繊維ニュース

中国のリサイクルポリエステルメーカー/生産能力を大幅拡大へ/いまだ輸出が主力

2024年12月17日 (火曜日)

 中国のリサイクルポリエステルメーカーが、生産能力を大幅に拡大する。背景は、欧米アパレル市場での需要拡大だ。中国国内の需要はいまだに少なく、内需喚起の政策が待たれる。(岩下祐一)

 浙江佳人新材料(ジャーレン)は、帝人のケミカルリサイクル技術を導入するケミカルリサイクルポリエステル最大手だ。15年に本格稼働した第1工場(敷地面積6万7千平方メートル)で毎年、ポリエステル繊維の端材や使用済みポリエステル製品を使い、原糸3万トンを生産している。

 同社は、来年半ばに第2工場(同22万平方メートル)の第1期を稼働する。第2工場の年産能力は、第1期5万トン、第2期10万トンの計15万トンだ。「今後は海外ブランドのニーズがますます増える。繊維だけでなく、さまざまな分野がサステイナビリティーを追求するようになり、需要が拡大する」と姜龍春・総経理補佐はみる。

 マテリアルリサイクルの新興メーカー、江蘇賽繊爾新材料科技(セビル)は現在、第1期工場(同3万平方メートル)で回収した使用済みペットボトルの洗浄から、それらを原料とした再生PET樹脂の生産までを行う。

 同社が生産する再生PET樹脂は、食品グレードの再生ポリエチレンテレフタレート(PET)と、高性能再生ポリオレフィン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン(PP)の三つで、それぞれの年産能力は5万トン、1万トン、1万トン。用途は各種容器、繊維、建材、膜などだ。

 同社は先月、第2期工場(同5万平方メートル)の一部を稼働した。食品グレードPET(年産能力5万トン)と、HDPE、PP(各4万トン)に加え、将来はケミカルリサイクルによる食品グレードと繊維用途のPET(計1万トン)を生産する計画を持つ。

 両社の繊維用途の製品は、ともに輸出がメインだ。ジャーレンの原糸の最終顧客は、欧米メガスポーツブランドを中心とした海外顧客が大部分を占める。セビルの繊維用途の樹脂は、中国のポリエステルメーカー最大手、恒力石化(ヘンリー)などに採用されているが、こうしたメーカーが生産するリサイクル糸は「ほとんどが海外ブランドに使われている」と、黄斌董事長は話す。

 同じサステ素材である生分解性プラスチック、PLA(ポリ乳酸)が地場大手ブランドに積極採用されているのとは対照的に、ポリエステルリサイクル素材はスポーツ最大手の安踏(アンタ)など、一部の地場ブランドが採用するのにとどまっている。本格的な普及には、リサイクル素材の使用を後押しする政策が必要との見方が大勢を占める。

 こうした中、10月に国務院直属の中央管理企業(央企)として中国資源循環集団が設立された。鉄、プラスチック、自動車、家電・電子製品、繊維品などのリサイクルを行っていくという。中央政府が繊維品などのリサイクルに本気で取り組む姿勢を示したものとみられ、同社の今後に注目が集まっている。

 一方、欧米市場がメインのメーカーにとって、米中対立は大きなリスクだ。各社は海外に工場を設けることで、リスクを回避しようとしている。セビルはタイへの進出を決めた。ジャーレンも海外の進出先を検討しているもようだ。