繊維ニュース

ユニチカ 繊維事業から撤退

2024年11月29日 (金曜日)

 ユニチカは28日、主力銀行の三菱UFJ銀行と連名で官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)に事業再生計画を提出し、再生支援を受けることを決めた。これにより採算改善が困難と判断した衣料繊維、不織布、産業繊維から撤退する。

今後、官民ファンドと三菱UFJ銀行主導でナイロンフィルムなど高分子事業に経営資源を集中し、経営の立て直しを進める。

 同社はこれまでも繊維事業の縮小と高収益事業である高分子事業へ軸足を移す構造改革に取り組んできたが、基本的な収益性低下や硬直化したコスト構造など潜在的課題があった衣料繊維やポリエステル繊維関連の各事業に対する抜本的な対策に踏み込めなかったと判断。世界的な原燃料高騰や市場構造の変化による需要減退、東南アジアを中心とする海外市場での価格競争激化などで繊維事業は営業赤字が継続する状態となっていることから、官民ファンドの支援によって十分な資金調達を行い、繊維事業から撤退する抜本的な構造改革を断行することを決めた。

 事業再生計画では、衣料繊維、不織布、一部を除く産業繊維から撤退する。2025年8月までに自家工場の生産停止や生産移管、事業譲渡などを進める。所定期間までに事業譲渡などが不調となった場合は、一定の供給責任を果たした上で事業清算手続きに移行する。これに合わせて子会社で生産しているポリエステルチップも外部調達に切り替える。

 事業再生に向けて三菱UFJ銀行などは約430億円を債権放棄する。その上で議決権付き優先株による約200億円の第三者割当増資をREVICが引き受け、財務体質の安定化を図る。実施日は25年4月30日ごろを予定しており、その後はREVICと三菱UFJ銀行から取締役や監査役を受け入れる。現在の取締役と監査役は社外取締役と社外監査役を除いて全員退任する予定。事業再生計画の遂行によって28年3月期には全事業の黒字化を実現し、30年3月期には売上高700億円、営業利益65億円までの回復を見込む。

 同社は、1889年設立の尼崎紡績を起源とし、1918年以降は大日本紡績として三大紡績の一角を占めるなど日本の紡績業をリードしてきた。26年に日本レイヨンを設立して化学繊維に参入し、69年には両社合併でユニチカとなって以降は繊維総合メーカーとして繊維業界で確固たる地位を築いてきた。その同社が祖業である繊維からの撤退を決めたことで、日本の繊維業界が置かれている状況の厳しさや、繊維企業・繊維事業の在り方も曲がり角に差し掛かっていることを浮き彫りにする。