東レ/“勝てる領域”で戦う/高収益性事業の集合体に

2024年11月29日 (金曜日)

 東レの大矢光雄社長はこのほど、大阪市内で会見し現中期経営課題の進捗(しんちょく)と、収益性が低迷している特定事業・会社の構造改革(ダーウィン・プロジェクト=Dプロ)の成果について説明した。世界的な事業環境の変化と海外企業との競争激化を背景に「“勝てる領域”を見極めることが重要になる。繊維事業も“勝てる領域”でグローバルに戦う」との考えを強調する。

 繊維事業でDプロの対象となっているポリプロピレンスパンボンド(PPSB)とポリエステル短繊維はいずれも生産規模の適正化を進める。PPSBは韓国子会社の設備を一部停止し、中国子会社の稼働率を高めることで利益率の改善を進めた。ポリエステル短繊維も韓国に続いて日本の連続重合・直接紡糸設備も停止し、汎用品の生産を集約・縮小することを決めた。

 そのほか、Dプロ対象以外の低成長・低採算事業に関しても撤退・縮小を含めた構造改革を進める。ナイロン重合を一部海外に移管するほか、国内ユニフォーム会社の清算も検討する。和装事業も再編した。東南アジアのナイロン製造設備の縮小と汎用品種の集約・縮小にも取り組む。

 一方、高成長・高収益事業や低成長ながら高収益の事業に関してはさらなる設備投資やM&A(企業の合併・買収)、事業のブラッシュアップを進める。具体的には原糸から基布、縫製までグローバルな生産・供給体制の構築を進めているエアバッグ事業や底堅い需要がある産業資材用途の拡大と収益性向上に取り組む。衣料分野でも独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」による革新素材の開発と、素材力をベースとした生地・縫製一貫型サプライチェーンを組み合わせることで付加価値の増大を図る。

 大矢社長は「“勝てる領域”の背後にはこれまで蓄積してきたケミカルに関する技術力がある。これを生かし、各事業セグメントともニッチでも高収益な事業の集合体となることでグローバルに戦える」と指摘。“勝てる領域”に経営資源を集中配分するためにも引き続き構造改革を推進する。