在は3事業者の商品を、素材や生産時のこだわりなどを盛り込みながら魅力を伝えている。HPは今後も改良を加える。会員企業同士の協業やマッチングなどが行えるような会員限定ページの設置を計画する。

 同協議会は2022年に設立。現在、会員数は正会員、賛助会員、特別会員含め39社。