特集「ITMAアジア2024」レビュー/高度化とコスト削減に焦点

2024年12月02日 (月曜日)

 10月14~18日の5日間、中国・上海で開かれた繊維機械の国際見本市「ITMAアジア+CITME2024」では、日系出展者の付加価値品が生産できる最新機と、省エネ・省人化の性能を高めた機械の双方が注目を集めた。国内外のアパレル市場の低迷と、素材メーカー間の競争激化を背景に、高度化と生産コスト削減のニーズが同時に高まっていることを映した。(上海支局)

〈日系メーカーに存在感〉

 今回展の展示面積は約16万平方メートル、出展者数は22カ国・地域の1700社弱だった。出展社数は昨年開かれた前回展(1500社超)を上回り、新型コロナウイルス禍前の18年展(約1700社)とほぼ同等となった。

 同展は、2年に1回開かれているが、コロナ禍の影響を受け、22年に開催予定だった前回展は1年延期され、23年11月に開かれた。そのため、今回展は2年連続となった。その影響もあり、来場者数は9万人超にとどまり、昨年展を約1万人下回った。

 中国の景気は昨年から減速し、消費が冷え込んでいる。こうした中、特徴のないものが売れなくなる半面、差別化した素材が求められるようになっている。そのため、合繊メーカーなどが差別化シフトを加速している。

 例えば、ポリエステル6大メーカー(恒力、盛虹、桐昆、新鳳鳴、栄盛、恒逸)は、供給過多になり、薄利多売せざるを得ない状況だ。それに対応し、一部が利益率の高いリサイクルポリエステルの生産を積極化している。

 今回展では、こうした流れを受け、付加価値品が生産できる日系出展者の最新機への引き合いが強まった。

 合成繊維製造設備のトップメーカー、TMTマシナリーのブースは、次世代仮撚機「ATF―G1」を映像を使って紹介した。高速加工や高生産性のほか、省エネ性が高いことをアピールした。実機を置かなかったにもかかわらず、多くの来場者が訪れた。

 省エネなどコストが削減できる機械も注目された。

 村田機械は、渦流精紡機「VORTEX(ボルテックス)」の最新機「同870EX」を訴求した。導入を検討する企業が注目しているのが、同機の工程短縮などによるコスト削減効果だ。「市況が厳しい中、各社が省エネやコスト削減に目を向け、リング精紡機から乗り換えている」(同社営業担当者)と言う。

 昨年展で40ゲージのダブルニット高速レースウェイ(無地編み)機「MC-SDR」を初披露し、注目を集めた福原産業貿易は、実機の出展は行わず、縫製品や生地のサンプルを出展し、ユーザーとの商談に努めた。同社の中国内販は、大口顧客の品質重視の傾向が強まり、昨年から回復している。

 横編み機の島精機製作所は、「ホールガーメント」横編み機(WG)の最新機「SWG-XR」をメインに出展した。従来機に比べ生産性を25%以上向上したことや、編み目を押さえながらその周りに編み込み、立体感を出す機能の表現の幅を広げたことなどを訴求した。

 織機メーカーの津田駒工業は、エアジェット織機(AJL)の新機種「ZAX001neo Plus」を前面に打ち出した。省エア、低圧化の新技術を生かし、従来機に比べエア消費量を10%削減し、緯入れエア圧力を15%低圧化した。織機本体の電力使用の効率化を図ることで、従来機に比べ消費電力量を15%削減した。

 織機メーカーの豊田自動織機は、AJLの新機種「JAT910」を訴求。高速稼働や、低いエア圧力と空気・電気消費量を実現していることをアピールした。

〈部品は改造需要取り込む

 繊維市況が低迷し、中国メーカーの新規設備の導入が減る一方、既存設備の改造が増え、部品メーカーがその恩恵を受けている。改造の目的は、省エネと高付加価値化の二つだ。こうした中、日系部品メーカー出展者は、省エネと高付加価値化を切り口に、自社製品をアピールした。

 阿波スピンドルは、合繊紡糸機用マイグレーションノズルと同インタレスノズルを訴求。紡糸の上流工程と下流工程に使われるノズルで、空気の流れを使用条件に合わせて最適化できることや、メンテナンスなどの作業性の向上に寄与することをアピールした。

 合繊紡糸用や不織布製造用、半導体製造装置用のノズルや金型を生産する化繊ノズル製作所は、パネルを使って主力商品と、自社試験設備で紡糸した複合繊維の糸断面を紹介した。内販では既存の複合繊維向けのノズルが低迷しているものの、顧客の高付加価値シフトを背景に新規開発案件が健闘している。

 合繊製造設備用の糸道やテンション装置のメーカー、湯浅糸道工業(名古屋市天白区)は、総販売代理店、寧波湯浅系道紡織化繊技術のブースで、紡糸巻き取りと糸加工用の新製品を提案した。従来品よりも軽量化を図ったことや、ランニングコストを削減できるメリットを訴求した。

 リードメーカーの高山リードは、現地法人の高山紡織器材〈山東〉で生産する各種リードや日本製のメンテナンス機器をアピールした。服地の織機用リードの内販は、地場競合メーカーがここ数年、品質を高めていることが響き、芳しくない。一方、電気自動車(EV)に対する内装資材メーカー向けの新規販売が伸びている。