ユニチカ 存亡かけた最後のチャンス
2024年12月02日 (月曜日)
ユニチカは11月28日、大阪市内で会見を開き、同日11月28日に官民ファンドの地域経済活性化機構(REVIC)に再生支援を要請し、即日支援が決定したことについて説明した。金融支援を受けながら官民ファンド主導で繊維事業の撤退を含む抜本的な構造改革に取り組む。上埜修司社長は「グループ存亡をかけた最後チャンス。生き残りに向けて全力で事業再生計画を遂行する」と話す。
繊維事業に関しては「可能な限り雇用維持を目指して譲渡先を探す」ことになる。
上埜社長は今回の事態に至った要因として「これまでも構造改革を実施し、一時的に成果を上げてきたが、繊維事業などの基本的な収益性低下や硬直化したコスト構造など課題に対して踏み込んだ改革ができていなかった」と話す。
こうした中、新型コロナウイルス禍や海外メーカーとの競争激化による市況悪化によって収益力が一段と低下し、2023年度(24年3月期)は営業赤字に転落した。「自助努力による資金繰りが困難な状態となっており、このままでは高分子など将来性のある事業への投資も難しい」ことから、自力での再建を諦め、REVICに支援を要請することを決断した。
再生計画では、不採算の衣料繊維、不織布、一部を除く産業繊維の各事業から撤退する。撤退対象はユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業全てと子会社のユニチカテキスタイル、ユニチカスピニング、大阪染工、ユニチカメイト、海外子会社のユニテックス、UTCの中国、ベトナム、インドネシアの各子会社。不織布は岡崎事業所のスパンボンド不織布と垂井事業所のスパンレース不織布、タイ子会社のタスコの事業と設備が対象となる。産業繊維は岡崎事業所のポリエステル高強力糸とポリエステル短繊維、宇治事業所のモノフィラメント(ナイロン中空糸は除く)が事業譲渡の対象。
また、金融支援として議決権付き優先株による約200億円の第三者割当増資をREVICが引き受けるほか、三菱UFJ銀行など取引銀行に対して最大430億円の債権放棄と既発行優先株227億円の無償譲渡を要請する。主力銀行による90億円、REVICによる150億円の融資枠も設定する。これら金融支援によって構造改革を進め、残るフィルム・樹脂の高分子事業と活性炭繊維とガラス繊維・ガラスビーズなど無機系素材事業に経営資源を集中する。
第三者割当増資後の資本構成は議決権ベースでREVICが約66・76%(普通株に転換した場合は88・93%)となり、REVIC主導で経営再建を進めることになる。増資は25年3月30日に実施予定で、その後はREVICと三菱UFJ銀行から取締役や監査役を受け入れ、社外を除く現在の取締役と監査役は全員退任する。
上埜社長は「可能な限りまとまった形で繊維事業の譲渡先を探したい。“アンダーテーブル”では幾つかお願いをしている。(退任までの)残された時間、全力で再生計画の実行に取り組む」と話す。
取引先に戸惑い広がる
突然の発表で
ユニチカの繊維事業からの撤退決定は、完全に水面下で進められたことから、突然の発表に取引先の間では戸惑いの声が上がる。
21年からUTCと繊維事業の開発・営業で連携しているシキボウは、「正式な説明を受けておらず、コメントすることができない」と回答。「今後も繊維素材の可能性を追求していく姿勢を変えずに事業を行う」としている。
あるワークウエアメーカーはUTCの生地を使った定番商品を展開しているが、他の素材メーカーや商社の素材を使い、「後継の品番を作るか、いったん廃番にするか検討を迫られている」と話す。
三備産地では一部の企業のデニム輸出をUTCが請け負っているが、「今のところ影響は軽微とみられる」として、今後の様子を見守る。
東リは、カーペットの基布に使う不織布をユニチカから購入しているが、「(同社から)まだ話を聞いておらず、現時点ではどの程度影響があるか分からない」と話す。
ロープ繊維で全国4割のシェアを誇る愛知県蒲郡市の三河産地では、漁網向けのほか、遊具といった陸上用途でユニチカの合繊繊維を使ったロープを生産している企業がある。遊具向けでユニチカのポリエステル糸を採用していた稲葉製網(蒲郡市)の稲葉隆志社長は「ユニチカは多彩な色の原糸があったので、なくなってしまうのは頭が痛い。当面は在庫でしのいで、今後は台湾メーカーに切り替える」と話す。