北陸ヤーンフェア レビュー(2)
2024年11月28日 (木曜日)
特殊樹脂を繊維に展開
蝶理は独自のブランド糸として、ポリエステル(PET)100%の高伸縮糸「モノビー」やシック&シン糸「ノタン」などを新たに紹介した。モノビーはモノマテリアル化の視点からも注目され、拡大するPBT(ポリプチレンテレフタレート)/PETの高伸縮糸「テックスブリッド」とニーズによって使い分けることを可能とした。ノタンは織物を中心に天然繊維調の表情を求める声に応えて開発。原糸は再生ポリエステル「エコブルー」を使っている。
前回に続いてSTXと隣り合わせで、壁も廃したブースを構えた。長繊維を得意とする蝶理と紡績糸を得意とするSTXの協業も進んでおり、共同展開する機能性紡績糸「スパンラボ」では、長短複合糸や短×短の芯鞘構造糸などを訴求した。
STXのブースでは、スパイバー(山形県鶴岡市)のタンパク質繊維「ブリュードプロテイン」を使った紡績糸が注目を集めた。スーピマ綿との混紡で、混率は綿が80%。40、60番手をそろえ、和歌山産地で編み立て生地販売にも対応する。そのほかでは糸と生地で展開する細番手(60番手)のオーガニック綿糸も注目を集めた。
化学メーカーの特殊樹脂を繊維で展開する動きも進んだ。三菱ガス化学は低吸水性、耐薬品性、高強力などが特徴の独自のナイロン樹脂「エモクシー」を中心に紹介。2020年から継続出展しているが、特に産業資材用途で手応えを掴んでいる。
20年の時点では平塚研究所での研究開発段階だったが、現在は樹脂のベースは固まり、具体的な用途を見据えた開発に進んでいる。新潟工場での量産にもめどを付けた。今後、繊維や射出成形などで用途開発を加速し、30年ごろの本格量産開始を目指す。
樹脂での販売だが、これまで出展を重ねる中で、糸を要望する来場者も多かった。今回はエモクシーの糸を製造するユニプラステック(大阪市北区)が隣にブースを構え、対応できる形にした。初出展の同社は、エモクシー糸のほか、産業資材用モノフィラメントやBCFナイロン・ポリエステルなども紹介した。
仮撚り加工の村昭繊維興業(石川県宝達志水町)は稲畑産業と共同出展し、住友化学の温調樹脂「コンフォーマ」を使った糸を紹介した。ポリオレフィン系の特殊樹脂で潜熱性と蓄熱性を持ち、後加工なく温度調整機能(25~35℃前後)を実現する。
住友化学はコンフォーマの繊維での提案を20年から開始した。すでにシートが建材用途で、短繊維がふとんわたで採用されている。現在は樹脂販売だけでなく、海外で紡糸して糸や生地でも展開している。細繊度は75 デシテックス(T)・48フィラメント(F)、100T・48Fなどを開発済み。
そのままの紡糸が難しく染められないことなどから、糸は芯にコンフォーマ、鞘にポリエステルやナイロンを使う芯鞘構造としている。今回展ではこれまで難しかった糸加工を村昭繊維興業が対応し、DTYやPU複合糸などを披露した。ブースではニットと織物をそろえ、通年用インナーやデニムなどに提案した。
シキボウと新内外綿は共同出展で、今回は特に両社の協業で展開する「シーウール」が好評を得た。カキ殻の微粉末を練り込んだポリエステル短繊維で、台湾のクリエイティブ・テック・テキスタイルが生産する。保温性に優れるほか、ウール調のタッチなどが特徴。新内外綿のパイナップルヤーンも注目された商品の一つで、綿混の太番手で生産にめどを付けた。