特集 環境ビジネス(3)/進展を見せる各社の環境への取り組み/東レ/旭化成/帝人フロンティア

2024年12月17日 (火曜日)

〈拡大する「&+」/文化服装学院が浴衣製作/東レ〉

 東レのリサイクル合繊「&+」(アンドプラス)が拡大している。ポストコンシューマー型リサイクル原料を一部使用し、トレーサビリティーも併せ持つ環境配慮型素材として認知度が高まる。

 アンドプラスは、製品として使用されたリサイクル原料(ポストコンシューマー型リサイクル原料)を一部に使用し、化学的マーキングによる鑑別と国際的な第三者認証であるグローバル・リサイクルド・スタンダード(GRS)もしくはリサイクル・クレーム・スタンダード(RCS)を取得することでトレーサビリティーを確立していることが特徴。

 2019年にペットボトル由来のポリエステル繊維からスタート。バージン原料によるポリエステル繊維と同等の白度などを実現していることへの評価は高く、確実に採用を拡大している。23年には日東製網(東京都港区)とマルハニチログループの大洋エーアンドエフ(同中央区)と協力し、使用済み漁網を原料として漁網に再生する「漁網to漁網リサイクル」がスタート。これを応用し、漁網由来再生ナイロン繊維も24年からラインアップに加わった。

 アンドプラスの最大の特徴は、ポストコンシューマー型リサイクルのキーとなる回収プロセスに、企業だけでなく一般消費者の参画を促す取り組みを進める点。そのためにさまざまなイベントに参加してきた。

 学生とのコラボレーションも。文化服装学院で東レがアンドプラスに関する講義を行ったことをきっかけに浴衣の製作が始まった。アンドプラスを使った生地の柄を学生がデザインする。製作した浴衣は、11月に金沢市で開催された糸総合展「北陸ヤーンフェア」で披露し、注目を集めた。

〈差別化とサステ軸に/取り組みを具体的に紹介/旭化成〉

 旭化成のロイカ事業部は2023年から独自に「ロイカ サステナビリティレポート」を毎年発行している。国内外の需要家に対してポリウレタン弾性糸「ロイカ」のサステイナビリティーへの取り組みを具体的に紹介し、機能糸などによる差別化と合わせてサステを事業運営の軸に置いていることを改めて打ち出す。

 24年版のレポートは「環境」「社会」「ブランドについて」の3テーマで構成。環境の項目では温室効果ガス(GHG)排出量削減目標と実績などを紹介し、24年度版は廃棄物削減や排水処理、化学物質管理など国内外の工場の環境マネジメントについて詳報した。

 サステ戦略を加速するためにデジタル技術で企業を変革するDXを推進することも特記し、22年から工場、営業、開発がデータ可視化プラットフォームを活用してデータ共有・統合管理を進めている。23年からはタイ子会社も取り組みに加わった。

 商品開発も進む。現在、ロイカはマスバランス方式によるバイオマス由来原料と再生可能エネルギーを組み合わせることでカーボンフットプリント削減を実現したタイプを用意するほか、生産工程で発生する端材を原料に再利用した「ロイカEF」、生分解性を持つ「ロイカV550」を実用化した。

 いずれも採用が徐々に広がっており、最近ではカイハラとレンチングがロイカEFを採用して「SAISEI」コレクション、レンチングと中国のアドバンスデニムがロイカV550を使って「ループティ・コレクション」をそれぞれ共同開発するなどプレミアムストレッチデニムで採用が進む。

 ウレタン系素材の環境負荷をどう下げるかという課題に旭化成として一つの答えを用意する。

〈PLA樹脂を本格販売/生分解性の制御が可能/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの化成品部は、生分解の速度が制御できるポリ乳酸(PLA)樹脂「BIOFRONT」(ビオフロント)の本格展開を始めた。ポリマーに新たな生分解促進剤を添加することで強度や成型性などの実用性を損なうことなく生分解速度の向上を可能にした。農業や漁業をはじめ幅広い用途に訴求する。

 軽量で丈夫であるほか、加工がしやすいことから幅広い用途で使用されているプラスチック。耐久性と安定性に優れる分、自然界で分解されにくいという特性も併せ持つ。環境負荷低減が求められる中、実用性と生分解性の両立を目指して開発したのがビオフロントだ。

 生分解促進剤を添加することによって、加水分解を促進し、細菌や菌類による捕食・分解を加速する。このため、高温多湿のコンポスト環境下と比べると細菌や菌類が少ないとされている土壌中や海洋・河川でも無添加のPLAポリマーなどと比べて速く分解性能を発揮する。

 主としてプラスチックが使用されている被覆肥料での採用や網などの漁具への浸透を図る。通常のPLAと同様にフィルムや射出・押し出し成形品などへの応用が可能なほか、繊維(生地や不織布)でも展開できる。2026年度に数億円規模を目指す。

 ビオフロントは現在、同部大阪化成品・機材課が主体となって販売を行っている。同課は樹脂・ペレットやフィルム、機械設備・部品、包装材料・その他の販売を主な事業内容とし、樹脂・ペレット関連ではポリカーボネートやポリエステル、ポリエチレンなどを取り扱っている。