北陸ヤーンフェア レビュー(3)

2024年11月29日 (金曜日)

持続可能かつ機能性も

 増井(大阪市中央区)は特殊なボリューム加工を施した新開発の再生ポリエステル先染め糸「ジ・インフィニティ」が好評だった。セーターや「ホールガーメント」など横編み製品向けに70色の備蓄販売を2025年から始める予定だが、今回展では横編み製品向けだけでなく、自動車内装材やボディータオル関連からも関心があった。先染め糸にもかかわらず、染めていない糸への要望もあるなど手応えを得た。その他、接触冷感性、UVカット性、吸汗性を持つ新ストレッチ糸「デュオフレックス」も注目された。PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)とポリエステルの複合糸で、PTTはコベーションバイオマテリアルズ「ソロナ」を使用する。

 ヤギは出資もするバイオワークス(京都府精華町)がタイで生産するPLA(ポリ乳酸)繊維「プラックス」への関心が高かったと言う。通常のPLA繊維に比べて生分解性が遅く、10年後もその期間の7割の強度を維持でき、耐熱性(130℃)も高いため通常のポリエステルと同じ染色加工ができる。染色濃度も通常PLA繊維の2倍。製造時の二酸化炭素はポリエステルに比べて40%削減できるほか、抗菌防臭性なども備える。長繊維、紡績糸をそろえるが、今は紡績糸(プラックス20~40%混)の丸編み地が中心で織物は開発中。

 モリリンは多色原着ポリエステル長繊維「モコフィーロ」の反応が良かった。自動車内装材やインテリアが現在の主力だが、撥水(はっすい)「モコフィーロREP」、高視認「同LOOK」、割繊「同SPIRIT」などバリエーションを広げたことで関心が集まった。その他、カーシート地で構築した糸、生地の海外生産体制も紹介した。カーシート地以外にも広げていきたい考えだ。

 豊島では環境負荷軽減プロジェクト「テックリサイク」(ポリエステル、ナイロン、アクリル)への関心が高かった。テックリサイクではストレッチ性のある再生ポリステル長繊維が婦人服向けで、再生ナイロン長繊維のサイドバイサイドもスポーツ向けで引き合いがあった。その他アセテートの風合いを持つ再生ポリエステル長繊維(ブライト)も注目を集めた。

 クラボウインターナショナルはコラーゲン配合レーヨン長・短繊維「ルナセル」を提案した。土壌中での生分解性に加え、海中でも確認した。風合いへの評価も高かった。機能性の要望も多く、消臭性を持つ点にも注目が集まった。靴下やインナー向けが中心だが、ハイパイルや横編み、Tシャツ、雑貨なども紹介した。

 瀧定名古屋は初出展。住友金属鉱山と協業によるレアメタル練り込みのポリエステル・ナイロン繊維「ナイロール」のバリエーションを紹介した。光吸収発熱「ウォームダール」、紫外線・近赤外線カット「トゥルーボーテ」など4タイプ。拡大には糸売りが重要として出展した。異業種の取り組みが珍しく、機能繊維が今回展は少ないこともあり、関心が高かった。

 豊田通商も初出展。廃漁網のケミカルリサイクルによる再生ナイロン6長繊維「ネットプラス」。さらに中国・サイクロン(賽隆科技)のケミカルリサイクルポリエステル長繊維を新提案し、興味を示すところがあった。サステイナビリティーなど環境対応に力を入れるには原料が重要として、改めて原料、糸販売に力を入れている。