特集 環境ビジネス(2)/東レの不織布・人工皮革深化する環境配慮

2024年12月17日 (火曜日)

 東レの不織布と人工皮革がともに環境配慮の取り組みを深化させている。不織布、人工皮革ともに資材用途が主力の素材だが、近年はこうした用途でも環境配慮への要求が強まる。ユーザーの多様な要望に応えながら、環境負荷低減と新たな価値創造に取り組む。

《不織布》

〈一部用途に「エコマーク」/「アクスター マントル」〉

 ポリエステルスパンボンド不織布「アクスター」は、長繊維不織布ならではの強度や密度を生かしてフィルター、土木農業資材、建築資材、生活資材など幅広い用途で採用されている。こうした用途でも近年、環境配慮素材へのニーズが急速に高まっている。このため、原料の約60%に再生ポリエステルを使用することで日本環境協会が認定する「エコマーク」取得タイプの提案を強化している。

 特に採用が拡大しているのが港湾・堤防分野や廃棄物処分場の土木資材。港湾・堤防分野の工事案件は基本的に公共事業が多い。このため不織布製資材も可能な限り環境負荷の小さいものを採用する傾向が強まっている。こうしたニーズに対してエコマーク取得の「アクスター マントル」が評価されている。

 これを受けて、東レは港湾・堤防分野向けに販売するアクスター

 マントルをエコマーク取得品に一本化することを決めた。現在、置き換えを進めており、2024年度(25年3月期)内には完了する計画だ。

〈屋上緑化でも活躍/バッグを置くだけで施工〉

 アクスターの用途で注目が高まっているのが屋上緑化。緑化事業を展開するフジタ(鳥取県岩美町)と連携し、「Fujita屋上緑化システム」に耐候性や排水性に優れる土木工事用ポリエステルスパンボンド不織布「アクスター マントル」が採用されている。

 近年、都市部の気温が上がるヒートアイランド現象への対策や植物による二酸化炭素吸収効果も期待されることから屋上緑化への注目が高まっている。一方、一般的な工法は屋上の防水改修や土壌の飛散・流出によるドレン詰まりを防ぐための施工など大規模な工事が必要であり、施工後のメンテナンスも含めてコストも高い。

 これに対して、Fujita屋上緑化システムは、アクスター マントルを使用した袋に専用培土を詰め、フジタが品種改良によって開発した常緑キリンソウの苗をセットした「FTMバッグ」を使用する。特別な設置工事を必要とせず、屋上にFTMバッグを並べるだけで屋上緑化が完了する。アクスター マントルの袋が土壌の飛散・流出を防ぐため、屋上緑化で課題となるドレンが詰まるといったトラブルも防ぐことができる。

 屋上緑化は建屋内の温度上昇を抑える効果もあるため、例えば倉庫の屋根に設置することで倉庫内の暑さ対策にもなる。実際に人工気象室でのテストでFujita屋上緑化システムを設置した屋根裏面の温度が低下することを確認している。

 今後は使用するアクスター マントルの原料を再生ポリエステルに変更するなどして、公共施設などへの提案を進める。

〈プラスチック削減に貢献/高強度・低目付のPPSB〉

 東レの不織布でポリエステルスパンボンド不織布と並んで主力素材となるのがポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)。紙おむつなど衛材用途を中心に豊富な実績を持つ。衛材は使い捨てが基本となる商品だが、それだけに近年はサステイナビリティーへのニーズが徐々に高まっている。

 ただ、使い切り製品はコスト競争力が不可欠なため、製造原価の上昇に直結する原料変更へのハードルは高い。こうした中、東レが衛材用途で提案しているのが高強度・低目付タイプのPPSBだ。従来品と比べて使用量を削減できることから、プラスチック使用量の削減につながる素材として提案している。こうした切り口での提案も使い切り製品が中心の衛材分野では重要な環境負荷低減への貢献につながる。

