特集 スクールスポーツウエア(1)/強み磨き市場を深耕
2024年12月11日 (水曜日)
環境などの変化によってスクールスポーツウエアに求められるニーズも変わる中、学生服メーカーは新商品の打ち出しや、強みを磨きながら、市場を深耕している。さまざまなコストが高騰する中で今後は価格の改定が焦点となってくるほか、引き続き安定的な供給体制も求められる。
〈独自企画で受注獲得〉
来入学商戦に向け、スクールスポーツ市場では大手学生服メーカーが中心となり、新規採用校の獲得に動いている。各社は自社ブランドや独自の企画などを打ち出しながら、受注の獲得につなげている。
菅公学生服は自社の「カンコー」ブランドを中心に採用校の獲得につなげている。自社ブランドの中でけん引するのが「カンコープレミアム」だ。大手素材メーカーと開発した、高い防風性などを備える機能性や高級感のある風合いを持つ素材「グランガード」などで高校を中心に評価を得る。明るめのカラーを取り入れた中学校をターゲットにした企画も採用が順調だ。
同社は今年、スポーツバッグやゴルフバッグなどのOEMを手掛けるEQ japan(千葉県松戸市)が展開するスポーツブランド「ブルイク」とのコラボレーションブランド「カンコーブルイク」の展開を開始。勝山裕太営業本部企画推進部スポーツ企画推進課長は「来春に4校の採用が決まり、翌々年の春に向けても数校の採用が決まっている」と話す。
新しい自社ブランド、「FEEL/D.」(フィール/ディー)の滑り出しが順調なのが明石スクールユニフォームカンパニー。同ブランドの体育着はさまざまなパーツから成り、立体的な裁断を取り入れるなど機能性にこだわる。シンプルでおしゃれなデザインも特徴となる。
同ブランドは、初投入となる来春の入学商戦で約50校の新規採用校を獲得。榊原隆取締役営業企画部門管掌兼スクール営業部統括部長は「体育着はブランド志向から本物志向に変わる転換点にある」とし、デザイン性や機能性の高い同ブランドがそのような変化の中で「評価された」と説明する。
トンボでは「ビクトリー」「ヨネックス」「アンダーアーマー」の主力3ブランドが採用に貢献し、「新規で200校ほどの受注を獲得」(高橋聡一スポーツ商品本部スポーツ商品部副部長)した。新規採用校の中でも採用率が高いのが、同社が得意とする昇華転写プリントだ。
さまざまな柄を施すことができ、差別化が図れることから学校側からの支持を得る。高橋氏は「新規採用校の7~8割は昇華転写を採用している」と話す。
そのような中、昇華転写の生産体制強化にも動く。紅陽台物流センター(岡山県玉野市)に隣接する土地建物を購入し、ここへ美咲工場(同美咲町)にあった昇華転写設備を移設。プリンターと転写機も増設し、7月から稼働を始めている。
瀧本(大阪府東大阪市)は「ヒュンメル」ブランドで拡販に取り組んでいる。同ブランドでは新たな試みも進む。同社は学生服メーカーとして初めて、フェーズフリー協会から「フェーズフリーアクションパートナー」に認定された。フェーズフリーとは平常時、災害時ともに役立つデザインにしようとする考え方。ヒュンメルでは3型で認証を取得した。
同ブランドでは学校採用に加え、スポーツ店からも取り扱いたいとの要望があるなど、新しい販路の開拓にもつながりつつある。
オゴー産業(岡山県倉敷市)は自社ブランド「スポーレッシュ」を軸に、公立中学校を中心に訴求。スクール総合衣料メーカーとして、価格や製品供給力など強みとする同社の価値を伝えながら、採用につなげている。
〈着用シーンにも変化〉
学生服の求められる機能や着用シーンも部分的に変化が見られる。今夏は全国的に猛暑が襲ったほか、10月にも真夏日を観測する地点があるなど、夏日が長引いた。環境が変化する中、トンボの高橋氏は「UVカットなど、涼しく快適に過ごせるような商品がより必要になってくる」と話す。
「遮熱性を高めるために、長袖シャツの需要がある」と話すのは菅公学生服の勝山氏。また、夏場は「制服と体操服の垣根がなくなってきた」とし、ポロシャツを制服兼体操服として採用する学校のほか、一部では制服の代わりにハーフパンツを着用してもよいといった学校も出てきたと言う。
一方、新型コロナウイルス禍では洗濯が容易な体育着での通学が広がったが、「そのような地域ではちゃんと制服を着るという動きが出てきている」(明石スクールユニフォームカンパニーの榊原氏)という声もある。榊原氏は「コロナ禍も落ち着き、制服は制服、体育着は体育着というように、制服と体育着の区別をしっかりと付ける学校が増えている」と指摘する。
〈対応早め安定納品へ〉
学生服メーカー大手3社の今年のスクールスポーツ部門売上高(表)を見ると、トップシェアの菅公学生服は2024年7月期に121億円(前期比1・0%増)、トンボは24年6月期、71億600万円(2・7%増)、明石スクールユニフォームカンパニーは23年12月期に55億3500万円(4・5%増)と、3社とも増収を確保した。
一方で、原材料や燃料費、運賃、人件費などあらゆるコストが上昇基調にあり、各社の利益を押し下げる要因となっている。各社は学生服に加え、スクールスポーツでの価格改定も進めている。
また、引き続き来春も確実な納品が求められる。学生服業界では、性的少数者(LGBTQ)へ配慮をする流れから、中学校を中心に性差の少ないブレザーへと制服をモデルチェンジ(MC)する動きが活発になっている。MC校数の増加などによって生産、納品の難易度が高まる中、各社は早期対応によって安定生産、安定納品に注力している。
対応の一つが新規注文の締め切りの前倒しだ。スクールスポーツウエアでも制服に連動するように、菅公学生服、トンボ、明石スクールユニフォームカンパニー3社などは、今年も例年よりも締め切りを早めて対応している。