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商社/循環事業拡大進む/異業種との連携も加速

2024年12月11日 (水曜日)

 商社による資源循環の取り組みが範囲を広げている。異業種との連携も拡大しており、さまざまなアプローチで循環のシステムを社会に定着させる動きが活発化している。(強田裕史)

 伊藤忠商事は、廃棄衣料を使用済みプラスチックとともに再資源化する「アルケミアプロジェクト」を推進する。樹脂加工・機能性化学大手のレゾナック(東京都港区)と協力関係を結び、同社のガス化処理技術を活用して廃棄物を低炭素アンモニアなどの化学製品に再生させる。この手法で、従来のケミカルリサイクルでは困難だった混紡品の再資源化を実現させた。

 2023年の開始以来、リサイクルの実績を積み重ねてきた。住宅、金融機関、物流、空港関係などの企業から使用済みユニフォームを引き取り、形を変えて資源として有効活用できるようにしている。ユニフォームについては、海外企業から受注を獲得した実績もある。

 同プロジェクトはパートナーのレゾナックにとっても、一般的な知名度を向上させる機会になっていると言う。

 豊島は、循環型社会の構築に向けた取り組みに力を入れる中、異業種との連携も進めている。 今秋、トヨタ自動車が推進する「トヨタ・アップサイクル」プロジェクトと、アーバンリサーチとの3社連携を開始した。

 同プロジェクトは、自動車の製造過程で発生する再利用が困難な廃棄物を再び原料とし、新しい商品・サービスに生まれ変わらせる。異業種との協業も行っている。

 今回の3社連携の第1弾として、アーバンリサーチの「アーバン・ファミマ!!虎ノ門ヒルズビジネスタワー店」で、シート本革、シートベルト、エアバック基布の3種類の廃素材を使ったトートバッグやペンケースなどを期間限定で販売した。現在、アーバンリサーチKYOTOで第2弾の販売が行われている。

 トヨタのプロジェクト担当者は「当社が目指す未来に共鳴し、サポートしてくれるパートナーはありがたい存在」と話す。

 丸紅は4月、環境配慮型ビジネスを推進する「MALOOP PROJECT」(マループプロジェクト)を開始した。環境に配慮した商材の開発や事業投資、環境負荷の低い素材や製品の取引などに取り組む。

 22年に設立した事業会社、エムサーキュラーリソーシーズは協力企業と連携し、古着の循環の仕組みを構築している。

 出資先である米国・サーク社の綿ポリエステル製品を素材別に再生させる技術を活用したケミカルリサイクルは、海外の有名ブランドに再生素材が採用された実績を持つ。

 地域との連携にも着手した。「離島クローズドリサイクル」は、鹿児島県・奄美大島で回収されたペットボトルをポリエステル繊維に再生させ、アパレル製品などの素材として再活用する取り組み。この再生素材を使って作成した製品は、同島内のセレクトショップや全国の百貨店で販売する。