〈多彩な高機能素材/短繊維不織布も評価高まる〉

 東レの不織布のもう一つの強みは、多彩な高機能素材を原料とした商材をそろえる点にある。その一つが耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、難燃性、絶縁性などに優れるポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維「トルコン」である。機能を生かしてフィルター分野で高い評価を得てきた。特にバグフィルター用途は海外でも販売実績を重ねてきた。フィルターは環境エンジニアリング資材として重要性がますます高まっているだけに、広い意味での環境負荷低減に貢献する商材と捉えることもできるだろう。

 東レは近年、湿式を含めた短繊維不織布の拡充に力を入れ、総合不織布メーカーとしての立ち位置を強めている。短繊維不織布も汎用素材ではなく、フッ素繊維やPPS繊維、アラミド繊維など高機能素材を活用した不織布をそろえる点が強み。液晶ポリエステル繊維「シベラス」も不織布化してマーケティングを進めている。高強力・高剛性で難燃性や耐熱性、振動減衰性などに優れるシベラスの特徴を生かした用途開拓に取り組む。

 難燃性と“炎を遮る”機能(遮炎機能)を持つ耐炎化繊維「ガルフェン」不織布も注目の不織布だ。航空機の内装部材向けで実績が先行したが、ここに来てマットレス部材など寝装用途でも採用が広がってきた。米国ではマットレスのクッション材であるウレタンに引火するのを防ぐために防炎性繊維の不織布でウレタンを保護することが多い。ガルフェンは他の防炎性繊維と比べて低目付でも優れた難燃性能を発揮することから、ソフトな風合いと快適な寝心地を実現できることが評価された。

 また、膜支持体用途で需要が高まっている湿式不織布も重点分野。瀬田工場(大津市)に開発機を導入する。こちらもさまざまな高機能繊維のショートカットファイバーを活用することで先進的な湿式不織布の開発と用途開拓に取り組む。

《人工皮革》

〈バイオ由来原料で高評価/用途広がる「ウルトラスエード」〉

 東レの人工皮革「ウルトラスエード」の用途が着実に広がっている。電気自動車(EV)の内装材として採用が拡大していたが、それ以外にもアパレル、店舗内装、家具などでも採用が広がる。特に原料に部分バイオ由来ポリエステルを使用していることへの評価が高い。

 ここに来て世界的にEVシフトが鈍化しているが、高級車種を中心にウルトラスエードはラグジュアリーな車内空間を演出する素材として定着した。また、衣料用途でも国内のデザイナーブランドが安定的に採用しているほか、米国ではアウトドアブランドが部分使いで採用を拡大している。天然皮革と比べて洗濯などでのイージーケア性の面で圧倒的に優れることに加え、部分バイオ由来原料の使用がブランドのコンセプトにマッチした。

 東レでは将来的に原料を100%植物由来ポリエステルに転換することを目指している。また、環境配慮型の原材料を使用するだけでなく、製造工程においても、RE100に適合した再生エネルギーの利用を開始、更に工場の一部電力に太陽光発電も導入するなど、低炭素化を進めている。

 「豊かな社会を次世代に」という価値観の下、大学など教育機関と連携したプロモーション活動にも力を入れ、ウルトラスエードのさらなるブランド力向上に取り組む。

〈ニーズに応える環境配慮/不織布事業部長兼不織布グローバルオペレーション課長 佐々木 望 氏〉

 近年、不織布でも環境配慮への要望が急速に高まっています。ただ、不織布は使用される用途が幅広いこともあり、用途によってニーズに濃淡があります。そんな中、リサイクル関連の要望は確実に増えていると言えるでしょう。このため港湾・堤防向けの土木資材として販売する「アクスター マントル」は、全て「エコマーク」取得品に一本化するなど対応を進めました。防草シート用途などでもリサイクル原料を使用した商品の比率が高まっています。ユーザーの要望に応える形で、引き続き環境配慮商材への転換を進めていきます。(談)