北陸ヤーンフェア レビュー(6)
2024年12月04日 (水曜日)
糸加工で高付加価値化
初出展の弘伸(京都府長岡京市)は、キュプラ繊維「ベンベルグ」や宣賓絲麗雅集団(中国)のレーヨン「グレース」などセルロース系繊維を中心に、糸加工で付加価値を高めた糸を展開する事業内容を紹介した。2020年に京都府南丹市に撚糸・糸加工の新工場を建設しており、中国での撚糸を含めて国内外で生産体制を整えている。ブースではアパレルや糸商などが多く訪れ、1次加工、2次加工で特徴を出した糸に関心が寄せられたほか、ベンベルグの色糸ストック展開も注目された。
継続出展する泉工業(同城陽市)は、高放射・高反射ラメ糸「スペクル」や再帰反射ラメ糸などが好評を得た。スペクルは、高放射・高反射機能を持つフィルムをスリットヤーンにしており、織・編み物にした際に高い放射冷却機能と通気性を両立できる。再帰反射ラメ糸は、スリットヤーンの状態で伸縮するタイプや再帰反射糸にパール調のラメを撚糸した商品などを紹介した。
北洞(京都市)は2年ぶりの出展で、今回はユニチカトレーディング(UTC)のカポック紡績糸などが注目された。カポック繊維は綿の5分の1という軽さなどが特徴で、横編みなどUTCとはバッティングしないアイテム、用途で展開していく。
光沢のある金属糸やバサルト糸のほか、糸やラメに特殊加工を施しらせん状に絡めるスパイダーシリーズを室内装飾品などの用途に訴求した。スパイダーシリーズはシートのほか、好きな生地に装飾として付与することができる。装飾した生地を透明度の高いアクリル樹脂で挟んでパネルとして使うこともできる。
糸染めのヨネセンは合繊染色が主力だが北陸向けは少ないという中、初出展した。チーズ染め、綛(かせ)染め、スペースダイが柱だが、今回展では特に新規事業として注力するマフ染色が好評を得た。
マフ染色はストレッチ性やキックバック性、かさ高性に優れ、従来の綛染めでは難しかったハイマルチ糸への加工も可能などの特徴があるが、昨年のいずみ染工(新潟県長岡市)の倒産など日本で手掛けるところが少なくなっているのが現状。ヨネセンは設備投資して20年からマフ染色に参入し、新たな柱に育てる方向。
にしき染色(京都市)も初出展。受託加工が中心だが、近年は独自開発の強化にも取り組み、顧客の声を聞く場として展示会への出展も増やしている。「手応えをつかんだ」という今回展では、北陸でもスペースが小さくなっている高圧の綛染めに興味を示す来場者が多かった。
日華化学は、サステイナビリティーを視点に繊維加工助剤を紹介した。特に注目されたのが非フッ素系の撥水(はっすい)剤で、シリコン系やアクリル系で性能を高めた商品を紹介した。
今回展から海外企業の出展も受け入れ、台湾からナイロン糸製造の展頌、撚糸機や紡績機械を製造する昶明国際、糸メーカーの東隆興業が出展した。3社とも日本との取引実績があり、さらなる拡大を狙って参加した。
展頌は台湾で生産するナイロン6と66糸を紹介した。日本との取引は衣料用が多いが、ナイロン66で資材用途の可能性を探る狙い。東南アジアの日系企業を含め、日本との取引拡大に注力する。
東隆興業は特殊な仮撚り糸を中心に提案し、ソフトタイプやストレッチタイプなどをそろえた。