ごえんぼう
2024年12月03日 (火曜日)
中原中也作の「汚れつちまつた悲しみに……」は、読み手に強烈な印象を残す詩の一つだろう。この詩にはさまざまな解釈があり、ここでは論じない▼「汚れつちまつた悲しみに……」や「サーカス」など、中也の作品は冬と結び付くものが多い。〈思えば遠くへ来たもんだ〉の言葉で始まる「頑是ない歌」もそう。12歳の頃の冬を振り返り、〈汽笛の湯気は今いずこ〉で締めくくられる▼「遠くへ」という言葉はどこか物悲しく、切なさを運んでくる。タイトルに冠した楽曲も多い。ジェリー藤尾さんの「遠くへ行きたい」、浜田省吾さんの「遠くへ」、レミオロメンの「もっと遠くへ」。皆さんはどんな詩や歌が浮かんだか▼苦しいことが多い日々に、以前は〈遠くへ行きたい〉とよく願った。あれから随分歩いてきたが、願った遠くにたどり着けたか。中也は、冒頭の詩を〈なすところもなく日は暮れる〉と結んだが、大丈夫。まだ歩ける。